小説 「獄門鉄鎖」 二十四

February 14 [Tue], 2012, 19:51

いきなりの爆発で燃え上がった敵陣。

うごめく姿は炎の向こうで何かと戦っている。

それは石田たちではなく、他の何かと戦っているようである。


敵の敵は味方――。

水野はそれに加勢するべく藪から飛び出し、

石田と橋本と佐藤はそれに続いて駆け出した。


敵陣に近づくにつれ、炎の熱気にやり込められた空気がこちらへ流れ込んでくる。

顔や手など、露出した皮膚の表面がじりじりと熱くなるのを感じる。

しかしそれでも敵陣向かって突っ込み続ける。

聞こえてくるいくつもの銃声と叫び声、悲鳴、

まさにそこには阿鼻叫喚がありありと存在していた。


炎の奥でうごめく影、

それは何かに怯え、何かと戦い、そして倒れ息絶えるまでの始終を、

歩み寄る四人の目の前に晒し続け、

石田たちの胸中には、大いなる戦力への期待と恐怖が渦巻きひしめき合っていた。


「よし、撃ち込め!!」


水野の合図に合わせ、炎の中に向かって攻撃を仕掛ける。

揺らめく火の向こうに見えるのが敵か味方か分からぬ状況で、

ただひたすらに攻撃をし続ける。


弾を食らい、苦しみながら倒れる敵の声。

そのうなり声は炎に取りまかれどんどんと消えていく。

飛んでくる弾から身を伏せ、避けつつ炎の中に一心不乱に矢玉をくれてやり続ける。


やがて敵陣から銃声が止み、草木が燃え上がるパチッパチッという

わずかな音だけが聞こえるのみとなった。

四人はそっと武器を下ろし、いつ現れるか分からない敵の敵との間合いを計り、

炎からじわりじわりと遠ざかりながら様子を見る。


炎に崩れる敵陣のその奥から、姿が見える。

真っ赤な灯りに照らされ浴びた返り血の狂気たるや。

ついとっさに茂みの中にこぞって身を隠し、

その姿の過ぎ去るのを待とうとした。

数歩進み立ち止まると、ふっと振り返ってつぶやくように話し出す。


「手助け、感謝しますよ」


いきなりの問いかけに驚き目を見開く一同。

姿を見せはしないものの、茂みの中から覗き込むように、

こちらを見てくる男を見る。


「誰でも殺すわけじゃない。

力を貸してくれる人にはそれ相応の敬意を持ってお相手したい。

だから早く行け、炎におびき出されハエどもが集まってくる前に」


一瞬の沈黙。

男は向き直り、真っ赤に染まった空の下から闇の中のその奥へと歩いていった。


「おい、あいつ・・・」

「そうだ・・・」

「きっとそうですよね・・・」

「・・・間違いないだろう」


あの姿形、夜とは言え火の光に照らされはっきりと見えたその風貌。

間違いなくあの「一番槍の男」だ。

開始当初に10人を数秒の内に亡き者にし、

表彰も受けアイテムも一人で全部授かったあの男。

あの男がまさか俺たちの敵を一気に倒してくれるとは・・・!!


