アスランの日記【遠足1】 

May 25 [Fri], 2007, 23:23
夜が明ける頃、俺はそっとカガリを離してベッドから抜け出た。
「あすら…?」
舌足らずな口調でカガリが俺を呼ぶ声がする。起こしてしまったかと思って振り向いたんだがカガリは頭からすっぽり布団を被ってもごもご動いているだけで、様子は分からなかった。一緒に寝ているとどうしても起こしてしまう事になるんだよな。気にせずまた寝てくれればいいんだが。
俺はそこらへんに脱ぎ捨てていた自分の服を拾って着た。さすがに寝る前に消したが、もう五月も末にも関わらず、ゆうべ電熱器をつけていたせいで室内は暑い。だが、スーツは乾ききらずに微妙に不快な湿っぽさがあった。まあ、家に帰るまでの辛抱だ。
着替えを済ませた俺はベッドの側に跪いて、ベッドの膨らみの、カガリの頭とおぼしき辺りをそっと撫でた。するとカガリがひょいと顔を覗かせた。
「おはよう」
「お、おはよ…」
微笑みながら優しく髪に触れて、俺は戸惑うように頬を染めるカガリの額に顔を寄せた。くすぐったそうに目を細めながらもじっとしているカガリの顔にいくつもキスを落としていく。
「…服…乾いたか?」
俺が唇を離すとカガリが気遣うようにそっと聞いてきた。
「いや、水が滴らない程度かな。でもすぐに着替えるからいいよ」
俺も囁くように答えながらカガリの唇を優しく啄んだ。そして頭を上げ、あどけなく可愛い顔をした恋人を見つめた。
「…帰るよ。また後で」
「…うん…」
俺が立ち上がるとカガリはシーツで身体を隠しながら立ち上がり、見送ってくれた。寝ててくれても構わないんだが、嬉しいからその厚意に甘えておく。
窓枠に足をかける前に振り向き、俺はカガリの頭をいささか乱暴に引き寄せて唇を吸った。別れ際にはやっぱりキスしたくなるよな。愛しい人と過ごした最後の瞬間をキスにしておきたいというか。
そうして俺はその甘い余韻に後ろ髪を引かれる思いでヒビキ家を抜け出した。
振り返ってちらりと遠目から見たカガリは白いシーツを胸のところで押さえながら立っていて、まるで純白のドレスを身に着けているようだった。カガリにはラインの美しい、すっきりした形のドレスが似合う。ウエストまでは引き締まっていて、腰からは少しふんわりして、裾はこう、すっと流れるようなラインで引きずるほど長くて…。
ウエディングドレスのデザインにあれこれ頭を悩ませながら(こういうのは早いうちからデザイン決めておかないといけないよな、作るのに時間かかるから。サイズは分かってるから作るのはいつでも始められるけど、いつ頃カガリに話しを切り出そうかなぁ…)、俺は靄がかかる早朝の道を家に帰った……んだが。
「………」
玄関を開けるなり、恐ろしい形相で仁王立ちする母と、その斜め後ろで申し訳なさそうに俯きながら控えている執事に迎えられて俺は息を飲んだ。やば…考えてみれば、昨日のあの状態で飛び出せば母にバレないはずがなかった。あの時はただカガリに会いたい一心で他に何も考えられなかったが…。
「…おはようございます、母上…ただいま戻りました…」
角を生やし、凶悪なオーラを発する母から視線を逸らしながらぼそりと呟くと、母は額に青筋を浮かべながらにっこりと微笑み、猫撫で声で言った。
「ゆうべは夜遅くまでお仕事して疲れたでしょうに、どこへ行っていたのかしら?」
「……あ〜……ええと…ちょっと星を見に……いてぇっ!」
適当な事を言った途端、耳をすごい力で引っ張られて俺は思わず叫んだ。
「嘘言うんじゃありません!ゆうべは雨だったでしょ!どこへ行っていたの!」
有無を言わせない母の剣幕と、言わなければ絶対離してもらえない気配に、俺は渋々全てを白状せざるをえなかった…。

「早くご飯食べて支度しなさい!ヴィアに謝りに行きます!」
カガリの部屋に窓から侵入して泊まったのを聞いた母は目を剥いて怒った。耳を掴まれたまま家に引きずり込まれ、俺は大急ぎで支度をし、睨む母の前で朝食を食べさせられる。
仕事で会社やホテルに外泊するなら母は何も言わないが、昨日は明らかに仕事帰りだった訳で、大勢が迎えに出ている前で、突然思い出したように行き先も告げずに出て行った俺に外泊を許されるような理由がないのは明らかだ。いくら外泊先が婚約者の家であろうと、きちんと玄関から迎え入れられた訳ではなく、窓から入り込んで泊まるなど、年内に孫だなどと唆す常識から外れたような発言をする親であろうと許す訳がないのは分かるが…うぅ…しまったなぁ…せっかくこの前執事に口止めしたのにこれじゃあ意味がない。
「…あなたいつからこんな事してたの。初めてじゃないでしょう?」
「は、初めてですよ…(隠蔽工作をしないで出たのは)」
母は疑惑の目差しで俺を睨んだが、俺は目を合わせないようにしながら黙々と箸を動かした。
そうして朝食を終えた俺は、母に急き立てられて家を出たんだが……玄関のドアを開けた所で母はいきなり立ち止まった。手を引かれていてぶつかりそうになった俺は後ろからひょいと覗いて……ああ。
警視庁の奴等は今日も綺麗に整列して待っていた(こういうところが真面目な公務員っぽいよな…)。こうなってくるともはや朝の恒例行事というか、ウォーミングアップとでも言えばいいのか…。
母は彼らを一瞥したかと思うと、険しい顔のまま俺を振り向き、びしりと彼らを指差しながら厳しく命じた。
「早く終わらせなさい!」
「は、はぁ…」
母に蹴飛ばされそうになって俺は慌てて彼らの前に出た。
「よし!今日は早く現れたな!アスラン・ザ……どわっ!!」
喋りかけていた一人を問答無用で投げ飛ばしたら、他の奴等が焦った。
「ちょっ!なんだ!?まだ今日の決め台詞を言ってないのに…!」
「悪いが今日はゆっくり相手している余裕はなくなったんだ。許せ」
「そっ、そんな……ぎゃっ!!」
「お前!ヒーローには決め台詞が必要不可欠なんだぞ!どんな悪役も決して手出しをしない暗黙の約束を破るとは…この外道!…ぐふぉぁっ!!」
悪役だろうが外道だろうが知るか。俺には鬼化した母の方が怖いし切実に優先すべき問題なんだ!息子が母親に逆らえないのは、万国共通だろ!
苛々と腕を組んで俺を待っている母をこれ以上怒らせる訳にはいかず、できるだけ素早く全員打ち倒すと、母は待っていましたとばかりにつかつかと俺に近付いて、再び耳を引っ張って勢いよく歩き出した。
「いてっ!痛いです!母上、ちょっ…歩きにくいから耳は離し…いてて!」
「…アスラン・ザラが耳引っ張られてる…」
倒れていた誰かがぽつりと呟いて思わず、という様子で呆然としながら携帯で写真を撮り、執事に殴り付けられてそれを取り上げられ、データを消されているのがちらりと見えた…。

「ヴィア!朝早くにごめんなさい!ヴィア、いる?」
ヒビキ家のチャイムを勢いよく鳴らして、母は玄関を開けるなり叫んだ。この辺は近所のよしみというか、裏口からも行き来する仲だから遠慮がない。
すぐにお義母さんが出てきて、その後をキラ、カガリ、ステラの順についてくる。
この歳で朝っぱらから母親に付き添われて恋人の家に来なければならないのも恥ずかしければ、これから母が俺たちの密事を暴露した挙句、俺が皆の前で公開説教を食らうかと思うと恥ずかしいやら格好悪いやらで、俺はばつが悪い思いで視線を逸らせた。うぅ…カガリに会わせる顔がない…。
「一体どうしたって言うの?レノア」
「ああ、ヴィア!ごめんなさい!」
首を傾げるお義母さんに、母は大袈裟な身振りで捲し立てた。
「本当にごめんなさい。この子ったらゆうべ一晩中帰って来なかったと思ったらカガリちゃんのお部屋に泊まったなんて…それも窓から忍び込んだなんて言うんですもの!ほら!ちゃんと謝りなさい!」
母は何の躊躇いもなく俺の悪事を暴露すると、また耳を引っ張った。
「いててて!痛いです。は、母上…いて…」
「わざと痛くしているんです!」
ぎゅうぎゅうと引っ張られて無様な姿を曝している俺の前で、一旦真っ赤になったカガリはすぐに真っ青になった。お義母さんが絶句して振り向く。
「カガリ、あなた…」
「あ、ああああのその…」
可哀想なほど狼狽したカガリを救うため俺は急いで口を開いた。耳を引っ張られた情けない様子では格好も付かないが、そんな事を気にしている場合ではない。カガリは何も悪くないのだから。
「すみません。俺が無理矢理押し掛けて泊めてもらったんです。彼女に非はありません」
「ち、違います!私が帰ろうとしたアスランを無理矢理引き止めたんです!」
「いくらカガリちゃんが許してくれたからって言っても、人様のお家に窓から上がり込むなんてとんでもない事だわ!」
「非常識な事をしました。申し訳ありませんでした」
カガリが慌てた様子で割って入ろうとしたが、母は当然その主張を受け入れるはずもなく、俺も罪を認めて頭を下げた。やはりどう言っても俺の行動が常識的ではなかった事は間違いないし、カガリを抱いてしまった訳だし…。
そうは言っても俺に後悔する気持ちはなかった。ただ、カガリが叱られ肩身の狭い思いをさせてしまった事と、不法侵入して、家を預かるお義母さんの立場を潰してしまった事は申し訳ないと思っている。
秘め事は…秘め事なのだ。当事者以外は知らぬうちは罪にはならないのが秘め事だ。発覚した時に初めて罪になる。バレるようなやり方をした俺が悪い。
考えなしに飛び出した事を悔やみながらお義母さんの叱責を覚悟して頭を下げていると、カガリが先に叫んだ。
「違う違う!!」
カガリは飛び出してきて、俺を守るかのように両腕を広げて俺と母、そしてお義母さんとの間に立った。
「アスランは悪くないんです!アスランはちゃんと帰るつもりだったのに私が我が儘言ったから──…」
「カガリ」
ひたすら自分だけが罪を受け止めようとするカガリを庇うために、俺はカガリの肩に手を置いて下がらせようとした。こういう事でどちらが悪いかなど、いちいち言うまでもない。男が悪いに決まっている。押し掛けたのも、我慢できなかったのも、全部俺のなのだから(カガリは俺を押し倒したり、無邪気に理性を壊してくれたが、それはそれだ。きっとカガリは自分のしている事の意味を半分も分かっていないと思う。どれほど俺がカガリの誘惑と戦ったかなんて…はぁ…)。
しかしカガリは突然弾かれたように身を翻すと、俺の胸に飛び込んできたかと思ったら、驚いて抱きとめた俺に顔を擦り付けるようにしながら必死な様子で叫んだ。
「悪いのは私なんだ!だからアスランを怒らないで!」
俺は心の中でこっそり苦笑した。
昔から悪事がバレて俺が怒られるとカガリは必ずこう言って泣きながら俺を庇ってくれた。子供の頃から一言一句変わらぬカガリの決まり文句なんだ。こういうとこ、カガリって全然変わらないよなぁ…あぁ、また今も泣きそうに…。
「カガリちゃん、お願いだからこの子を庇わないでやって」
「カガリ、泊まる以前に窓から押し掛けたりした俺が悪かったんだから…」
俺はカガリを宥めようとしたんだが、カガリはいやいやと首を激しく振ってますます俺にしがみついた。こういう、一度言い出したら聞かない頑固なところもちっとも変わらない…。
そんなカガリにお義母さんが険しい視線を注いだ。
「…カガリ、あなたって子は…ゆうべ本当にアスラン君を泊めたの?」
「は、はい…」
カガリは青ざめながらもお義母さんの方を振り向き、神妙な顔で頷いた。
「お義母さん、待って下さい。悪いのは俺──…」

