胸を貫かれ真っ赤に染める山田と北条。
地面に倒れこみ痛みに悶え苦しむ二人を尻目に
敵は十数人がかりで石田と橋本を取り囲む。
まさに四面楚歌の状況となった。
石田と橋本を取り囲む輪の向こうから、
かがり火の赤橙色を横顔に映しながら、男達の姿が現れる。
それは昼、野口さんを死に追いやり、山田を狂気たらしめたあの男達であった。
「おまえら・・・!!」
皆驚き目を見開いたまま言葉を失った。
仇敵を目の前にした山田はその血に染まった手を徐々に拳に変え、
歯を食いしばる形相は殺意そのものであった。
闇の奥から現れた男達はおもむろに冷ややかな態度で構え、
山田の睨み付ける中、その口を開いた。
「昼はどうもお世話になりましたねえ、またお会い出来て嬉しいですよ」
何も映らずどろっとした瞳をこちらに向け、
口の端で笑いながら輪をかき分け二人に近づく。
「今回はあなた方に先程のリベンジをしようと思いましてねえ、
ちょっと無粋なやり方ですけど、ここのグループの方と
他のもう1グループの人たちと統合・共闘してあなた方を人海戦術にて屠ってくれようかと」
殺す、ではなく屠る――。
その言葉と、終始見せる笑っていない笑顔に四人は底知れぬ恐怖を感じ取った。
「君達にはお礼をしたい。・・・たっぷりとね!!!」
男のその声に一斉に取り囲んだ輪が一気に狭まる。
石田と橋本は襲い掛かる敵を組み伏せ、かいくぐり、投げかわし、
敵の攻撃を避け続ける。
2対15。
あまりに開いた戦力差の中で防戦一方の石田と橋本。
反撃のチャンスを待ちながら敵の攻撃をかわし、跳ね返すが、
如何せん人数が多すぎる。
一瞬の諦めを心に帯びた時、輪の外から銃撃が聞こえた。
「ぐはっ・・・・!」
倒れこんだ敵の向こうにはライフルを手にした北条がいた。
息を切らし胴を真紅に染め上げながら銃を向けていた。
その目には胸を刺され手負いの人間であることを忘れさせるほどの覇気を纏っていた。
石田と橋本は目を見合わせ、ここぞとばかりに反撃に打って出た。
避けてかわして投げ飛ばし、地面に飛ばされた敵から銃を奪い撃ち込む。
石田はナイフで首をかっ切り、息の根を止める。
北条は石田と橋本に気を取られている敵を後ろから狙撃する。
北条の狙撃に気付いた銀色の光は後ろから回り込み、またも彼を貫く。
ドスッ!!!
「があっ!」
血は更に吹き上げ、鬼のような形相を浮かべつつ
遠のきそうな表情を見せながら北条はそのまま地面に倒れこんだ。
「北条さん!」
北条は山田の方を見ると、そのまま目を閉じ、
血の海に身を浸しながらそのまま眠った。
山田は手榴弾を取り出し、その銀色の光に向かって投げ込む。
ドゴーン!!!
「がふっ!!!」
槍を手にし山田と北条を貫き、北条を地面に突っ伏させた男は
爆発を食らい、そのまま膝から崩れ落ち、その目は光を失った。
それを見届けるや否や、山田は石田と橋本に痛みをこらえながら叫びつける。
「石田さん、橋本さん・・・!!もう逃げてください!このままじゃ全滅です・・っ!
武器ならあります!ここは私が防ぎますから、早く逃げてください!」
戸惑う石田と橋本。
襲い掛かる敵を跳ね返しながら山田の言葉への返事を探し、迷う。
「早く!ここは私が食い止めます、、だから、だから早く・・・」
敵と戦う石田と橋本の目には涙がにじみ出てきた。
だが山田には返事を返さない。
「もういいから・・・石田さん、橋本さん・・・僕もう動けないんですよ・・・?
もう長くないのよく分かるんですよ・・・だから、せめて2人は助けたいんですよ・・・!!
お願いだから聞いてくださいよ、、ねぇ!!」
悲痛な叫びを聞き涙をこぼしながら敵と組み合う二人。
敵を投げ飛ばし間合いが広がると、石田と橋本は見つめあう。
言葉こそ発しないが、その寸隙で交わした眼差しは一つの答えを導き出した。
それを感じ取った山田は手榴弾を取り出し、ありったけの力を振り絞って叫ぶ。
「石田さん!橋本さん!・・・行きますよ!!」
ドゴーン!!!
巻き上げられた土埃。
その瞬間を見計らって石田と橋本は走り出す。
土埃が晴れてしまうまでの一瞬のうちに敵から逃げなければ――!
その気持ちだけが2人を走らせた。
そうして先程の藪まで辿り着くころに土埃が薄れた。
土埃が晴れると、石田と橋本を見失った敵はその足で山田に近寄る。
肩で息し、こちらをにらみつける敵の前に血だらけの山田がたった一人。
手榴弾を取り出しつぶやく。
「石田さん、橋本さん、楽しかったですよ。一緒に戦えて・・・」
ズダーン!!!!
銃撃を浴び血を吐き出す山田。
意識は朦朧とし、ぐらつく視界の中で、
山田は立ち上がり、ピンに指をかけ一気に引抜き、敵中に突っ込む。
「うおああああああ!!!」
ドゴーン!!!!
敵を巻き添えにして起こした爆発によって巻き上げられた土埃。
数秒が経ち、その土埃が晴れると、
そこから山田はいなくなり、地面には血だらけの顔を晒した骸が横たわっていた。
―続―