まだ信じられない様子の一同。

そんな中でいきなり何かを思い出したように立ち上がる石田。


「お、おいどうした?」

「せ、戦車!今のうちに行けば何とかなるかも知れないですよ!」


敵陣からは気配は全くなく、声一つしない。

確かに今ならあの戦車をどうにかできそうだ。


「あの戦車が他の誰かに渡っても厄介だからな、よし、行くか」


四人は残っている2つの戦車用地雷と分解して得た火薬を持ち、

弱まり薄れ行く火の中へと進んでいった。


先程に比べれば全然熱くはない、

むしろ、このくらい照明が残っていてくれると、

作業がスムーズに行くので好都合であった。

それに、3月とは言ってもやはりまだ肌寒い。

程よい暖房になってくれるだろう。



戦車の前に辿り着くと、目の前に立ちはだかるその体躯に

驚嘆を禁じえぬ四人。

しばらく黙り込み、その姿に圧倒されながら見入っていると、


「あ、じゃあ早く済ませましょうか」


石田の一言で我に返った四人は手分けして手頃な穴を掘り、

そこに地雷を埋め、土をかぶせる。

そして火薬を戦車の下っ腹に散布してやる。


「おいおい、そんなの意味あるのか?」

「ん〜、よく分からないですけど、地雷の爆発と同時に誘爆してくれたら、

追い討ちになるんじゃないかと思ったので」

「なるほどねえ」


手についた土を払い、おもむろに立ち上がると、

先程まで天まで焦がしたあの炎もそろそろ鎮火間近。

炎に当てられ寄ってくる敵も幸いいなかった。

全ての作業を終えると、火の熱を浴びてほてった体からにじみ出る汗を拭いながら、

四人揃って自陣のある山へと戻っていった。


―続―

小説 「獄門鉄鎖」 二十三

February 12 [Sun], 2012, 20:18

20XX年 3月5日 PM10:01 西地区Fエリア 草原地帯


「光失せ闇に紛れ、獣たちの息づく絶好の隠れ家となりつつあるかね」


不敵な笑みを浮かべながらゆっくりゆっくりと歩みを進める。

星の瞬く空の下、わずかな明かりを頼りに茂みをかき分けながら進んでゆく。


手頃な岩を見つけると担いだ武器を下ろしそこに腰掛け、

ポケットから取り出したタバコに火をつけ、大きくふかす。

立ち上りゆらめく煙を通して遠い目をしながら、向こうに見える灯りに目をやった。

空がほんのりと赤く染まり、月や星はやけどをしかけている。

口の端をつりあげ、妖しげな表情を見せる。


空に放り投げたタバコが地に跳ね返る刹那、それを踏みつけつぶやく。


「次は、君たちか」


すくっと立ち上がり、立てかけた武器を担ぐと、

その灯り目指して茂みの中へと消えていった。




20XX年 3月5日 PM10:05 西地区Fエリア 山岳地帯 山麓


密かに山を下り、敵陣の方へと向かおうとする姿。

滑り落ちないように一歩一歩慎重に踏み出しながら歩く。


「本当に大丈夫なのか?」


足元を懐中電灯で照らす石田に問いかける。


「大丈夫ですよ、橋本さん。必勝の策、なんて啖呵切っちゃいましたけど、

いたって単純である割にはそれなりに効果はあると思うんです。」


「それにしてもよ、よく考え付いたもんだよな、火攻めにするなんてよ」



石田の練った策、それは火攻め。

敵陣がかがり火による照明で照らされているのは既に周知。

となれば、頼みにしている火を逆手に取って火攻めで一網打尽にすることが出来る。

そう踏んだ石田は敵陣近くに置き去りにした地雷の3つのうち1つを分解し、

そこから得られた火薬で敵を炎に取り巻こうとしたのだ。



「あ、ここから岩がごつごつ出てるんで気をつけてくださいね、水野さん、佐藤さん」


藪の中に隠れた石や岩、放棄されたごみやぬかるみに

思わず足をとられることのないように注意を喚起し、

懐中電灯で水野と佐藤の足元を多めに照らす。



「お、いたいた。すぐ見つかるわ、あんな明かり点けてたら」


半笑いで敵陣の方角を指差す佐藤。

闇の中で唯一真っ赤な点となって空を赤く染めている。

それにあわせて立ち止まり、石田と橋本は辺りの藪を突っつき始める。


「いきなり何してるんだ?」


「この辺りの藪に地雷を隠したんですよ。

さっきここに来た時に、敵を先にある程度倒してからでないと、

こんな重いものを持って敵陣に入ったら見事に的になるので、

この辺に隠しておいたんですよ」


怪訝そうな顔をする佐藤に藪の中を探しながら石田が受け答える。

すると、藪をさらう棒を握る手に、かつんという音とともに

棒が固いものに跳ね返される感触を感じた。それを頼りに藪の奥を探してみると、

そこには、見事にさっき隠した地雷が3つ並んで、

仲間の帰りを待ちながらこっちを見つめていた。


「ありました!」


石田はその中の1つを取り出し、先程塹壕前で倒した敵から得た

書籍「兵器知識」とマイナスドライバーを手に取ると、本を見ながら分解を始めた。

周りの3人は不意の爆発の脅威に少し不安げな顔をしながら体をのけぞらせている。


ネジをひとつはずし、ふたつはずし、ふたを外すと、またネジを外す。

静かで地味な作業ながらも恐怖の付きまとう2分間の解体作業の後、

それは四人の目の前に姿を現した。



「とうとう出てきましたよ、火薬」


「ほう、これはなかなかの量だ」


「これだけあればうまく行くな」



対戦車用の地雷なだけあって、取り出せた火薬の量はなかなかのものであった。

これを敵陣のかがり火を使って爆発させれば敵はひとたまりもないだろう。


「よし、行きましょう!」


四人が立ち上がったその時、敵陣の方で爆発が起こる。


ドガーン!!!!