アスランの日記【遠足2】 

May 25 [Fri], 2007, 23:22
想いを込めて抱き締めると、カガリは抵抗も恥ずかしがる事もせず素直に俺に身体を預けてきてくれたりするものだから、胸が甘く蕩けた。いつも恥ずかしがるから、こんなふうにすんなり緊張しないで身体を預けてくれるのは珍しい…恥ずかしがってるのもそれはそれで可愛いが……あぁ…俺、本当に幸せだよな…。
これも、より一層深い関係になったおかげかと思うと(だって、抱く前は付き合っていてもこんなふうにはほとんどならなかった。最後は安心して力を抜いてくれるが、いつでもカガリは最初、緊張したように身体を強張らせていて…やっぱり身体を許すって、女の子にとっては大きいんだろうな…)、もう夜這いはしないだなんて、とてもではないが思えない。カガリが本気で嫌がるならばともかく、今のところ夜中にこっそり忍んで行って嫌がられた事は一度もないし。
こんな騒ぎになった以上、今夜も…とはいかないだろうが、チャンスがあったらまたしよう(今夜チャンスがあったら行くけど)…などと考えながら、俺はまだ戸惑うような表情を微かに見せたカガリをリビングへと促した。
ダイニングでは朝食の最中だったらしく、キラとステラがすでに食事を再開していた。リビングのソファでは、お義母さんと母が何やら熱心に議論を交わしている。
カガリは俺に緑茶を出してくれた後、自分の席に着いて食べかけの茶碗を急いで手に取った。隣に座って湯呑みを口にした俺は、カガリのせわしげな様子から、時間はあるから焦らず落ち着いて食べるよう、もはや身に染み付いたと言っても過言ではない小言を言ったほうがいいかと思って、急いで口の中の液体を嚥下しようとした…その時。
「カガリー、私は初孫は男の子でも女の子でもいいわよー」
思わぬ発言が、思わぬ大きな声でリビングに響き渡り、俺は飲みかけていた緑茶を盛大に噴き出した。ちょっ…待て!うちの両親だけでなく、お義母さんまで!?
隣ではカガリが目を白黒させて胸を叩いている。俺と同じ羽目に陥ったのは一目瞭然だ。だがカガリの方が被害は少なくて済んだらしく、モロに気管に入って噎せていた俺の背中を、カガリは優しく撫でてくれた。ああ、ありがとうカガリ…いや、だってさすがにこんな事言われるとは夢にも思わなくて…よく知っている人のはずだったが、まさかお義母さんがこの手の話題にまで乗ってこられる人だったなんて知らなかった……って言うか、カガリの手付きが優しい…。
しかし明らかに軽口として言っているお義母さんに対し、母は本気だった。
「ヴィア!ダメよ!最初は絶対女の子!」
あまりに真剣な様子の母に、俺は穴があったら入りたい気持ちに襲われた。息子としてものすごくいたたまれない。
あああ、母上…お願いですから、そういう願望はせめて俺の前でだけにして下さい、恥ずかしい……それに…それにカガリにだけはそういう台詞を聞かせたくない!だってもしも…もしもカガリが真に受けてその気になってしまったらどうするんだ!『アスラン!赤ちゃん作ろう!』とか気合い満々で誘われたら俺、ナマの誘惑に抗いきれずにヤってしま……いやいやいや!
確かに俺はこの前カガリに『子供ができても法律変えてやる』と言ったが、それは不安がるカガリを安心させるためであって、決してすぐにでも親孝行のために子供を作れる状況を整える!≠ニいう意味じゃなかった!むしろ俺的には、早く夫婦=i両親≠カゃないぞ!夫婦≠セ!)になるためとか、一緒に暮らせるためとか、公然と夫ヅラできるとか、法的に『妻だ!俺のものだ!』と言いふらせるとか……とにかく、俺がカガリといちゃつける権利の獲得のための話だったはずなのに!(カガリを抱く以上、一応父親になる覚悟はあるが)むしろそんなのあと十年は考えたくない!俺だってまだ十六なんだ!まだ家庭より恋人といちゃいちゃしたいと思ったって許されるだろ!?まだ!
ううう…母があんまり孫、孫、言えば、カガリにとっての結婚が、俺の妻になる≠ゥら姑のために速やかに子供を産む≠ノ意識がシフトする可能性が…!それでなくともカガリは嫁いで来たからには跡継ぎを産むのが嫁の使命!≠ニか、いかにもな事を考える危険が極めて高そうな古風な女性だというのに!そうしたら当分はいちゃいちゃだけしていたいという俺の野望はどうなる!
結婚できない=子供は作れない≠ヘ、一緒に暮らせないなどのデメリットもあるものの、今のところそんなカガリに対する最大の抑止力だった…んだが、俺はこの前警視庁の奴らの余計な言葉にあまりに不安そうにしていたカガリを見かねて、その力をほとんど削いでしまった。
俺はそれを、今さらほんの少し後悔した。早まったかなぁ…もし母がはっきりとカガリに『孫が欲しい』だなんて言ってしまって、真面目なカガリが本気にして、法改正を当てにして俺に訴えてきたら………だ、駄目だ!カガリに欲しいって頼まれたら俺は……あああ!絶対に拒めない!きっとカガリを孕ませてしまう!
カガリに背中を撫でてもらいながら、俺は脳内で散々悩み、最後にはカガリが母の戯言をまともに受け止めず常識的な判断をしてくれますように、と祈るしかなくなった。するとカガリが赤くなりながら申し訳なさそうな顔で謝ってきた。
「…ご、ごめんなさい、アスラン…あんなお母様で…」
「いや、こちらこそ…」
本当に…謝るのはこちらの方だ。…というか、まだ高校生なのに親から身も蓋もない話をされていたたまれなくなる俺たちって…これも単なる恋人ではなく婚約した者ならではの問題なのだろうか……だとしたらこれもまた、二人で乗り越えていかなければならないよな…。
お互い目線を合わせないようにしながらも(多分)互いの親に同じような思いを抱いて恥じ入っていると、そんな俺たちを不思議そうに見ていたステラが唐突に言った。
「はつまご?女の子?男の子?」
するとキラがすかさずにやりとして口を挟んだ。
「そうそう。カガリとアスランは赤ちゃん作るんだって。ステラは男の子と女の子、どっちがいい?」
「「キラ!!」」
慌ててキラを咎めるカガリと俺の声が重なった。キラ…!お前、なに勝手な事を言っているんだ!言っていい冗談と悪い冗談があるだろう!
俺とカガリの非難の眼差しを受けても素知らぬ顔をして悪びれないキラに、俺たちは口々に反論した。
「赤ちゃんなんて作れるわけないだろ!私たちまだ学生なのに!」
「子供なんて作れる訳ないだろ!まだカガリと全然いちゃいちゃし足りないのに!」
「…君たち、一度話し合った方がいいんじゃない…?」
当然の事を言ったのは明らかに俺たちの方だというのに(だってそうだろ?結婚もできないうちから子作り、なんて話になるのは非常識だ)、何故かなんとも言えないような目付きで見られて俺はむっと顔をしかめた。話し合った方がいい?俺とカガリが?何を?
確かに幼馴染みとは言え、朴念仁の俺では女の子の繊細な心には配慮が行き届かない事が多々あろう。しかし、俺とカガリはこれでも一応両想いだ。将来の誓いまで許してもらえた関係だ。心は一つに決まっているだろう。今の発言のどこを聞いて話し合った方がいい≠ネどという話になるんだ。
そう思った矢先、カガリが不満そうにキラに言った。
「なにをだよ。私とアスランはちゃんと解り合ってるぞ」
ほらみろ、カガリだってそう思っている。
「そうだ。夢は同じだ」
俺はすぐさまカガリに同意した。
カガリはやはり母とは違って常識的だった。ちゃんと学生のうちは…と思っていてくれたのは今の発言からも明らかだ(心配する必要なんかなかったな)。つまり俺たちは同意見…心ゆくまでいちゃいちゃして、仲を深めるのが先だという事だ!
「あ、そう…カガリがそう言うならそれでいいけどさ…」
投げやりなキラの様子にカガリがますますむっとしたような顔をする。言い返そうとする気配のカガリを俺が止めようと(だってキラにどう考えられようと関係ないような気もして)した時、ステラが目を輝かせてカガリの服の裾を引いた。
「赤ちゃん!ステラも赤ちゃん欲しい!」
「「「………」」」
俺たちはまるで玩具やお菓子をねだるかのように気軽に赤子が欲しい≠ニ言ってきたステラを無言で見やり、それから顔を見合わせた。ステラがその発言の意味を欠片も理解していないのは分かる…分かるが。
「…ステラがシンたちとかにうっかりそんな事言っちゃったらどうしよう…」
カガリがぽつりと、なんとも言えない心配そうな顔で呟いたので、キラがすぐにその懸念を否定した。
「平気でしょ。シンならせいぜい赤くなって鼻血噴くくらいで。……ニコルならどうか分かんないけど」
確かにな…付き合ってもいないのにキスしてあれだけ大騒ぎしたシンだ(ったく、思い出しても腹が立つ。あの日、あいつのせいで一番迷惑を被ったのは誰がなんと言おうとこの俺だ)、『子供が欲しい』と言われてステラをどうこうするなんて、今のあいつにはできないだろう。ステラの言葉になんの含みもない事くらいは分かるだろうし……だが、ニコルなら解っていながら笑顔で都合良く解釈してステラを丸め込んだ挙句、ヤりかねないな。ニコルが本気でステラを欲しいと思えばの話だが。まぁ、するにしたって妊娠させたりはしないだろう…あいつ人妻専門とか、青少年にあるまじきとんでもない事言ってたし(いくら海外育ちで、有閑マダムたちに天使ともてはやされていたとはいえ…何故あんなに歪んでしまったのやら)…という事は、問題にならないようにする心得は十分にある訳だ。
「あいつなら迂闊なヘマはしないだろうから問題ないだろう」
「いや、できなきゃ何があってもいいって訳でもないし…」
一応、そう言ってみたらキラに微妙な顔で言われた。…ああ、そうなのか?作る、作らないの問題じゃなかったのか。あれで実はステラは無意識だがシンが好きらしいし(とニコルは言っていたな。人の事はよく分からないが。カガリの事すら分からない事はたくさんあるのに…ベッドの中での気持ちとか)。
暴力に拒絶反応を起こすステラが、いかにも誰にでも噛み付きそうな雰囲気のシンが好きとは…恋とは分からないものだな……などと考えていると、キラが溜め息を吐きながら俺に向かって言った。
「…女の子ってこういうこと、さらっと言ってくれちゃうから困るよね……ラクスもね〜、時々な〜んにも含みなくそういう事言うんだよね……いや、可愛いんだけどね、そういう事言うラクスも。アスランもカガリに言われたことない?」
「…まあな」
俺は苦笑した。
大多数の女の子は小さいものや赤子が好きで、カガリもその例には漏れない(前にアザラシの赤子を見て目を輝かせていた)。俺の子供が欲しいと先週ははっきり言ってくれたりもした。しかしカガリは明らかに無作為だが、ラクスの場合作為があってもおかしくないように感じるのは俺の気のせいだろうか(キラがわざと騙されているのか、それとも本気でそう思っているのかは定かではないが)。
「あれって絶対誘ってる事になるよねぇ…だって男に向かって『私も赤ちゃんほしい』とか言うんだよ?男が下心ゼロなんかで笑って返せる訳ないじゃん」
確かに。男の前で迂闊にそういう事言わないで欲しいよな…赤ちゃん可愛い≠ニか赤ちゃん欲しい≠ニか夢見るような目で言われたら、=作るような事したい=誘ってる?とか男は思う…いや、思いたくなるというか、そういう事にしておこうかなぁ…というか、しておくしかないだろ!というか。

アスランの日記【遠足3】 

May 25 [Fri], 2007, 23:21
俺は少しばつが悪い思いで顔を逸らしながら謝った。
ゆうべは最初、本当にそんなつもりじゃなかったから大した配慮もできなかった。キラが隣にいると分かってはいたが(しかもキラは夜行性だ)、気が付いたらもう引き返せないところまで来ていたんだ。した事自体に後悔はないが、まぁ、隣からそういう物音がするのを聞くのは気まずいという気持ちは分かるから、そこは悪かったなと思わないでもない(二度としない、とは言い切れないが)。
「あ〜あ〜、いいよな〜!なんだかんだ言ったって結局アスランもキラも彼女といちゃいちゃしてんだもんな〜!アスランもとうとう奪・童貞しちまったし!俺だけ置いてけぼりかよ〜!」
話にキリがついたのを見て、ディアッカがつまらなさそうに溜め息を吐きながら頭の後ろに手を組んだ。
俺は別にディアッカに足並みを揃えてやるつもりなどさらさらないので同情も何もなかったが、キラは同情半分、からかい半分の声で言った。
「まあまあ。いつも念じてれば願いは叶うって言うよ?」
「いつもヤりたい〜∞ヤりたい〜≠チてかよ!ぎゃはは!どんなエロい男だよ、それ!」
笑い出したディアッカにキラがにやにやと言う。
「え〜、だってしたいじゃない?僕ら健全なオトコノコだし?」
「あ〜、まぁ……だよな。ホント、マジでしたいよな〜……念じてようかな、俺……おーい班長!最近フレイとはどうよ?」
突然話を振られたイザークはぎょっとした後、見る間に真っ赤になって叫んだ。
「う、うううううるさい!変な話を俺に振るな!」
「あ〜、その顔はしたんでしょ〜?」
「だ、黙れ黙れ!そんな破廉恥な話をこんな場所でできるか!」
「今さら照れるなよ〜。俺たちお年頃じゃん?考える事なんざそれだけってのは普通だろ。な、アスランもそう思うだろ?」
「そうだな」
「ほらみろ!生徒会長だってこう言ってるぜ!」
「アスラン!!貴様はなんという不謹慎な発言を…!全生徒の代表たる会長としての自覚が…聞いているのか!こら!」
何やら騒ぐ奴らの話に適当に相槌を打ちながら(いや、全く聞いていなかたた訳じゃない。健全な男子が四六時中可愛い彼女といちゃいちゃしたいと、そればかりを考えるのは、我が身を省みて全くその通りだと思う)、俺は少し離れた前を歩く女子たち(というかカガリ)を見ていた。遠足とは言えいつまでも男だけでむさ苦しくぞろぞろ歩いているのもつまらない。キラがどの程度俺たちの会話を聞いていたのかも把握できたし(カガリが怒鳴っていたところまでなら問題ないな)、俺はラクスたちに奪われたカガリを取り戻そうと思ってそちらに近付いた。やっぱりキラやディアッカに絡み付かれて歩くよりもカガリと手を繋いで歩きたいよな。
「ラクス〜…どうしよう…私……」
カガリが何やら心底困ったような声を出しかけた(後ろから近付いたので表情までは分からない)時、俺は閉じ込めるように背中からカガリに抱き付いた。
「ぅなっ!?」
カガリが形容しがたい奇妙な叫び声を上げて俺を振り向いたが、俺は俺からカガリを攫っていった女子たちを軽く睨みながら正当な権利を主張した。いつまでも、カガリを渡しておくつもりはないぞ。
「…俺のだ」
じろりと眺め回す俺を、ラクスたちは呆気に取られた様子で見ていたんだが、ややして何やら怪しい笑みを浮かべた。
「…そうでしたわね。申し訳ございませんわ」
「せっかくの遠足だものね。デート気分でいちゃいちゃしたいわよね」
「どうぞ、ごゆっくり〜」
そう言って三人は俺たちから離れていった。いかにも何かを企んでいるのは明らかだが、分からない以上、引っかかるしか俺に道はないので気にしない。彼女らの入れ知恵でカガリがおかしな事を始めるのも、俺がそれに振り回されるのも今さらだ。いちいち気にしていてはカガリとは付き合えない。なるようになれ、だ。
カガリが何故か置いて行かれた事を焦るように困った顔をして手を伸ばしたが、誰もそれに応えなかったので力なく腕が下ろされた。カガリは一体何を話していたのだろう…そういえば俺が抱き付く時、カガリは何かを言いかけていた。昨日は昨日で不思議な事を悩んでいたし(俺が綺麗で、裸を見るのが恥ずかしいとかなんとか)、まだ他にも悩みがあったのか?
なんでいつも俺じゃなくてラクスたちに相談するんだろう…昨日のなんて完璧に俺とカガリの…恋人同士で乗り越えなきゃいけないような問題だったじゃないか……なんてちょっと不満に思っていると、カガリが困ったように俺を呼んだ。
「…あの…アスラン…」
「なに?」
「恥ずかしいよ…」
恥ずかしい?これが?ただ後ろから抱き締めているだけじゃないか。別に如何わしいところを触っているわけでなし…。
「別にこれくらい平気だろ?他にもしてる人はいる」
ジェットコースターに並ぶ人々をちら、と見ながら、自分のしている事はカップルの平均的なスキンシップの範疇内だと判断した俺がそう言うと、カガリは眉尻を下げて恥ずかしそうに俯いた。どうしてそんなに恥ずかしそうなんだ…さっきの隠し事のせいか?
「だ、だって……あの…あのな…」
「どうしよう…私…≠チて、何…?」
何か言い訳しようとしたカガリの耳元に顔を近付けて、さっき盗み聞いた言葉の続きを囁くように聞いてみる。するとカガリはぎょっとしたように身体を強張らせ、見る間に赤くなった。
「……な、なんのことだ…?」
カガリが俺を振り向きながらもあからさまに視線を泳がせて白々しい言葉を吐く。……ふ〜ん…そんなに真っ赤になって狼狽えるような事、俺に隠してるんだ…。
じっと見つめていると嘘の吐けないカガリはいかにも戦々恐々といった顔をして息を飲みながら俺を見つめてきた。無理に聞き出しても良かったんだが(吐かせる方法などいくらでもある)、今は場所が悪いから止めておいた。視界も声も遮るものが何もない、行列作ってジェットコースターに乗るのを待っているような場所で、際どい恋人同士の夜の悩みを打ち明けさせるのも可哀想だし。聞いて俺が我慢できなくなったら困るし。困った顔して俺を見つめるカガリ、可愛いし。
俺は息を吐いてその場での追求を諦め、話を逸らした。
「…今日の放課後うちに来てくれ。母が何か話したいとか言っていた。カガリ、この前何か頼んでいただろ?多分、その話だと思う」
バスに乗る時、母から電話があったんだ。何の話かは教えてもらえなかったが、母の話しぶりと、この前カガリが母に頭を下げていた光景を目撃した事から推察するに、何かを頼んだのだろう。
「へっ…?あっ、ああ、うん。分かった」
カガリの方でもやはり了解済みの事だったらしく、カガリはあっさり頷いた。その内容も気にならない訳ではなかったが、とにかくこれで後はべたべたしながらジェットコースターの順番を待つだけだ…と思ったんだが。
「アスラン…あの、離して…」
「やだ」
逸らせたと思った話を蒸し返されて俺は即答した。頬を染めたカガリが困ったように眉尻を下げる。申し訳ないが、すごく可愛いので全然止める気にはならない。
しかし、なんでまたカガリはこんなに恥ずかしそうにしているんだ?今までだって人前で抱き締めるくらい何度もしてきた。キスだってしまくっている。さすがにキスは怒られているが(でも全然怖くないんだが)、ただ抱き付いてるだけ(しかも今は抱き締めてもいない。ただ後ろから囲っているだけだ)で怒られるって事はあまりなかった…はずだが。
こんなに親密な仲になったのに、何を今さら恥ずかしがる事があるのだろう…カガリは本当にいつまでも初々しくて可愛いよな…などとしみじみ思っていると、俺に断られたカガリが自力で俺の腕を外そうとしてきた。組んだ指をほどこうとカガリの細い指が俺の指の間に食い込んでこようとするから、俺はわざと女の子には絶対ほどけないように力を込めた。
カガリは結び目をほどこうとするかのように指を割り込ませようとしたり、手首を掴んで引っ張ったり、俺の腕の中で散々四苦八苦していたが、どうしてもほどけないと分かったら、今度は俺の腕を持ち上げて下からくぐって抜け出そうとした。俺はカガリのしたいようにさせているように見せかけ、力など入れていないふうな顔で腕に力を込めた。カガリが必死に動かそうと力を入れるがそうはいかない。この俺がカガリを逃がすと思うか?
「…う、に……ににに……って!こら!アスラン!」
カガリはバーベルのように俺の腕を持ち上げようと力を込めるが、動かぬ俺の腕に怒って振り向いた。それまでにやにやしながらカガリの奮闘を見ていた俺は、さっと明後日の方向を向いて知らぬ振りをした。
「ダメだってば!もう!団体行動中なんだぞ?」
頬を膨らませて一生懸命俺を注意する姿があまりに可愛くて、俺はくすくす笑いながらカガリの肩に頭を落とした。
「カガリ可愛い」
囁くとカガリは真っ赤になって虚を突かれたような顔で俺を見た。耳元だったのがいけなかったのか、腕の中の華奢な身体がびくりと硬直したあと、慌てたように暴れだす。囲っていただけだった俺はくすくす笑いながらやんわりと、しかし確実に腕に力を入れ、可愛い恋人が逃げられないようにした。
恥じらいながら力ない無駄な抵抗を繰り返すカガリはとても可愛いから、俺もじゃれ付いていちゃいちゃできてとてもいい。遊園地で並ぶのは、恋人同士で来るならとても有意義な時間だよな…むしろ俺的にはアトラクションよりもメインと言うか…。
しかし、それでなくとも恥ずかしがり屋だったカガリは最近ますます恥ずかしがり屋になってしまった。俺たちの仲はどんどん深まっているというのに、何故なんだろう…謎だ…。どれほど深い仲になっても、女の子って解らない事だらけだな…。

いちゃいちゃしながらのジェットコースター待ちで俺はとても満足し、カガリもその後のジェットコースターですっかり機嫌を直したので、俺たちはお互いに満足しながらキラたちの立てた計画に従って次のアトラクションへと向かった。
だがその建物の前に立ち、それが何なのか気が付いた途端、カガリの顔が強張り、足が止まった。
それはいかにも…胡散臭いほど不吉そうにしているが故に(俺などには)逆に滑稽にも見える半廃墟と化した洋館…つまりお化け屋敷だった。まずい…カガリは怖いの苦手なんだよな…しかも何故か自分が怖がりだと認識していない。
俺は内心こっそり溜め息を吐いた。困ったな…無理させたくないんだが、カガリはこれに関しては頑固だからな…。
カガリが俺の腕にしがみついた。お化け屋敷を凝視しながら息を飲む身体は微かに震えている。
「…カガリ、怖いなら無理に……」
「なっ、何言ってるんだ!私はちっとも怖くなんかないぞ!」
絶対に否定されるとは思ったが、それでも一応俺が心配して、震えるカガリの顔を覗き込みながらそう言ったら、案の定カガリは即座に返してきた。
「その割にはさっきからアスランにしがみついて離れないわよね…」
胡乱な眼差しで即座にフレイから突っ込みが入る。確かに、震えながら俺にしがみついているカガリは、どこからどう見ても怖じ気づいているようにしか見えない(しかし、このいかにもすぎる子供だましのお化け屋敷にここまで怯えられるところがある意味すごい)。
カガリは驚いたように自分の有り様を見下ろした。そうだ、ちゃんと自分を見つめ直してくれ、カガリ。

アスランの日記【遠足4】 

May 25 [Fri], 2007, 23:20
邪魔が入った事で、俺は何がなんでもカガリといちゃいちゃしたいという闘争心に火が付いた。逆境は時に人にやる気を起こさせるものだ。
死神が手にした鎌を空振ったのを見てカガリがほっとしたように息を吐きながら俺を見上げてきたのを見計らって、俺はカガリにキスをした。
「んんっ…!」
壁に背を預けてカガリを腕の中に閉じ込めながら、その唇を奪う。今日は妙に恥ずかしがるからずっと抱き付くくらいで我慢していたが、もうこの際関係あるか。ここは人の顔もはっきり判別できないほど暗いし、今、この部屋には誰もいないのだから。
それに、あまりに怖がるカガリの気を恐怖から逸らせたいという思いも実はあった。俺に都合の良いだけの勝手な作戦だが、怖がって悲鳴を上げられるよりは、恥ずかしがって悲鳴を上げられた方が(俺が)マシかと思って。
唇を深く合わせても、舌を入れて絡み付かせても、カガリは腕の中で大人しくしていた。単に驚いているだけかもしれないが、俺は暗闇をいい事に調子に乗ってカガリの脚へと手を伸ばした。
「やっ…ちょ、どこ触っ……ぅンっ…」
柔らかで弾力のある大腿を撫で回してスカートの中まで這い上らせていこうとすると、さすがに気付いたらしいカガリが慌てて唇を離して抗議しようとする。俺は逃れようとカガリが俺の胸を押すよりも強く腰を抱き寄せ、首を振って外されようとする唇を執拗に追いかけては塞いで舌を絡み付かせた。そうして手を太ももの内側へと滑り込ませて下着で覆われている部分へと触れた。
「……っ…!」
カガリの身体がびくりと硬直し、喉の奥で悲鳴が上がるが、俺は構わず柔らかく温かな感触を求めてまさぐるのを止めなかった。
「……ぁっ…!」
カガリが敏感に反応し、仰け反るように唇を離した。声を出さぬよう、慌てて両手で口を押さえる。困りきったように眉がひそめられ、目は潤み、頬を真っ赤にして声を堪えようとしているのを見ればますますいけない事をして困らせてみたくなる。こんな、ちょっと触っただけでこの反応…感じやすすぎる…。
「お願……そこだめ…触らないで…」
「なんで?」
俺に脚の間を弄られて息を飲みながら懇願するカガリを笑って抱き寄せながら、俺は耳元に寄せた唇から優しい声で問うた。身体の力を抜いて俺に預けてくれてるし、俺が触るたびに身体を震わせるのは、感じてくれているからじゃないのか…?
俺は朴念仁で女の子の繊細な気持ちにはとことん疎い男だから、付き合ってから今まで、カガリには本当に色々迷惑をかけていると思うんだ(そして多分これからも)。特にカガリの身体に直接触れるこういう事は、カガリの感覚や気持ちが大事だと思うし(女の子は気持ちでこういうの左右されるって聞くし)。
だからこそ、俺はこれまでカガリの些細な反応というものを見落とさないようにしてきたつもりだ。特にカガリは恥ずかしがり屋で、いくら聞いてもこういう事ははっきり言葉にはしてくれなかったから、俺にはカガリの身体の反応だけが頼りだった。
今はまだ修行中の身だから至らない事だらけだし、生涯ずっと精進し続けなければならない事かもしれないが、少しは…ほんの少しくらいは経験値も増えて(まだたったの一週間だからどれほどの事もないというのは解ってはいるが)、カガリが気持ちいいと思ってくれているのかどうかくらいの判断は、少しは…つくようになった……はずだ……そして今のは少なくとも嫌がっている反応では……ないはず。
だから俺は逃げる様子のないカガリが息を乱し始めている事に気を良くして、もう少し大胆に指を進めてみる事にした。下着の上から柔らかさを確かめていたそこに直接触れてみようと、指をそろりと這わせた途端。
「だめっ…!」
気付いたカガリが突き飛ばすように思いきり腕を伸ばしたので俺は手を止めた。
カガリは伸ばした腕に顔を隠すように俯きながら、上擦った声で叫んだ。
「こ、こここここここんなとこでなにするんだっ!!だめだっ!だめだぞ!ここはすっごく危険な場所なんだからな!気を付けてないと死んじゃうんだぞ!」
部屋は薄暗くて、俯いたカガリがどんな顔をしているのかはいまいち分かりにくかったが、途中から顔を上げてくれたので暗闇に慣れた目のせいもあって大分よく見えるようになった。真っ赤な顔に必死な表情を浮かべてじっと俺を見つめている……可愛い。
俺はずっと止まらなかったカガリの震えが止まっている事に気付いた。心の中でほっとする。少しは怖さが紛れたのだろうか。だったら何かした甲斐もあったな。
こんな場所で死ぬ訳がないんだが、現実を理解させる手は使えない事がすでに判明している。例えここが本当に命の危険がある場所だったとしても、カガリを手に入れられるのであれば俺は躊躇うものでもないが…。
俺は、遊園地のお化け屋敷で真剣に命の心配をして一生懸命になっている可愛すぎる恋人の必死の表情を見つめ返して、微笑みながら抱き締めた。
「じゃあ、早く安全なところに行こう」
「もっ、もちろんだ!」
危険な場所では駄目だと言うのなら、安全な場所でならいいのかな…?と思いながらカガリの腰を意味深に撫でると、カガリは俺を押して腕の中から逃げ出した。けれど、こちらを振り向かずに、不埒な事をしていた俺の手を鷲掴んで勢いよく歩き出した。
俺は笑ってカガリに従った。

その後も散々あちこちで悲鳴を上げては俺に抱き付いてきたカガリを庇い、優しく宥め、とても美味しい思いを味わいながら俺たちが館を出ると、他のメンバーはすでに待っていた。まぁ、事あるごとに悲鳴を上げるカガリがそのたびに立ち止まり、落ち着かせて先に促すのに時間がかかったから当然か。
「カガリ、あんた随分遅かったけど大丈夫だったの?」
「そうよ。あんまり怖いの我慢すると心臓に良くないわよ」
行く前の様子からせっかく心配してくれた友人たちの言葉にカガリはきょとんとしてから、あっさりと言った(喉元過ぎればなんとやら…だなぁ)。
「私は怖いの嫌いじゃないぞ?お化け屋敷もホラー映画も平気だ」
…あれだけ叫んでいて、よくもまぁそんな事が言えたものだ。思い込みの力って凄い。
「…あんた、本気で自覚ないの…」
「…信じ込んでるみたいね…」
もちろん、フレイやミリアリアにそのような勘違いは通用せず、本人が気付かぬ真実を見抜かれたカガリは生ぬるい憐憫の眼差しを向けられていたが、カガリはそれでも不思議そうに首を傾げるばかりだ。
「…それよりも、アスランはずいぶんご機嫌なお顔をなさっておりますわね…」
どうにも今さら矯正は無理そうなカガリの思い込み問題には一切触れなかったラクスが(ラクスは付き合いも長いからとうに分かっているのだろう。…ったく、真面目にカガリの心臓を思いやって今でも心配しているのは俺だけだ)、ちろりと冷たい眼差しで俺を見ながら話題を変えた。
そりゃあご機嫌にもなるだろ。あれだけ抱き付かれて可愛く震えられて。カガリ、悲鳴上げて飛び付く時は、俺に隠れようとするみたいに身体を擦り付けてくるんだけど、我に返ると急に一生懸命強気なんだもんな。可愛すぎるだろ。
「そりゃ遊園地だもんな?楽しいからだよな?」
振り向いたカガリが不思議そうな顔のまま当然のように聞いてきたから俺は微笑んだ。遊園地は別に好きでもないけど…。
「楽しいよ。カガリが大胆に迫ってくれるから」
こういう美味しい事があるのなら遊園地も悪くない…と思ってそう答えたら、カガリは何故か真っ赤になって勢いよく首を振った。え?なんで否定されるんだ?
「でもさっきも暗がりで俺のこと押し倒して…」
「あ、あああああれは死神が…!」
俺が先ほどの出来事を指摘しようとしたらカガリは慌てたように言い訳してきた。いや、動機はそうかもしれないけど、した事はさ……俺としてはカガリといちゃいちゃできて良かったなぁ…って…。
「死神?あぁ…あの3D映像の…」
「結構リアルでドキッとしたけどね。でもあんなの別にすり抜けるだけじゃない?」
「姫さん、アスランを押し倒す言い訳にそんな理由にならねー理由つけなくてもいいんじゃね〜?」
「ち、ちが…」
皆はカガリがよもやそこまで本気になってお化け屋敷の作り話を信じているとは思っていないから、誰もカガリの言い訳を信じていない様子でにやにやしている。カガリはますます赤くなって必死に首を振ったが、恥ずかしがって否定するから疑いは深まるばかりだ。
カガリは俺に助けを求めるように制服の裾を引いて俺を見上げた。う〜ん…そんなに潤んだ目で必死に見つめられるとキスしたくなるな…。
カガリが何を言って欲しいのかは察したが、俺はカガリが可愛いからからかう道を選択した。にっこり微笑んで小首を傾げる。俺は別にいつ、どこでカガリに襲われても大歓迎だ。
「…カガリがその気なら、俺はいつでもどこでも構わないよ?」
カガリは困ったような、よく分からないような複雑な顔をして俺を見つめた。するとラクスが唐突にカガリの腕を引きながら言った。
「わたくしたちは飲み物を買ってまいりますわ。キラは何がよろしいですか?」
「え?あ〜…じゃあリンゴ」
「俺、コーラね」
「茶ならなんでもいい」
すぐに返事をしたキラに続いてディアッカとイザークも答えた。
「では行ってまいりますわ」
俺だけが咄嗟に飲みたいものなど頭に浮かばず、すぐに答えられずにいたら、ラクスはカガリの腕を引き、フレイとミリアリアを連れてさっさと自販機の方へ行ってしまった。俺はぼんやりとそれを見送った。……俺、子供の頃から時々ラクスには虐めを受けているような気がしなくもない……カガリをお嫁さんにする予定だから恨まれているのだろうが…お化け屋敷でイイ思いしやがってこのやろう…という事か。
「…はぁ〜…羨ましいよな〜、アスランは姫さんといちゃいちゃできて」
どうでもよさそうな事を考えながらぼんやりとカガリを眺めていたら、ディアッカが溜め息を吐きながら噴水の縁に腰掛けた。キラも隣に座りながら同意する。
「だよね〜。僕らホント、タイミング悪くラクスたちとケンカしちゃったから…なんかこう…明日ちゃんと埋め合わせするまでは微妙なんだよねぇ…」
「まだ埋め合わせもしてねーのに、デート気分で調子乗ったら反省が足りない!とかさぁ…また点数引かれそうじゃん。俺なんか隣歩くのが精一杯だぜ〜…」
苦笑するディアッカの言葉にイザークがぎょっとしたように息を飲んで青ざめた。
「…お化け屋敷で手を引いたのは……ま…間違いだっただろうか…?」
「あ〜…イザークはさ、普段からスキンシップが少なくて怒られてるし、純粋にフレイが転んだりはぐれたりしないように手を繋いでた訳でしょ?大丈夫だと思うよ〜。僕も手は繋いだし」
「え〜、マジで?もしかして俺だけNG?…っつか、キラ。お前昨日ラクスとヤったんじゃねぇの?だったらもう完全仲直りじゃん」
するとキラは大きな溜め息を吐いて頭を抱えた。
「…あの時はさ〜…ラクスが僕以外の男を知ってるのかと思ったらカーっとなっちゃってつい……思いっきりヤっちゃったからこそ気まずいんだよ〜……今になってみたら、ラクスにどう思われたかと思うと生きた心地しないもん…ラクスはそういうの隠すの、得意だし…」
「今はまだ執行猶予期間だからな…」
「「「はあぁ〜〜〜……アスランはいいよな(ね)…」」」