反射的に顔の前に交差した腕の隙間から覗き見ると、

火柱があがり、黒煙がもうもうと立ち上っていた。


「なんだ、なんだ!」


敵陣は慌ただしくなり、銃声が聞こえ始める。

しかし、それはこちらにではなく、誰かと戦っているようだ。

好機と見た四人は目を見合わせる。


「よし、加勢するぞ!!」


水野の声に合わせ、石田と橋本と佐藤の三人は、

藪を飛び出し敵陣に突き進む水野の跡を追った。


―続―

小説 「獄門鉄鎖」 二十二

February 09 [Thu], 2012, 20:47


「・・・わかった。今からそっちに向かう。そこで待っていてくれ」


石田はブツッと通信の切れる音を聞き終えると、手をそのまま下にぶらんと下ろし、

大きく一つ落ち込みきったため息をついた。


石田はトランシーバーを使って水野に全てを話した。

途中涙声になりところどころで詰まる所もあった。

それでも石田は水野に事細かに告げ、水野は黙ってそれを聞いていたのだ。


寂しさや悲しさや虚しさ、様々な気持ちが混ぜこぜになって、

石田は何をどう表現すればいいのか、

誰にどんな言葉を言えばいいのかさえ分からなくなっていた。

橋本からもいつもの元気は失われ、

徳永も泣き声を押し殺して塹壕の中でうずくまっている。


いかに楽しく過ごそうが、今は「試験」。

人と人とが殺し合い、生き残ろうと必死にあがく魑魅魍魎の世界。

心の中で避け続けてきた無情な現実に、三人は無理やり引き戻された。


意気消沈し、周りの闇とすっかり馴染んでしまった三人。

突如、辺りに銃声が響き渡る。


ズダーン!!!!