アスランの日記【遠足5】 

May 25 [Fri], 2007, 23:19
カガリはとうとう最後まで、俺が何をしたのか、どうしてこんな気分になっているのかも解らなかったみたいだった。何を勘違いしているのか知らないが、何故か俺を慰めようとしていたみたいだし。カガリの思考回路は摩訶不思議で、長年付き合ってきても到底理解には及ばない事がたくさんある…(分かりやすすぎるほど分かりやすい時もあるけど)。
これもまた、カガリという女性を愛した男の宿命だ。…いや、こういうところもすごく可愛いと思う辺りが、惚れた方が負けというか、俺も大概終わってるよなぁ…なんて……まぁ、今さらな話だが。
気付かぬカガリの無垢さにやるせなさと愛おしさを募らせながら、俺は俺の腕の中で大人しくしてくれている、それゆえ俺のものだと辛うじて感じられるカガリの存在感とぬくもりを、自身に刻むように味わった…。

観覧車を降りてからは、もう俺はカガリの側から離れなかった。皆も危機感を募らせた後での二人きりが良かったのか、あの月曜日の喧嘩後にどことなく漂っていたぎこちなさは軽減した様子で、それなりに仲良くなっていたようだった。
そのせいか園内を回る時にカガリを女性陣に奪われる事もなく、カガリも俺と腕を組んでぴったりと寄り添ってくれていたので、俺はデートらしく回れた事に満足して遠足を終えた。
遊園地はカガリが大好きな場所だし、とても喜ぶから、行く意義のある場所だと思っていた。俺自身は正直、こういう騒がしい場所はあまり得意ではないと思っていたんだが…今日はかなり楽しいと思えたな。結局、騒がしかろうが静かだろうが、カガリと二人で楽しめれば、俺はどこでもいいんだろう。恋人になってからカガリと遊園地に行くのは二度目だが、友達としてキラやラクスと行っていた頃とは楽しさが違ったから、恋人として≠ニいうところが重要なのか。
なんにしても今までで一番楽しい遠足だった事は間違いないな。

楽しい気分のまま学校に着き、帰る段になって初めて、俺は言いたくなくて(だって、言ってしまえばそれは動かせぬものになってしまう)今までずっと黙っていた事を白状した。……つまり、仕事のせいで今日は一緒には帰られない事を。
「えっ?お仕事?」
カガリはもうすっかり帰る支度をして、机に置いた鞄を両手で持ちながら、きょとんと俺を見た。
「…ごめん。実は父の陰謀に嵌まって、急に忙しくなって…カガリには家の車が迎えに来てるから」
俺はギリギリまで予定を黙っていた事と、言いたくない事を言わねばならい事への気まずさを感じながら謝った。
カガリを一人で帰らせる訳にはいかないから車だけは手配しておいた。母との用が済めば、もちろん運転手がヒビキ家まで送る。安全面での心配はないんだが……ああ、俺もカガリと一緒に帰りたい…。
遠足が楽しかった分、別れ難い想いが募る。だってここで別れたら、夜中まで仕事のある俺は明日までカガリに会えない。彼女は用が済めば自宅へ帰ってしまうだろうし、俺にそれを引き留める理由はない。まさか深夜に帰って、カガリがにこやかに家で『おかえり』と出迎えてくれる訳もないし(あぁ…いいな、そういうの。カガリに出迎えてもらえたらきっと癒されるに違いない。憧れるなぁ…)、今夜は夜這うこじつけ理由もない。今朝の事を考えると二日続けて…もまずい。きっと母に悟られる。下手をしたら、今度の恥はカガリの目の前で耳を引っ張られる程度では済まないかもしれない。カガリの前で恥をかく事だけは、なんとしても避けたい。
考えれば考えるほど言いたくなくなったが、それでも重い口をやっとの思いでこじ開けたのは、急に押し付けられたとは言えど、いずれ受け継ぐ覚悟をしていたものへの責任感と義務感と…そして今日を我慢する事が明日と明後日の自由な時間へと繋がるからだ。
せっかくのカガリとの泊まり旅行が、俺だけ仕事でキャンセルだなんて冗談ではない。しかも他の皆はそれぞれ恋人としての仲を修復させるために行くのだから、一人のカガリがつまらない思いをするかもしれない。自分の恋人を一人で放置し、手持ち無沙汰にさせるなど、俺としては到底許されない失態だ。一人でも楽しく過ごしました…とかだったらそれはそれで…いや!駄目だろ!俺がいなくても楽しかったなんて事になったら俺が寂しい!でも、カガリは俺がいてもいなくても気にせず何でも楽しんでしまう人だから、そういう可能性も大有りだ!嫌だ!何がなんでもカガリを一人にするわけにはいかないぞ!(俺のために)
とにかく彼女とのいちゃいちゃな週末のために、俺はどうあっても今日の寂しさを乗り越えなければならない。これは試練だ。明日の事を考えれば今日我慢する方が遥かにマシなはずだ。
ところが、断腸の思いで切り出した俺とは対照的に、カガリは実にあっさりと頷いた。
「…うん、それは分かった…けど、あんまり無理するなよ?」
俺は不満に思う気持ちを止められなかった(顔にも出てしまったかもしれない)。…だって、俺は辛くて苦しくて仕方ないのに、カガリはあまりにも平然としているから。俺の方がずっと、カガリを深く愛しているのは解っているが……でも…。
「…俺はカガリといたい」
俺はカガリを抱き寄せながら文句を言った。
片時も離れられないのはきっと、俺の方だけだ。カガリはしっかりしているから、こんなふうに子供じみた我が儘を言うのは俺だけ……でも一緒にいたいよ、カガリ…やっと俺のものになってくれた愛しい人と少しでも長くいたいと思うのは変だろうか?知ってしまった甘い蜜の味。分かち合ったただ一人の相手が愛しくて堪らないと思うのは。
「…い、いっつも一緒にいるだろ…」
カガリははにかんで、俺の腕の中で俯いた。それはとても可愛かったが、口から零れた正論に俺は焦れた。
いつも一緒にいる。…確かにいつも一緒にいるよ。いるけど…。
「足りない」
「えっ…」
ぼそりと呟いたら、聞き取れなかったのか、カガリが問うように顔を上げた。俺はあらわになった頬を両手で包み、大きな瞳を間近で見つめながら尋ねてみた。
「片時も離れたくないって思ってたら、だめか…?」
カガリが息を飲んで俺を見つめ返す。見開かれた大きな瞳も、何かを言おうとするかのように薄く開かれた唇も微動だにしない中で、白い頬だけが見る間に朱に染まっていく。
この美しい瞳を覗けば彼女の心が見えるのではないかと、俺がじっと吐息がかかるほどの距離で見つめ続けていると、瞳が揺れ、視線が伏せられたあと、カガリは小さく首を横に振った。だめじゃない?いつも一緒にいたいと思ってていい?
俺はほんの数センチ、頭を傾けるだけで手に入る位置にあった甘い唇を啄んだ。カガリは慌てて顔を伏せようとしたんだが、俺が顔を包んでいるから動かせない。仕方なくカガリは視線だけを伏せて俺の胸を力なく押した。
「ア、アスラン…だめ…」
「だめじゃないって、今言った」
俺はキスを繰り返しながら言った。カガリはおろおろと視線を彷徨わせる。
「そ、そっちじゃなくて、その…キスはだめ…」
そんな可愛い抵抗したって意味ないだろ、カガリ。側にいたい=こういう事をしたい、だよ。
「聞こえない」
俺はしらばっくれて片手を耳の下から首の後ろ…背中へと撫でるように滑らせていき、細い腰をぐい、と自分の身体に押し付けた。あ、と微かな声が零れ、カガリの身体が僅かに仰け反る。
俺は覆い被さるようにその唇を追った。開いた窓から入る微かな風で揺れるカーテンが俺たちを包むようにひらめいて隠す。互いの瞳しか見えない距離で見つめると、琥珀の中には、閉じ込められたかのように自分が映っていた。カガリにキスできて満足げな笑みを浮かべている、恋に囚われた男が。
「だ、だめだってば……お仕事、あるんだろ…?」
カガリはさっきよりも強く胸を押し返しながら顔を逸らした。俺の目の前には赤く熟れた耳朶が金の髪に見え隠れする。これは食べろと言っているようなものだ。カガリはいつも無意識に誘うのがひどく上手い。分かっていないくせに、俺がその気になるような事ばかりいつも…。
俺は溜め息を吐きながら甘く、芳しい香りのする首へと頭を落とした。頬擦りをするように邪魔な髪を払い、耳の中に吐息と共に囁く。
「…会社に連れていく」
「ひにゃっ……あっ…や…」
半ば冗談、半ば本気で言いながら俺は優しく耳朶を食んだ。カガリが母との約束より俺を選んでくれたら本当に連れて行くつもりだった。
けれどカガリは可愛い声を出すばかりで返事はくれない。
「にゃ…にゃ……だっ、だめ…」
だめ、じゃなくて……あ、一緒に行くのは駄目、って意味か?でもその割にはそんな、甘えるみたいにしがみ付いてきて…。
カガリが気持ちいいように優しくしているつもりなんだが、カガリは可愛い声で反応する割には逃れたがるかのように緩く首を振る。いいのか嫌なのか判断に困り、結果俺はもっと丁寧に耳を愛撫した。ねぇねぇ、俺と一緒に行こう?
「……め…だ、めだ…私はお義母様と約束が…ぁっ…」
俺は一生懸命優しくしたんだが、カガリは俺を押すのを止めず、喘ぎながらも決して誘いには乗ってくれなかった。つれない…というか、つれたためしがないな。俺が誰よりも一番カガリを愛して優しくしてるはずなのにどうしてだろう……努力が足りないか…俺に魅力がないからか?
恋人は自分に惚れている、と自信満々余裕でいられる男は、一体いかにして彼女の心を掴んでいるのか、コツがあるのならば是非とも学びたいと思いながら、俺は渋々カガリを会社に連れていくのを諦めた。
小さく溜め息を吐いてカガリを解放すると、カガリの顔を見ないように顔を背けた。だって、見たらまたキスしたくなる。止められなくなる。俺は彼女の誘惑には抗えない。ずるずるとあと少し≠やり続けて仕事が終わらなかったら、後で泣きを見るのは自分自身だ。
だから俺はできるだけカガリの方を見ないようにしながらその手首を掴み、もう片方の手で乱暴に鞄を引っ掴むと、早足で教室を出た。こうなったからには早くカガリを車に乗せてしまうに限る。俺がまた誘惑に負けてしまう前に。
女性に合わせた歩調ではなかったから、カガリは慌てて自分も鞄を取り、俺に引かれて小走りについてきた。それだけですでに可愛いと思ってしまう俺は終わっている。
玄関に待っていた家の車二台のうちの一台にカガリを押し込めるように乗せた。片膝だけ乗り上げた俺は頭を傾け、シートに座ったカガリに強引に唇を押し付けた。驚いたカガリをシートの背に押し付けて唇を奪う。
初めは荒々しく、けれど最後はゆっくりと名残惜しく思いながら唇を離して俺は囁いた。
「…また明日」
キスの直後のカガリは唇を濡らし、瞳を微かに潤ませていて、俺の理性を揺さぶりまくったが、俺はどうにか耐えて身を引く事に成功した(危なかった…ほんの少しでも気を抜いたらそのままシートに押し倒していた…)。
カガリは俺の言葉でくるりと表情を変えた。きょとんとしたあと、何の屈託もなくにっこりと笑った。
「うん、明日はまた皆で旅行だな!楽しみだぞ!」
…カガリの気持ちはもうすでに明日に向いているんだな…いつまでもうじうじと今の別れを惜しんでいる俺とは大違いだ。この前向きな姿勢を俺も見習いたいとは思っているんだが…カガリと離れなければならないとなると…うぅ…俺には無理だ。

アスランの日記【遠足6】 

May 25 [Fri], 2007, 23:18
*一部、大人向けな表現を含む文章がございますので18歳未満の方は十分ご注意下さいませ。
*閲覧は自己責任でお願いいたします。













改めてその理由を自分に問いかけてみると、それはひどく子供じみた思いだった気がして恥ずかしくなり、俺は思わず顔を逸らした。横目でちろりと様子を窺うと、運悪くカガリと目が合い、その問いかけるような眼差しに、俺は渋々答えざるを得なくなる。
「…ごめん……なんて言うかその……自分でも現実を認めたくなかったと言うか、カガリに言ったらこれを現実と認めざるを得なくなると言うか…」
そうだ…俺は本当は、ほとぼりが冷めたらこんな状況、どうにかしようと思っていたんだ…多分、漠然とだが…。そうすれば俺は元通り、ただの学生になる。カガリに言わなかったのも、俺が今のこれをなかった事にしたかったからなんだ…。
しかしカガリは不思議そうに首を傾げて、容赦のない一言を投げ掛けてきた。
「…私に言わなくても現実は変わんないぞ?」
「………」
めちゃくちゃ正論だった。痛すぎる…。そしてそれは、微かな可能性に縋り、必死に足掻いていた俺にトドメを刺した。痛恨の一撃に俺はあえなく力尽きた。カガリの言葉は攻撃力がありすぎる。
深い溜め息を吐きながら脱力すると、カガリが再び不思議そうに問いかけてきた。
「…もしかして、社長になるの、やだったのか…?」
俺はカガリの喉を撫でるように顎に触れ、カガリの顔を真上に上向かせた。そうして自分はそれを覗き込むように真下を向く。
嫌か嫌じゃないかと聞かれたら、そりゃ嫌に決まっているだろう。よりにもよってカガリと結ばれて一番幸せな時に、今まで以上に忙しくなってどうする。
「…カガリと一緒にいる時間が減るだろ」
俺は不貞腐れてぼそりと答えた。
カガリは俺が忙しくしていて…つまり、一緒にいなくてもなんとも思わないんだろうか。俺は片時も離れていたくない気持ちがますます強くなったのに、カガリは違う…?
唇をゆっくりと啄んでから、じっと見つめていると、カガリは頬を染めて眉根を寄せながら言った。
「……わ、私はちゃんと我慢するぞ。アスランに我が儘言って迷惑かけたりはしない、うん」
その言葉はきっと、カガリが忙しい職に就いた俺を思って、俺を支えようとして言ってくれた言葉なのだろうという事は解った。
だが今は俺の不満を掻き立てた。俺だけ…俺だけがカガリからどんどん離れられなくなっている。カガリから甘えられたい、求められたい、愛されたいと、この心は貪欲になってゆくばかりなのに、彼女は…彼女の愛情は深くて大きいけれど、冷静で落ち着いていて…立場をしっかりと認識したものだ。
我を忘れるほどの情熱が見たい。彼女が何もかも忘れて俺を求める姿が見たい。
俺は自分の熱を移すつもりで乱暴に唇を奪った。
「アス……んっ…」
強引に振り向かせた不安定な体勢から唇を割り、舌を捩じ込んで口腔を我が物とする。…唇だけではなく、全てを我が物とする手始めに。
「……俺が我慢できないよ」
唇を離して、キスの余韻に瞳を潤ませるカガリを見つめながら俺は呟き、目を伏せて吸い寄せられるようにカガリの白い首筋へと顔をうずめた。なんだか無性に腹が立って、カガリを困らせてやりたかった。
「あっ…」
薄い皮膚を唇で食み、強く吸い上げると、カガリがあえかな声を上げ、すぐにはっとしたように慌てて俺から離れようとした。
「やっ…だめっ!こんなとこに…」
痕を付けるのなんてどこだっていいだろ。どうせ明日から休みなんだし。
そんな些細な事を気にするほど冷静なのかと思うとますます不満を感じる。俺はもうこんなに熱くなっているのに。
俺はもがいたカガリを押さえ込んで、制服のリボンを引き抜いた。驚いたのか、カガリの動きが止まる。大人しくなってくれたので、俺はすんなりとブレザーとブラウスのボタンを外していった。手を滑らせると脱げていくブラウスを追うように、剥き出しになっていく白い肩に唇を這わせる。
「アス……あっ!」
白い肌に順番に痕を付けていく。すでにたくさんの痕がそこここに散っているのを見ると満足を覚える反面、もっとたくさん、余す所なく俺の印を付けたくなる。カガリの身体で、俺が唇で触れていない場所などなくたっていい。
「や……だめ…ふぁっ…」
抵抗しようと身動いだカガリの下着の中に手をもぐらせ、柔らかな肌を直に感じながら豊かな胸を下から掬い上げるように揉むと、カガリは敏感に反応して身悶えた。カガリは本当に敏感だな。触れれば触れるほど感じやすくなっていく気がする。覚えるのが早いと言うか…こういうのが、いわゆる優秀な身体≠チてやつなんだろうか?
「アスっ……だ、めぇ…」
俺の腕からなんとかして逃れようとするカガリが横にずれようとしたので、俺は腰を強く引き寄せて腕の中に戻した。逃がす訳ないだろ。今さら逃げられると思うなよ?
俺は腰に回していた片手を太ももに滑らせ、速やかに脚の付け根を目指した。びくりと震えて腰をくねらせたカガリをしっかりと押さえ込み、下着を押し下げるようにしてカガリの隠された場所へと指を這わせていく。この秘密の部分は、俺以外の全ての人間には秘密だが、俺だけは全てを暴き、味わって許される場所なのだ。そう思うだけで身体が熱くなる。
ひだを割って触れると、そこはすでに熱を持って潤っていて、俺は嬉しくて口の端を持ち上げた。俺と触れ合っていて、直接触れる前からこんなふうになっていてくれるのは、とても嬉しい。
「やぁっ…!だめっ、だめっ…あっ…あぁ…」
カガリは震えながら身を捩り、俺を押すような仕草をした。しかし後ろから抱き締めているこの体勢が悪いのか、その腕には少しも力が入らず、まるで身をくねらせてねだっているようにも見える。入り口を丹念に撫でているだけでぬるぬると溢れてくるものをさらに塗り広げるようにしていると、カガリの脚から力が抜けた。腰を支えてやりながら入り口をまさぐる。どうかな?指とか入れてもいいかな?
「あっ…だ、め…だって……アス…ここ、会社…ひぁっ…!」
カガリの拒む言葉とは裏腹に、指はするりと中へ入り、俺は熱く震えるそこをまさぐりながら言った。
「誰も来ないよ」
「そ、ういう問題じゃ…」
耳元で囁くと同時に耳朶を食むと、カガリは逃れたがっていやいや、と力なく首を振りながら喘いだ。あえかな吐息が俺の耳に甘く届き、弱々しい抵抗が俺の身体に火をつける。
このまま何もせずに帰す事など、もはやできない相談だった。
「だってカガリ、今夜は帰さないって言ったら、困るだろ?」
「だっ、だめっ!そんなのだめっ!」
俺が聞くと、カガリは真っ赤な顔で泣きそうになりながら振り向いて、必死な様子で頷いた。ほら、そうだろ?カガリは明日の旅行の支度だとか、恥ずかしいだとか、絶対あれこれ変な理屈を思い付いて駄目と言うに決まっていると俺も思ってたよ。だから…。
「だから、ちゃんと帰すから……今ここで…な?」
「え、えええええぇぇ…!?」
俺がにっこり微笑みながら言うと、意味をちゃんと察してくれたらしく、カガリは目を見開いて真っ赤になった。ここまでしておいて、今さらやめる訳もないだろうに、そこまで驚く事か?ここですれば親にも分からなくてちょうどいいじゃないか。社員たちは意味ありげに下がったが、俺とカガリが一緒に出て来たとしても、俺がカガリを待たせて仕事をしたか、早く終わらせてヤったかなど、推測の域を出ない(例えどれほど事実に近かろうと、具体的な証拠がない限り、推測は推測だ)。俺と一緒に帰るために待っていたと言えば、家に帰るのが遅くなったとしても、いくらでも言い訳は立つ。いい案だと思うんだが。
「で、でもここは…」
「…だって俺…もう我慢できない…」
躊躇うカガリに、俺は堪えきれぬ情熱を吐き出すように囁きながらカガリの肩に頭を落とした。滑らかな肩の感触を、戯れるように唇で触れながら抱き締めて、腰をカガリに押し付ける。気付いたカガリがびくりと身体を強張らせた。ね?もう教えたから分かるだろう?こんなになってしまったら、男に我慢しろなんて、どれほど酷い拷問か。助けられるのは、カガリしかいないんだよ?
俺だって、最初はこんな場所でこんな事をするつもりなんかなかった。
でも、カガリの誕生日から一週間。毎日愛を訴え、愛を伝え、愛を求めて愛を捧げてきた。カガリは俺を受け入れてくれるようになったけれど、その心は抱く前となんら変わったようには見えない。少しだけ、近付けた気はするけれど、相変わらずつれない時は容赦なくつれないし、ガードは甘くなった時もあるような気がするものの、前よりずっと恥ずかしがり屋になったという気もするし、無意識のくせに巧みに俺を煽るのも、どんどん可愛くなっていくのも天井知らずだ。
…どう考えても俺の方が際限なく溺れていくばかりで割を食っている。カガリの方はきっと、未だに淡く優しい感じの恋でいるんだろうに(愛情と気遣いは恋人をすっ飛ばして家族みたいに深くなっているが)、そのくせ身体だけはすごく敏感になっていくし…。
惚れた方が負けと言うから、俺は一目惚れした時点で一生カガリに勝てないだろうという覚悟はあったし、そうである事の喜びもまたある事は認めていたが、あまりにも徹底的な負けっぷりと、無垢で無邪気なあまりに男の欲望や下心…というか、恋する繊細な男心にさえほとんど気付いてはくれないカガリへのやるせなさに、勝手とは分かっていても苛立ちを覚える時とてある。
やれ人前だ、仕事中だ、遊園地だ会社だ、こんな所でするのは駄目だ…正論を吐かれると、分かっているのにわざとその忠告を無視して、してはいけない事をこそしてみたくなる。憎らしくも理性的な事ばかり言う彼女が思いきり恥ずかしがるような事をして、その堅固な理性を突き崩してみたくなる。高層ビルの最上階、ごく一部の人間しか入る事を許されぬ、真面目に仕事をするためだけに作られた場所で、真面目な彼女が男に犯されて喘ぎ声を響かせている…その光景を見たい欲求は、今日も遠足の最中からカガリに抱いていたやるせなさや苛立ちも手伝って、俺の中で抗い難く強いものに育っていた。
俺はこのままここでカガリを抱く。欲望に、負けたのだ。その、自分の弱さと卑小さが、なおさら彼女を汚す事へと俺を駆り立てた。
──乱してやりたい。我を忘れるほど。
俺はすでに指でまさぐっていたカガリの秘所の奥へと指をもぐらせ、カガリの悦ぶ場所を刺激するように掻き回した。
「ひぁっ…!そんなにっ…!」
カガリがびくりと震えて身体を強張らせた。けれど内側はとろとろと熱く溶け、柔らかな感触が俺の指を締め付ける。淫らな水音がはっきり聞こえるようにわざと派手に指を動かすと、カガリはそれを恥じるように首を振り、俺は嬉しくて口の端を持ち上げた。
「カガリ、すごく濡れてる…」
可愛く身悶える姿も、彼女が俺の愛撫を受けて潤う事も愛おしくてならず、俺は笑みを零しながら目の前に広がる白く滑らかな曲線を描く首筋へと舌を這わせた。昂る感情のままにカガリの身体を愛している時が一番嬉しい。触れたいところへ、自分の触れたいように触れられるのだから、こんなに幸せな事はない。
カガリは俺に腰を抱き寄せられ、頭だけを窓にもたせかけながらガラスを曇らせている。可愛い唇から漏れる切なげな声、ふるふると小動物のように震える身体は、俺の愛撫のままに反応してくれる。

アスランの日記【遠足7】 

May 25 [Fri], 2007, 23:17
*一部、大人向けな表現を含む文章がございますので18歳未満の方は十分ご注意下さいませ。
*閲覧は自己責任でお願いいたします。













「…あすらん…」
それを勧めようとした途端、甘えた声で柔らかな身体を押し付けられて、その瞬間、俺の思考力はどこかへ吹っ飛んだ。俺の理性はカガリを抱いてから確実に弱くなった。すでに崩壊していると言ってもいいくらいだ。俺だって、自覚くらいある。ほんの少し可愛い仕草を見せられただけでも止められなくなるってどうなんだ、と思いながらも、自分でもどうにもできない。
甘えられたら甘やかす。それは俺がカガリと恋人同士になれたらしたくて堪らなかった事で、カガリの日頃のつれなさや奥ゆかしさ、恥ずかしがりぶりを考えるとみすみす見逃すにはあまりに惜しいチャンスだった。だって、俺は昼も夜も、いつでもどこでもカガリといちゃいちゃしたいのに、カガリはいつも逃げるし!怒るし!困った顔するし!…いや、それはそれで可愛くて、からかいたい気分になって…要するにカガリなら俺は何でもいいんだが(節操がなかろうが馬鹿だと言われようが知ったことか)、でもカガリが進んで甘えてくれるなんて、まずほとんどないし!今、ちょうど二人きりでベッドの上だし!
「どうしたの…?寒い…?」
俺はつい今までカガリに怒られるんじゃないかと怯えていた事などすっかり忘れ、先程までカガリのつれない理性に苛立っていた事も忘れ、カガリの頭を腕で囲い込むようにしながら甘やかすような声で囁いた。顔を覗き込むようにしながら、キスの雨を降らせる。
「…はなれるとさむい…」
カガリは猫のように気持ちよさそうに目を閉じて、俺に抱き付く力を強めた。…いちゃいちゃしてもいいらしい…これは夢かもしれない…カガリにのぼせて俺はどうにかなったのかな…。
でも、夢なら夢でもいい。夢だろうが現だろうが、俺はカガリを抱けるチャンスを捨てたりはしない。そんなふうに言うって事は、してもいいんだな?これを『誘っていない』とは、いくらなんでも言わせないぞ。
俺は甘い吐息の零れる唇に、深く自分の唇を重ねた。カガリは一瞬緊張したが、すぐに甘えるように俺を求めてきた。こんなふうにされたのは初めてで、俺はすっかり舞い上がり、夢中になってカガリとのキスを繰り返した。そのうち、唇だけでは我慢できなくなって首筋から鎖骨、胸元へと唇を下ろしていく…気の向くままに紅い印を残しながら。
カガリはいつになく大人しく俺の愛撫を受け、可愛らしい声を零して反応してくれている。やっぱり夢かも…。
半信半疑のまま愛撫を繰り返していたが、カガリから抗議の声は一向に上がらない。それどころか、両手で頭を挟まれて顔を引き戻され、キスをねだられた。ぐずるような、鼻にかかった甘えるような声を上げて俺を引き寄せたカガリの唇を宥めるように啄みながら、いよいよこれは夢だろうという気がしてくる。もしかして俺、すでにカガリにぶん殴られて気絶でもしてこんな夢を見ているんだろうか…そうかもしれない。いきなりあんな無茶な抱き方(ああいうのはまだカガリには早すぎた…よな…)した直後に、こんなふうに甘えてもらえる理由なんかないもんな。
カガリが俺の首に腕を回して離してくれないので、俺はキスをしながら手でカガリの身体を愛撫した。カガリの身体は敏感に反応して可愛い声を零してくれた。それは俺を安心させ、少し緊張を和らげた。いつも、カガリが耐えるようにしているのを見ると、自分のやり方がこれでいいかのどうか自信がなくて不安になるんだ。まだいつも手探りの状態だが、それでも下手な中でも少しでも気持ちいいようにしてやりたい。だって、こんなに愛おしくてする事なんだから。
「ん、ん…アスラン…」
スカートの中をまさぐると、カガリが甘い声を上げながら身をくねらせた。中は想像以上に熱く潤っていて俺の心を弾ませ、身体を昂らせた。カガリの脚の間に陣取っていた俺は、自身にゴムを着けようとして身体を起こし、自分がネクタイもきっちり締めたままだった事に気付いた。こんな事するつもりじゃなくすぐに帰るつもりだったから…カガリの服も中途半端に乱しただけだ。
もう脱ぐ間も惜しい(まただ)…俺はネクタイを少し緩めてワイシャツのボタンを二つほど外しただけで、ポケットから出したゴムを手早く着けてカガリの脚を開いた。そしてゆっくりと腰を進める。
「あっ…んん……アス、ラァン…」
カガリがシーツを握り締めながら甘い声を上げて身を捩る。俺はカガリの腰を押さえながら、きつく俺を締め付けて迎え入れてくれるカガリの奥までゆっくりと自身を埋め込んだ。下肢を襲う心地よさと眼下に横たわる恋人の艶かしい姿に目を細め、熱い息を零さずにはいられない。カガリを自分のものにしている事実…カガリと一つになっている事実…何度体験しても堪らない。
俺は息を吐いてからゆっくりと腰を動かし始めた。
「アスっ……あっ…あっ…!」
カガリがぞくぞくするような色っぽい声と表情を見せてくれた。俺は歓喜に飲まれて激情のままに激しく動きたくなるのを懸命に抑えながらその姿を堪能しようとしたんだが、カガリが縋るように俺に腕を伸ばしてきたから、カガリの上に覆い被さるしかなくなった。カガリを包むようにしてのし掛かりながら、腰を揺らしてカガリが悦ぶとおぼしき場所を抉るようにし、甘い声を上げる唇はじゃれ付くように塞ぐ。
「んっ…あっ……あす…きもちい……っ…」
唇を啄み、乱れた互いの吐息を混ぜ合わせながら俺は薄く目を開いてカガリを見た。カガリはきつく目を瞑りながら身悶えている。カガリの言葉がなければ苦痛を堪えているように見えなくもないが、どうもそれだけではないらしいと、少し分かってきた。繰り返してきた行為への慣れが、ようやく俺に僅かなりとも彼女を観察するだけの余裕を持たせる。なんだか…すごく感じてくれていないか…?どうしたんだろう、カガリは…中とかも、いつもと違う…なんかすごい…。
「アスラ……すき…」
カガリが喘ぐようにな声で呟いた。愛おしさが募る。
俺も…いや、俺の方こそカガリを愛している…そう告げようとして、その前にカガリの口が潤んだ瞳で俺を見つめながら言葉を紡いだ。それが、俺の動きを止めさせた。
「…アスランは私のこと、そんなに好きじゃないかもしれないけど、私は大好きなんだ…」
ちょっ…待て。なんで突然俺がカガリを『そんなに好きじゃない』なんて話になるんだ!そんなに好きじゃない¥乱ォと婚約したり、あまつさえこんな事までする訳ないだろう!どこでそんな考えを拾ってきた!
「カガリ…どうしてそんな…?」
息を飲んだ俺が思わず尋ねると、カガリはほろほろと綺麗な涙を溢しながら言った。
「だって…アスラン、社長になったなんて大事な話、私にしてくれなかったじゃないか……それって、わっ、私がまだ恋人とか婚約者としても全然信頼がおけないってことだろ…?」
俺は目を見開いて言葉を失った。そんな事、思ってもみなかった…まさかカガリがそんなふうに考えてしまっていただなんて…。
しかし、確かに婚約者の立場からすれば、パートナーのこんなに重大な立場変化を告げてもらえなかったとなれば、不審に思ったとしてもおかしくはない。カガリは、俺が現実逃避してこれをなかった事にしようと思っていたなど知りようもないし、当然俺が父からいずれ受け継ぐはずのものを、時がきたゆえに受け継いだだけの話だと思ったのだろう。俺はすぐさま裏切られたと非難されても不思議ではなかったはずなのに、カガリはそんなふうに考えて今まで黙って我慢していたのだろうか。俺から言ってもらえるのを待って…?
カガリが婚約者としての立場にひどく緊張して意気込み、俺のために一生懸命頑張ろうとしてくれていた事考えると、不安にさせた事への申し訳なさとカガリの健気さに、切なくなるような愛おしさで胸がいっぱいになる。俺は自分の愛と今回の事はなんの関係もない事を説明しようと口を開いた。
「カガリ、違うんだ…」
けれどカガリは泣きながらいやいやをするように首を振って俺の言葉を聞こうとしてくれなかった。
「わかってるっ!わっ、わたしはふしだらでいやらしい女で、アスランはがっかりしたんだろ!?そんな女じゃ信頼できなくて、大事な話はできなくて当然だって分かってるっ!でもこれから一生懸命頑張るつもりなのを、信じてくれてるんだよな…だからわたしっ…」
「ちょ…待ってくれ…カガリがふしだら…?」
俺は興奮して泣きじゃくりながら叫び始めたカガリを宥めるために優しく頭や頬を撫でながら慌てて問い質した。俺の言動がカガリを不安にさせた事は解った。だがそれが何故、ふしだらだなんて話に繋がるんだ?一体カガリは何を勘違いしている?俺のせいなのか!?よく分からないが、俺の態度の何かがカガリにこんな誤解を与えてしまったのか!?ああもう!こんな状況下で何故こんな込み入った話に…(カガリはヤバいとかないんだろうか…女の子の事は分からないけど…ないのかな…ちなみに俺はかなり我慢しているんだが…)。
しかし、カガリの言葉は危うい状態で保っていた俺の我慢の糸を、ぶっつりと切ってしまった。
「ぅえっ……だ、だってわたしっ…アスランにこっ…こういうことされると気持ちよすぎて変になってっ…いっつもがまんしようとするけどっ……し、してもらえるの、うれしくて…でもそんなこと思っちゃう自分が恥ずかしくて…っ…ずっと悩んでてっ……んっ…」
俺は強引に深く唇を重ね、カガリの言葉も嗚咽も飲み込んだ。涙に濡れる頬を両手で包み込んで優しく撫でる。安心したのか、カガリは甘えるように俺の首にきつくしがみついてきた。
それがふしだら≠ナいやらしい女≠フ理由?俺に抱かれて気持ちいいだなんて…単に身体が行為に…俺に慣れて感じてくれるようになってきただけの話じゃないか。そんな事は俺にとって喜ばしいだけで…ああもう、なんてカガリは無垢で可愛いんだろう。もしかしてカガリが俺に隠していたのはこれだったのか?
俺は唇をほんの少し浮かせ、真っ赤な目尻を閉じているカガリに囁いた。
「愛してるよ」
ぱちりと濡れた瞳が開かれる。本当?と問いかけるように俺を見つめる涙をたたえた瞳を見つめ返しながら優しく微笑んだ。
「愛してる」
俺はただそれだけを伝えてカガリが何か言う前に唇を塞いだ。
カガリはふしだらでもいやらしくもない事を、言葉で説明するだけの余裕が俺には残されていなかった。膨れ上がった愛しさから生まれる情動に抗えない。熱を帯びた身体は止まらず、彼女を求めて俺はうねるように動いた。始めゆっくりだったそれは、受け止めてくれるカガリの反応に煽られて次第に加速してゆく。切羽詰まって腰を打ち付け、追い立て、追い立てられを繰り返し……俺たちはきつく抱き合って果てた。

興奮と余韻の冷めた頃、俺はゆっくりと身体を起こした。カガリは、終わった直後に多分そうだろうと感じていた通り、気を失っていた。
俺はカガリの頬に張り付いていた髪をどかすように頬を撫でながらそっと額にキスを贈り、それからカガリと自分の身支度を整えた。
社長室に戻って散らかしたままにしてあった書類を纏めて片付け、内線を入れる。カガリを連れてくるために再び仮眠室に戻った時、俺はカガリの眠るベッドの隅に、脱ぎ捨てたはずの俺の制服がきちんと畳まれてあった事に初めて気付いた。誰が…などと聞くまでもない。カガリだ。こんな事をしていたからさっきは出てくるのが遅かったのか。
愛しさに頬が緩むのを止められず、俺は微笑みながらカガリを抱き上げて会社を出、車に乗り込んで家路に着いた。

カガリの日記【遠足1】 

May 25 [Fri], 2007, 22:12
するって隣からアスランが静かに滑り出てく気配で私は目が覚めた。私を抱き締めてくれてた温もりも力強い腕もなくなると、急にあったかいはずのベッドが肌寒いような気になる。
「あすら…?」
もぞ、って布団から顔を出しかけて私は慌ててまた布団の中にもぐった。だ、だってアスランがまだなんにも着てない姿で立ってたんだ!(後ろ姿だけど。でもでも着替えてるとこなんか見るの、マナー違反だよな!男の人の裸なんか見るの、恥ずかしいし…)み、見ちゃったぞ…アスランの、お……お尻……はっ!べっ、別に男の人のお尻くらい私だって見たことはあるぞ!うん!……美術館の彫刻だけど。で、でもあれは美術品だって思ってたから別に何とも思わなかったけど、アスランは生身の男の人な訳で……あの身体に今まで抱き締められて寝てたんだとか、昨日は色々されちゃったんだ、とか考えると……にゃ〜〜〜〜〜!!恥ずかしい!!
私がうっかり見ちゃった、朝の薄明かりの中に立ってた全裸のアスランの姿に布団の中で真っ赤になってわたわたしてるうちに衣擦れの音がした。アスランが服を着てるんだって思って、気付かれないように(だって見ちゃったの気付かれたら恥ずかしいし、はしたないって思われちゃうだろ!)じたばたしたい気持ちを抑えてぎゅって目を瞑ってたら布団の上にそっと手が置かれて、私はひょこって顔を出した。私の目の前に跪いたアスランが慈しむように優しく微笑んでた。
「おはよう」
「お、おはよ…」
アスランはそっと私の頭を撫でて(き、気付かれなかったかな…?)、顔に優しくキスしてくれた。おでこと、こめかみと、瞼と…アスランの唇があったかくてちょっとくすぐったい。
「…服…乾いたか?」
「いや、水が滴らない程度かな。でもすぐに着替えるからいいよ」
アスランは言いながら唇にキスした。
「…帰るよ。また後で」
「…うん…」
アスランが立ち上がったから私もシーツを巻き付けて起き上がった。
くっついてったらアスランは窓のとこで振り向いて、いきなり私の頭を攫うみたいに抱き寄せたかと思ったら甘いキスをしてくれて、それから帰って行った。朝靄が出ててその姿はすぐに見えなくなる。私はキスの余韻に浸りながらぽやんとそれを見送ってた。
アスランの静かな動き。ひそひそ声で交わされる会話。人が起きない早朝に帰って行く恋人…こういうのって密会≠チて言うのかなぁ…。
私はぽん、って浮かんだその単語になんだかものすごく恥ずかしいような、妙にしみじみとしたような気分になって思わず赤くなったほっぺたを押さえた。
密会≠ゥぁ…この私がそんな経験する日が来るなんて夢にも思わなかったぞ…なんかそんなのは大人の恋人同士とか許されない関係とか…少なくとも色気の欠片もない私に縁のある単語だとは思わなかったから驚きだ。別に秘密の関係って訳じゃないけど(それどころか正式な婚約者なんだけど)、それでもやっぱり夜に会う時ってこっそりなんだよな…。
「えへへ…」
私はなんとなくにやにやしながらシーツで口元を隠した。いけない事してるんだろうけど、なんかちょっと嬉しい…。アスランがこっそり私に会いに来てくれたなんて、どきどきする。
私は空を見上げた。
雨、上がったんだな…今日もいいお天気になりそうだ…。

「カガリ…夜這い許すならさぁ…もうちょっと静かにやりなよ。騒ぎすぎ」
「!!」
キラに朝ご飯の席でこっそり耳打ちされて私はぎくぎくって真っ赤になった(危うく叫んでお味噌汁ひっくり返すとこだった)。や、やっぱり聞こえてたんだーっ!!
「嘘つきだとかなんとか叫んでどったんばったん、何してたわけ?」
「あ、あれは…アスランがびしょ濡れのまんま帰ろうとしたから引っ張ったら転んで…」
「ああ、そういやゆうべ急に降ったもんね…」
平然としてご飯食べてるキラに(で、でもでもキラの事だし、内心どんな事考えられてるか分かったもんじゃないぞ…)、私はしどろもどろで言い訳した。ど、どどどどどこまで聞こえちゃったんだろう…全部か!?全部聞かれちゃったのか!?アスランが寛大で優しくて大人だからゆうべは許してもらえたようなものの、私はとんでもなくはしたない事を言ったりやったりしてしまったんだぞ!バレたら大変だ!
でも、聞きたいけどとても自分から言い出すなんてできなくて、うに〜って内心葛藤してたら、ピンポンって玄関のチャイムが鳴って私はびっくりした。えっ!アスランもう来ちゃったのか?早いぞ!
…って思ったら、思ってもみなかった声が響いた。
「ヴィア!朝早くにごめんなさい!ヴィア、いる?」
あ、あれ?お義母様?
「あら、レノアだわ。どうしたのかしら?」
お母様がエプロンで手を拭きながら出てって、私はキラと顔を見合わせて、野次馬根性でくっついて行く事にした(そしたらステラもついてきた)。
来てたのはお義母様だけじゃなくてアスランもだった。ちゃんと制服着て鞄も持ってたからもう支度はしてきたんだろうけど、ばつが悪そうな顔してそっぽ向いてる。どうしたんだ?
「一体どうしたって言うの?レノア」
「ああ、ヴィア!ごめんなさい!」
お義母様はお母様を見た途端叫んだ。
「本当にごめんなさい。この子ったらゆうべ一晩中帰って来なかったと思ったらカガリちゃんのお部屋に泊まったなんて…それも窓から忍び込んだなんて言うんですもの!ほら!ちゃんと謝りなさい!」
お義母様はそう言いながらアスランの耳を引っ張った。
「いててて!痛いです。は、母上…いて…」
「わざと痛くしているんです!」
顔をしかめてお義母様の方にかしぐアスランに、お義母様はさらにぎゅーって耳を引っ張る。私は真っ赤になって、それから真っ青になった。ば、バレたーーーっ!!
「カガリ、あなた…」
「あ、ああああのその…」
目を丸くして振り返ったお母様に私は焦った。キラは知らん振りしてるし、ステラはよく分かってないみたいできょとんとしてる。
「すみません。俺が無理矢理押し掛けて泊めてもらったんです。彼女に非はありません」
アスランが耳を引っ張られながら早口でそんな事言うから、私は慌てて訂正した。
「ち、違います!私が帰ろうとしたアスランを無理矢理引き止めたんです!」
「いくらカガリちゃんが許してくれたからって言っても、人様のお家に窓から上がり込むなんてとんでもない事だわ!」
「非常識な事をしました。申し訳ありませんでした」
お義母様が憤慨したように言って、アスランが真摯な態度で深く頭を下げる。
「違う違う!!」
私はお母様たちとアスランの間に立って、アスランを庇うように両腕を広げた。
「アスランは悪くないんです!アスランはちゃんと帰るつもりだったのに私が我が儘言ったから──…」
「カガリ」
私をどけようとしたらしいアスランに肩を掴まれて、私はぱっと振り向いてアスランにしがみついた。アスランがびっくりしながら私を抱きとめる。私を庇おうったってそうはいかないからな!庇うのは私のほうなんだっ!
「悪いのは私なんだ!だからアスランを怒らないで!」
「カガリちゃん、お願いだからこの子を庇わないでやって」
「カガリ、泊まる以前に窓から押し掛けたりした俺が悪かったんだから…」
お義母様とアスランまでもが困ったように言ったんだけど、私はやだやだって首を振りながらぎゅーってアスランにしがみついた。だって本当にアスランは悪くないんだもん!我が儘言ったの私の方なんだもん!
お母様は眉間に皺を寄せて怖い顔して私を見た。
「…カガリ、あなたって子は…ゆうべ本当にアスラン君を泊めたの?」
「は、はい…」
私は青ざめて小さくなりながらも、観念して正直に答えた。怒られるのは覚悟した。
お母様の眉間にますます皺が寄って、私はお説教されるのを覚悟してお腹に力を入れた。
「お義母さん、待って下さい。悪いのは俺──…」
「駄目じゃない、カガリ。泊めておいてそのまま帰すなんて。朝ごはんくらい食べてってもらわなきゃ」
真面目な顔して言ったお母様に、私は…私だけじゃなくてアスランも皆もぽかんと口を開けて見た。…あ、あれ?こっそり秘密の逢い引き≠チていうのをやっちゃった事を怒られるかと思ったのに、違ったのか?窓から入った事とかは?アスランが婚約者だからいいのかな?そっか…せっかく婚約者がわざわざ泊ってってくれたのに、朝ごはんも出さないで帰すのはいけない事だったんだ…。
「ごめん、アスラン…私、本当に気が付かない女で。次からは一緒に朝ごはん食べような」
私は今朝も、それから月曜日の朝も、そんな気配りが必要だったなんて気が付かなくて、のほほんとアスランを帰してしまった事を悔やみながら謝った。婚約者ってのはやっぱり普通の恋人とは扱いが違うんだな。こっそり帰る必要なんかなかったのか…そういやちゃんと婚約してる間柄なんだもんな。相手の家に泊まったって悪くない関係のはずだもん。私、知らないことだらけだ。次から気を付けなくちゃ。
「いや、その……えぇ?」
アスランは何故か目を白黒させてる。でもお義母様はまだ怒ってた。
「ヴィア!駄目よ!そんな事言わないでちょうだい!」
そしたらお母様はくすって笑ってお義母様を見ながら凄い事をさらっと言った。
「あら、あなただってやった事じゃない?レノア。パトリックさんがこっそり部屋に来てくれた、って嬉しそうに話してくれたのは誰だったかしら?」
私たちは(アスランも)びっくりして一斉にお義母様を見た。お義父様がお義母様を夜這い…な、なんか想像できないぞ…。
でも、どうもそれは本当の事らしくて、お義母様は真っ赤になりながら反論した。
「そ、それは…!…いえ、だからって自分の子供が勝手に人の家に上がり込んで泊まったなんて許す訳にはいきません!アスラン!ヴィアの言うことを聞いてはいけません!次からは一緒にいたければカガリちゃんを家に連れてきて泊めなさい!」
「…うちならいいんですか?」
アスランはちょっと微妙な顔して溜め息吐きながらお義母様の顔を見たんだけど、お義母様は胸を張ってきっぱりと言った。
「いいですとも!」
そしたら今度はお母様が黙っちゃいられないって感じで口を挟んだ。
「ちょっとレノア!それじゃあ私がつまらないじゃない!駄目よ、そんなの」
「駄目じゃないわ!アスランがそっちに入り浸っちゃったら私だってつまらないもの!アスラン、うちならこっそりカガリちゃんを連れてきて泊めても怒りませんからね!」
「うちにこっそり泊まったって怒りません!」
「「………」」
お母様たちがケンカを始めちゃって、私たちは呆気に取られてそれを見てた。あ、あれれ…?えーと…。
「…あの、アスラン……これってどういう事なのかな…?」
私が困ってアスランを見ながら聞いたら、呆気に取られたみたいにお母様たちを見てたアスランは、ちらって私を横目で見ながら教えてくれた。
「…次からはバレないようにもっと上手くやれって事だろ」
ああ、そっか…そうだよなぁ…こんなケンカになっちゃうくらいなら、お母様たちの仲良しのためにもやっぱり秘密にしといた方がいいもんな…。それで世の中の恋人たちは皆、逢う時は秘密なんだ…なんだかすっごく納得したぞ。
お母様たちはじっくり話し合うためにケンカしながらリビングに行ってしまった。
「…婚約してるっていいねぇ。夜這いオッケーで、しかもどっちの家で朝ごはん食べるか親に取り合われちゃうんだ…」
キラがにやにやしながらからかうように言って、私はまだしがみついてたアスランの腕の中で赤くなって小さくなった。そ、そういやキラには聞こえちゃってたんだよな…あわわわわわ…。

カガリの日記【遠足2】 

May 25 [Fri], 2007, 22:11
「いいか!これも学校行事の一環である以上、我々は桜舞の生徒として思慮分別だけでなく品位ある行動を…」
「イザーク、それもう学校出る前に校長先生の話にあったからいいよ〜」
「それより何から乗りましょう?」
「やっぱ絶叫系だろ〜?」
「うっ…僕苦手なんだよね…」
「私、乗りたい乗りたい!」
「極端に好みが分かれてる双子ねぇ…」
「アスランもジェットコースターでいいだろ?」
「ああ」
「イザークは?」
「……ええい!勝手にしろ!」
私たちが勝手にわいわい言ってたらイザークはへそを曲げてしまった。
遊園地の地図を見ながら大まかに計画立てていざ出発!ってなったらフレイが私の腕にタックルするようにしがみついてきて、ラクスとミリィも早足でちょっと男子から離れた。
「ね、ね?昨日アスランとした?カガリからやってみた?」
皆が期待満々の顔して私を見つめてくるから、私は顔から火が出そうになった。だって、こんな所で昨日のアレを思い出しちゃったら!は、恥ずかしいよ〜!(って、どこでも恥ずかしいけど…)…でも皆は昨日私を心配して色々相談に乗ってくれたんだから、報告しない訳にはいかないよな。
私は真っ赤になりながら俯いてごにょごにょ言った。
「う…し、してみたけど……あの…上手くいかなかったって言うか…余計恥ずかしかったって言うか…」
私はアスランにされるとあんなに恥ずかしいのに、アスランはどきどきしてるとかなんとか言いながら結局余裕だったし…(もしかしたらあれは私を安心させるための優しい嘘だったのかもしれない)。うぅ〜ん…あの作戦は失敗だよ…私にできる事とは思えない。
「上手くいかなかったみたいね…」
「う〜ん…やっぱりあの魔性と付き合うのは一筋縄ではいかないみたいねぇ…」
「けれどその魔性とカガリさんはすでに抜き差しならぬご関係ですから、これは対策本部としても放っておける事態ではございませんわ」
「正直に自分の気持ちは話したのよね?」
フレイに聞かれて私はこくこく頷いた。
でも正直に恥ずかしいって、アスランが色っぽすぎて困るって話をしたのにアスランは全然解ってない感じだった(ああいうの天然≠チて言うんだよな、きっと…)。
「…でも全然手加減してくれなかった、と…」
「あ、あの…それはちょっとしてくれた…みたい…」
私は真っ赤になりながら蚊の鳴くような声で答えた。
でもでもでもっ!!手加減された方がヤバかったって言うか!アスランは激しくても優しくても色っぽいのは全然変わらなかったし、めちゃくちゃ上手くて気持ち良かったんだ〜〜〜!!……つまりどきどき度的には何の違いもなかった訳で!むしろ激しく一気にされた方が訳分かんなくなっちゃう分マシって言うか、優しくされた方がなんか色々分かっちゃって恥ずかしいし、とんでもなく気持ち良くなっちゃって大変だったって言うか!!
私は頭を抱えて身をよじった。もうもう私、するたびに気が変になりそうでどうしたらいいんだ!!ううう〜!
「…なにやら激しい葛藤がおありのようですわね…」
「カガリ、おもしろい」
「見てて飽きないわねぇ…」
うにうにもぐもぐ、って悶えてから、私は一つの結論を得て、めそっとしながらぼそっと呟いた。
「…どう考えてもどうやっても、アスランにどきどきしないなんて無理なのかも…」
考えてみたら当然だ。だって私の方がアスランのこと好きなんだもん…優しく抱き締められただけでどきどきしてるのに、あんなすっごい事されちゃったら、絶対おかしくなっちゃうよ…アスランはそれでなくても素敵な人だし。
落ち込んだ私をラクスが抱き締めてよしよしってしてくれた。
「そんなに恥ずかしいなら止め…むぐ」
「バカね!それじゃ面白くな…もとい問題の根本的な解決にならないわ!」
何か言いかけたミリィがフレイに口を押さえられた。
「フレイさんの言う通りですわ。問題は解決しなければ対策本部の意味がございません。後々まで放っておけば絶対に増える一方なのですから」
うぅ〜…そうだよな…だって……だって…あれは恥ずかしいけど、私アスランと一緒じゃないとすぐに寂しくなっちゃって寝付けないし……一緒に寝てもらうならしなきゃいけないみたいだし…。アスラン、ただ寝るだけはできないって前に言ってたもんな…男の人と一緒に一つの部屋で過ごしたら普通はそういう意味だって言ってたもんな…って事は、普通はするんだよな…って!ど、どどどうしよう!それってつまり毎晩してほしい≠チて思ってるって事になっちゃうんじゃないか!?私、なんて恥ずかしい女なんだ!ううう〜!とんでもない事だぞ、これは!
「ラクス〜…どうしよう…私……ぅなっ!?」
アスランにされるのが恥ずかしいだの何だの言う前に、私が恥ずかしい女になっちゃったんだって事を相談しようとしたら、いきなり後ろにぐいって引っ張られて私は変な声を上げた。見上げたらアスランが背中からすっぽり私を抱き締めて、面白くなさそうな顔してラクスたちを見てた。
「…俺のだ」
ぼそっと呟いたアスランにラクスはびっくりしてたんだけど、すぐに三人全員が何故かにんまりと笑って言った。
「…そうでしたわね。申し訳ございませんわ」
「せっかくの遠足だものね。デート気分でいちゃいちゃしたいわよね」
「どうぞ、ごゆっくり〜」
ラクスたちはそう言って、意味深に私に目配せしてからさっさと行ってしまった。あっ!お、置いてかないで〜!
手を伸ばしたけど意味なくて、私はアスランの腕の中に取り残された。う…あの目配せはせっかくのチャンスだから、アスランといてもどきどきが抑えられるように訓練しろって事かな…?
でも、背中からのし掛かるみたいにアスランの大きな身体が私を包み込んでて、お腹の辺りに回された腕に優しく抱き締められて、私はやっぱりどきどきした。ど、どうしよう…どきどきするなって言うのは無理だよ〜…だって、大好きな人なんだもん…。
「…あの…アスラン…」
「なに?」
「恥ずかしいよ…」
まだまだ乗り口はずっと先だ。いっぱい人も並んでるし、こういうのはなんか、人前でいちゃついてて良くない気が…。
「別にこれくらい平気だろ?他にもしてる人はいる」
アスランにあっさり却下された上に怪訝な顔されて、私はうにゅって俯いた(もっと強く言うつもりが、全然駄目だったぞ…だって私は本当はアスランにぎゅってされるの、好きなんだ…)。
そりゃあカップルはいっぱいいて、そういうふうにしてる人たちもいっぱいいるけど…けどけど…人がそうしてても気にならないけど、自分がそうするのは恥ずかしいって言うか、そういう人たちはほら、デートで来てるんだろうけど私たちは遠足で、班行動な訳で、前に並んでる皆もそんな事してないし……つまり恥ずかしいし…。だ、だだだだだって、だって!抱き締められたらアスランとあんな事しちゃった事とか、思い出しちゃったりしないか!?私の腰に回されてるアスランの手がどんなふうに私に触ったか、とか私を包み込むこの身体がどんなふうに…って!バカバカバカ!!私のバカ!!変態!!どうしてこんな事考えちゃうんだ!
キラとラクス、イザークとフレイだって実はそういう事してるはずなのに、普通にしてるのを私は尊敬した。あっちで抱き合ってるカップルとか、向こうで仲良さそうにぴったりくっついてるカップルとかももしかしたら…なんか目に映る恋人同士がみんなそういう事してるのかな…って思わず考えてしまう。きっとこんなはしたない事考えるの、私だけなんだ〜!うぅ…私は淫乱な上に恥ずかしい女になっちゃったんだ…どうしよう…。
考えれば考えるほど自分が恥ずかしくなって、私はめそっとしながら小さくなった。…ごめんアスラン…私恥ずかしい女だよな…でもでも、どうしても意識しちゃうんだ〜!
「だ、だって……あの…あのな…」
一生懸命どうにかしてアスランを説得して止めてもらおうとしてたら、アスランはうっすら微笑みながら私の耳元に顔を近付けて低い声で囁いた。
「どうしよう…私…≠チて、何…?」
私はぎくぎくって焦りまくった(考えてた説得の言葉も全部吹っ飛んだ)。ど、どうしよう!さっきの聞かれてたんだ!でもあんな事アスランには言えない!(昨日のだって恥ずかしくてどうしようもなかったのに!)
「……な、なんのことだ…?」
私はどきどきしながら振り向いて誤魔化してみた(でも声が裏返ってたかもしれない)。
「………」
アスランは無表情で私をじーっと見つめてきた。にゃ〜〜〜!どうしよう、どうしよう!疑われてる〜!
私はますますどきどきしながらアスランを見てたんだけど、アスランは小さく息を吐いたと思ったら、また囁いた。
「…今日の放課後うちに来てくれ。母が何か話したいとか言っていた。カガリ、この前何か頼んでいただろ?多分、その話だと思う」
「へっ…?あっ、ああ、うん。分かった」
てっきりさっきの話を追及されるのかと思ったのに予想もしてなかった事を言われたから、私はちょっと拍子抜けしたような気になってからほっとした。確かにお義母様にはちゃんとしたレディになれるように修行させてもらえるように頼んでたけど…まあいいや。上手く誤魔化せたんだな、きっと!…あ!そういやアスラン、まだ離してくれない…。
「アスラン…あの、離して…」
「やだ」
遠慮しながらお願いしたのに、真顔で即答されて私は真っ赤になった。やだって…そ、そんな事言うなよ〜…困る…。
アスランが離してくれる気配は全然ないから、私は仕方なくなんとか自力でアスランの腕を離そうとしたんだけど、アスランはがっちり私のお腹の辺りで自分の手を組んでて、私がどれだけ力入れてもほどけない。じゃあ腕を持ち上げてくぐれば…。
でもそれも、私が一生懸命力を入れても、びくともしない。わざと力入れてるな?
「…う、に……ににに……って!こら!アスラン!」
私は振り向いてアスランを怒ったんだけど、アスランはしれっとした顔でそっぽ向いて聞こえないふりなんかしてる。私はくるってアスランの方を向いて睨み上げた。
「ダメだってば!もう!団体行動中なんだぞ?」
皆で行動してる時にこんなのはだめだ!大体アスランは生徒会長じゃないか!こんな事してちゃだめだってば!
それなのにアスランは反省するどころか、くすくす笑いながら私の肩に顎を乗っけてきたりするんだ!にゃ〜〜〜!そっ、そんな甘えるみたいにするな〜!
「カガリ可愛い」
かっ、可愛いって何が!?可愛い事なんか一個もしてないぞ!?
耳の側で甘い声で囁かれてぴったりくっつかれたりするから、私はカチコチになったあと恥ずかしくて逃げ出したくてじたばたしたんだけど、アスランはくすくす笑うばっかりでちっとも離してくれなかった。
結局私はそのあともアスランを背中にくっつけたまんま並ばなきゃいけなかった…。アスラン…人前はやっぱり恥ずかしいってば〜〜〜!
でも、並んでる時は恥ずかしくてしょうがなかったけど、ジェットコースターはスカッと爽快な気分になって、私はなんとかどきどきを抑えられてほっとした。そうだ、思いっきり遊んじゃえば楽しくなって、アスランも私にくっついてる場合じゃなくなるかもしれないぞ!よーし!こうなったら遊びまくろう!

次に行ったのはお化け屋敷だった。
私はそのおどろおどろしい建物の前に立ってごくりと息を飲んだ。こっ、これは凄そうだな…。
「…カガリ、怖いなら無理に……」
「なっ、何言ってるんだ!私はちっとも怖くなんかないぞ!」
アスランが何故か心配そうな顔して私の顔を覗き込むから私は急いで言い返した。怖いだなんて、ひとっことも言ってないじゃないか!それに私は怖いの、苦手じゃないしな!

カガリの日記【遠足3】 

May 25 [Fri], 2007, 22:10
「じゃあ、早く安全なところに行こう」
「もっ、もちろんだ!」
すすすって腰を撫でられてぞくぞくってなったから、私は慌ててアスランを押して、代わりに手を引っ張って勢いよく歩きだした。とにかく早く出なくちゃ大変だ!この様子じゃアスランはきっとちっともここの危なさが分かってないに違いない。
アスランはしっかりした人だけど、意外に暢気なとこもあるんだなぁ(前に私がミーアのファンクラブに狙われた時なんて、すごい警戒してたのに)…とにかくアスランがこんななら、私がしっかりしてアスランを守らなくちゃな!
私はアスランとしっかり手を繋いで恐怖の館をなんとか脱出した。時々…時々だぞ?ほんの一、二回…あ、いや、四、五回くらいだったかな?…は悲鳴上げてアスランに飛びついちゃった事もあったかもしれないけど、でもそれはびっくりしただけで決して怖かった訳じゃないんだからな!ちゃんとアスランを守るために、アスランの前に出て身体を張って飛びついた事がほとんどだったんだからな!
とにかくアスランが全然危機感を持ってくれなくて(しかも何故かなんとなく機嫌が良さそうに見えた)困ったんだけど、生きて戻れて良かったぞ。そりゃあ、安全には十分配慮した上で公開してくれてるんだろうけど、相手は死神とか呪いなんていう得体の知れないものでもあるんだし、何が起こるか分かんないもんな!
館の外に出たら、皆は先に出て私たちを待ってた。私たちが最初に入ったはずなのに…皆やるな。館は暗かったし、すごく複雑にできてて、脱出するのはかなり難しかったと思うのに。いつの間に追い越されちゃったんだろう。
「カガリ、あんた随分遅かったけど大丈夫だったの?」
「そうよ。あんまり怖いの我慢すると心臓に良くないわよ」
フレイとミリィに心配そうにされて、私は目をぱちぱちさせた。そっか、ラクスは幼稚園の頃から一緒だから知ってるけど、フレイたちは高校に入ってからの友達だから知らなくて心配してくれたんだな。
「私は怖いの嫌いじゃないぞ?お化け屋敷もホラー映画も平気だ」
「…あんた、本気で自覚ないの…」
「…信じ込んでるみたいね…」
でも、説明しても何故か二人は何とも言えない顔して私を見たから、私はますます首を傾げたんだけど、最後に言ったラクスの言葉はさらに不思議だった。
「…それよりも、アスランはずいぶんご機嫌なお顔をなさっておりますわね…」
「そりゃ遊園地だもんな?楽しいからだよな?」
遊んでるんだから当然だと思った私はアスランを見上げながら言ったんだけど、私を振り向いたアスランは、ふわっとどこか悪戯っぽい艶めいた笑みを浮かべたと思ったら、さらっととんでもない事を言った。
「楽しいよ。カガリが大胆に迫ってくれるから」
迫っ……へ!?ちょっと待て!遊園地が楽しいんじゃないのか!?だ、大胆に迫るって!?そ、そそそんな事してないぞ!?アスラン、いきなり何言うんだー!
皆が私たちを胡乱な目で見たから(わあぁん!きっと皆、私のことはしたない女だと思ったんだ!暗闇なのをいい事に野獣のように襲いかかるような女だって!)私は真っ赤になってぶんぶん首を振ったんだけど、アスランは不思議そうに首を傾げた。
「でもさっきも暗がりで俺のこと押し倒して…」
「あ、あああああれは死神が…!」
あああ!!まさかあれをそんなふうに考えてたのか!?アスラン!あの非常事態に、変な意味で男の人を押し倒す人間なんかいる訳ないだろ!
「死神?あぁ…あの3D映像の…」
「結構リアルでドキッとしたけどね。でもあんなの別にすり抜けるだけじゃない?」
「姫さん、アスランを押し倒す言い訳にそんな理由にならねー理由つけなくてもいいんじゃね〜?」
「ち、ちが…」
あれは本当にアスランの首を狙ってたんだぞ!って思いながら私はまたぶんぶん首を振りながらアスランの袖を引っ張った。違うよな?アスランも違うって言ってくれるよな?ちょっと考えれば私の真意を分かってくれるよな!?まさか本気で迫った≠だとか、思ってないよな!?
私は必死に見つめたんだけど、アスランはそれをじっと見てちょっと考えてから、にっこり笑って優しい声で言った。
「…カガリがその気なら、俺はいつでもどこでも構わないよ?」
…な、何が?その気ってどの気だ?私に暗いとこで押し倒されて、うっかり頭とか腰とか打ちたい訳じゃないよな…?
アスランが言いたい事が分かんなくて、でもとにかく私がはしたない事をしたって皆に思われちゃったのは確かで(うぅ…命を救ったなんて、恩着せがましく主張しようとしたからバチが当たったんだな!)、私が赤くなって目を白黒させてたら、ラクスが急に私を引っ張った。
「わたくしたちは飲み物を買ってまいりますわ。キラは何がよろしいですか?」
「え?あ〜…じゃあリンゴ」
そしたらディアッカとイザークもミリィとフレイの目線だけの問いかけにさっと答えた。
「俺、コーラね」
「茶ならなんでもいい」
「では行ってまいりますわ」
あっ…!アスランがまだ言ってないぞ!って思ったんだけど、ラクスは私の腕を引っ張ってさっさと歩き出してしまうから、私だけ聞けずじまいで、フレイとミリィも一緒に近くの自販機のとこまで行った。
振り向いたら、アスランたちはそのまま噴水のとこで何か話してた。アスランとイザークが立ってて、キラとディアッカが噴水の縁に座って二人を見上げてる。
通りかかる若い女の人たちが何人も、アスランたちを赤い顔して振り向いてってるのを、私はぼんやり見てた。こうして見ると(いや、どっからどう見てもそうなんだけど)、アスランって綺麗だよな…ただ立ってるだけでも見惚れちゃうぞ…。
「…なんか話に熱中してるのが幸いね」
隣で私と一緒に男子を見てたフレイがぽつって面白くなさそうな顔して呟いた。そう、アスランたちは何か話してるから、女の人たちがどれほど熱い視線を投げ掛けてるか、気付いてないみたいなんだ。アスランなんか、ちょっと目が合っただけでも女の人は真っ赤になるから、気付いてなくてほんとに助かるぞ…。
いつの間にかラクスが反対隣に立って、これ以上ないくらい穏やかな声なのに、何故かこれ以上ないくらい不穏な空気を感じる様子で言った。
「全くですわ。いくら微笑みかけられたからと言って、通りすがりの女などにいい顔をするようでしたら、ただではおきません」
「当然よ。大体この前頭下げてきたのはあっちなんだし、私は正直まだ完全に許した訳じゃないわよ」
「わたくしも」
「私も」
「「「躾って、大事(ですわ)よね…」」」
み、皆…顔が怖いぞ…?(し、躾ってなに…?)
腕を組んで、まるで観察するみたいに男子を見てる皆に、私はなんかどきどきした。この前の喧嘩はもうすっかり片付いたんだと思ってたのに……キラ、イザーク、ディアッカ…なんかまだ許してもらえてないみたいだし、しかも試されてるみたいだぞ…?気を付けろよ…(って心の中で忠告するくらいしか私にはできないけど)。
「…まぁ、あいつらの事は明日からの旅行での態度によっては許してやってもいいとして」
「ええ。ちゃっかりアスランの別荘を利用しようとしたところは、まあ、気が利いた素敵な場所を選んだという事で大目に見て差し上げるとしても」
「そこでいかにエスコートしてくれるかが最大の採点ポイントよね…」
喧嘩って、なかなか大変なんだな。私はアスランと喧嘩らしい喧嘩なんかした事ないからよく分かんないけど、上手く仲直りするためには相手から採点されたりしなくちゃいけないのか…私たちの場合、きっと怒らせて謝るのは圧倒的に私の方だろうから、こういう事があるんだって覚えておこう…。
…なんて思いながら、最後になってた私は自分の分のオレンジジュースと、アスランには勝手にブラックコーヒーを選んでボタンを押した。でも、出てきたカップを持って、お待たせって言おうと思った時、三人は一斉に私の方を向いた。
「私たちよりもカガリよね!あんた、こんなとこであんたの方から押し倒すなんて…恥ずかしくてできないなんて言っときながら、ちゃんとできてるじゃない」
え…えぇ!?何の話だ!?できてるって…いや、だからあれは押し倒したって言っても、死神からアスランを助けただけで…。
「素晴らしい勇気ですわ!いつ人が来るかも分からぬ場所で、館のBGMに声を紛れさせながら、あえて人目を忍んでコトに及ぶ……羞恥を克服するためにそこまでなさるとは…!」
「ち、ちがちがちが…!」
私は真っ赤になってぶんぶん首を振った。人目を忍んでコト…!?(コトって……それってつまりむにゃむにゃの事…で間違ってないよな!?)そ、それは全然違うぞ!って言うか、お化け屋敷で押し倒したら普通、危険から庇ったって考えるのが普通だろうに、どうしてそういう解釈になるんだ!?
「でも押し倒したのはほんとなんでしょ…?」
「うぅ〜…」
私はうにゅって俯くみたいに頷いた。そ、それは確かにそうだけど……でも押し倒し≠フ意味が全然違うんだぞ…?
「では、結局初め以外はアスランのペースに…?」
「そ、そんな事はないぞ!私がリードしたはずだ!……たぶん」
ラクスが話題を押し倒し事件≠ゥらお化け屋敷に戻してくれたから、私は内心ほっとしながらも慌てて主張したんだけど、言ってる最中に自信がなくなった。う〜ん…私が最初から最後までリードしてアスランを引っ張って館を出た…つもりなんだけど、今になって考えてみたらアスランだって私を守ってくれたり優しくしてくれたりしたもんな…私だけが頑張ったみたいに言うのはずるいよな…。
「ねぇ、そこの彼女たち」
正直にちゃんと協力し合ったんだって白状しようとした時、別の場所から声がかかって私たちははっとしてそっちを向いた。桜舞のじゃない制服着た、高校生らしい男子が四人、笑顔で立ってた。四人ともちょっとだらしない感じに制服を着崩して、髪を染めたりピアスとかしてる。
「なにか?」
フレイが気の強そうな顔で聞き返したら、男の人たちは笑いながら、自販機の前に立って、何気ない口調で言った。
「いや、君らも修学旅行?俺たちもそうなんだ」
「違うぞ。私たちは遠そ…もが」
「あんたは黙ってなさい」
ラクスが後ろから私の口を塞いで下がらせて、フレイが警戒した顔して男の人たちを見ながら固い声で言った。な、なんだ?なんで皆、そんなにおっかない顔してるんだ?
男の人たちは苦笑しながら肩を竦めた。
「そんなに怖い顔しなくても。遠足ね、近くの学校なんだ?」
「ナンパならお断りよ」
えっ、これってナンパだったのか?私はてっきりジュース買うついでに、近くにいた私たちと世話話しようとしたんだとばっかり…。
でも、びっくりしてたのは私だけみたいで、みんな怪訝そうな顔して男の人たちを見てる。
「そう言わないでよ。だって君たちすごく可愛いから…こっちもちょうど四人だし」
「どうせ自由行動なんだろ?」
「園内だけなんだし、一緒に回らね?」
「あいにくだけど私たちは…」
「カガリ」
フレイが何か言いかけた時、私の後ろからするするって腕が絡み付いてきて、私はびっくりして振り向いた。



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●はじめに●
いらっしゃいませ。
こちらはサンライズアニメ『機動戦士ガンダムSEED』及び『SEED DESTINY』の アスラン×カガリのカップリングを溺愛する二次創作サイトです。
同人要素を多数含みますので、同人をご存じない方、カップリングに嫌悪感を抱く方は素早くこのページから脱出することをおススメします。
『むしろ望むところだ!』という方は、少しでも楽しんでいただければ幸いですv
*一部、大人向けな表現を含む文章もございますので18歳未満の方は十分ご注意下さいませ。
*閲覧は自己責任でお願いいたします。
プロフィール
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  • アイコン画像 ニックネーム:海神連(わだつみ れん)
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