三人は一斉に飛びのき、塹壕に滑り込む。

それぞれが武器を手にし、外の気配に警戒する。


死にたくない――。

本能の叫びが魂の抜けた三人の体を叩き起こし、

彼らを生きさせようとしているのであった。


銃声に驚き塹壕に飛び込み、武器を構え外に注意を向けるが、

それ以降の敵の気配が感じられない。

いや、遠くの方からかすかに服を草がかすめる音が聞こえてくる。

間違いなく、いる。


三人は銃の弾を込め、ボウガンの矢などをつがえ、

歩み寄る敵を待ち構える。

その時、地中から勢いよく跳ね上がる音と共に

気配を包み込んでしまった。


「くそっ、なんだこれは!」


闇の向こうから必死にもがく苦しそうな声が聞こえる。


これは徳永たちが日中に仕掛けた罠の一つで、

敵はそれにまんまとはまり、地中に埋めた網がすばやく敵をつるし上げ、

その動きを封じたのである。


「今だ!!撃て!!」


徳永の掛け声に呼応し、怒涛の攻撃を仕掛ける。

網に絡まり武器を構えることも出来ず抵抗する暇もなく息絶えた敵の姿に、

三人の魂は抜け殻となっていた体に戻り、

悲しんではいられないこの状況に対処するべく、それぞれの目には色が戻った。



三人は心を落ち着けようとゆっくりと呼吸する。

しかし、そんな中で徳永は遠くで草木の揺れる、一瞬のわずかな音を感じ取った。


「まだいるぞ!気を緩めるな!」


塹壕の外からは目立った気配はないが、

長時間暗闇にいたことで目が順応し、敵の姿のようなものは見えるようにはなって来ていた。


「いますね・・・」

「あぁ、いるな」

「落ち着け、敵が寄ってくるのを待つんだ、そうすれば・・・!」


突如、何かが割れる音をこちらに響かせ、隠れていた気配を地中に引きずり込んだ。

そして悲鳴が耳を貫く。


「ぎぁああああああああああああ!!!」




これは徳永たちの仕掛けた罠の一つ、竹槍落とし穴である。

斜めに切った竹や、削って先を尖らせた丸太などを尖った方を上にして

作った落とし穴の中に突き立て、その上に板と枝と草と土で覆い隠したものだ。



そこからはフィールドである三人の猛撃が続く。

地中から現れた網に包み上げられ、ロープに足を縛り上げられ、

落とし穴に落ちた敵などは見事に止めを刺して回った。

しかも、最初の一発の銃声以外は全く敵に攻撃させずにだ。


網の中やロープにつるされた敵から滴る血のしずくの音以外に音はしなくなり、

付近の気配は一切が消え去った。

そして、この大戦果を物陰から見ていた影があった。


「やるじゃないか」


とっさに銃を向けると、慌てたように止めに入ってくる女の声。


「ちょっと待ってよ!私達よ!分かるでしょ?!」


石田が懐中電灯を点けそれに向けると、その先には水野と清水と佐藤がいた。

この真っ暗闇に目が慣れていたせいだろうか、殊更まぶしそうに顔をしかめる三人。


「もういいだろう、銃を下ろしてくれ」


慌てたように銃口を外す徳永と橋本。

水野は石田にゆっくりと近寄り、そっと問いかける。


「地雷は残っているか」

「・・・はい、あるにはあるんですが・・・」



地雷は敵から逃げるので精一杯で、

そっくりそのままの形で敵陣そばの深い藪の中に隠して来てしまったままだ。

石田の言葉を聞くと、水野はこう耳打ちする。


「全ての武器やアイテムは第2塹壕・本陣から持ってきた。

これらのアイテムを有効活用すれば、夜中に太陽を作ることが出来る。

そうすれば地雷も・・・・」



夜中に太陽・・・



はっとした顔を浮かべると、石田は向き直って全員に告げる。



「・・・これから再度地雷設置作戦を行います!次は、必勝の策があります!!」



―続―

小説 「獄門鉄鎖」 二十一

February 06 [Mon], 2012, 20:55


石田と橋本は敵の追撃を振り切るべく全力で逃げ続けた。

巻き上げられた土埃に紛れ藪に身を隠し逃げた二人の後ろで、

最後の手榴弾の炸裂する音が聞こえ、止み、そして一つの声がなくなった。


逃げる最中、石田と橋本は会話もすることもなく、

ただただ走り、呼吸と草を掻き分ける音だけが聞こえる。

自陣から持ってきた地雷を持って帰るほどの余裕は当然なく、

隠して置き去りにしたまま、ひたすらに走り続けた。


土埃が晴れると敵はこちらを追ってくるものと思っていたが、

素早く藪に身を隠し、敵から急いで逃げた上、

先に電源を落としたことから上手く暗闇に紛れ込むことが出来た。

そのため敵は、逃げる石田と橋本の姿を見つけることが出来ず、

結果、山田の作戦の成果はここで生かされることとなった。



敵の追撃を振り切ると、二人はこれまでの走りを緩め、息を落ち着かせる。

吹く風にざわざわ、ざわざわ、と揺れる草の音。

二人の沈黙の間をすり抜け、闇の向こうへと漂っていった。


胸を刺されて死んだ北条。

俺たちを逃がすために身代わりになった山田。

石田と橋本の胸中には、四方八方からあらゆる思いが脳の中に流れ込み、

それは二人から言葉と気力を奪い去り、びりびりに破き捨てたのだ。



下がりきった目線の中、重い足で一歩一歩と歩みを進め、

二人は仲間のいる山の方へと向かった。



20XX年 3月5日 PM9:34 西地区Fエリア 山岳地帯 自陣地外・第一塹壕帯


ガサガサッ!!!


不意に草木の揺れる音が塹壕にこだまする。


「誰だ!!」


塹壕に残っていた徳永は横になっていた重たい体を起こし、

機関銃を音の方へと向けた。


ガサッ、ガサッ、ガサッ、


その気配はどんどん近づいてくる。

徳永はしっかりと銃を握り締め、引金に指をかける。

撃ち込むべく闇の向こうの見えない姿を見ようと探していると、

それまでの足音は急に止まり、近寄ってきていた気配はふっと形を潜めた。


しばらくの間が流れる。

不思議に思った徳永は塹壕からゆっくりと出、不審なその気配に近寄る。

森の中、木々の隙間から差し込む月の光にうっすらと二人の姿が浮かび上がった。

石田と橋本だ。


「おぉ、なんだお前らか、びっくりさせんなよお。で、どうだったんだ?」


徳永の問いかけに黙り込む二人。

目を見合わせることもせず、ただ下を見て黙ったままだ。


「山田と北条さんは?」


石田と橋本は徳永の問いかけに一瞬びくっと反応し、

徳永の目を見るも、1秒も続けずにすぐさま視線をそらす。

再び流れた沈黙。



そこから徳永は、二人の身に何が起きたのか、

何故ここにいないのか、それを感じ取った。


「死んだのか」


的を射たつぶやき。

うつむいたままの石田と橋本の両目から、涙が零れだす。

何も言わないまま二人は涙を流す。

徳永に返す言葉もないままに、ただ泣き続ける。



「そうか・・・死んだのか」


涙を浮かべながらうつむく二人を見てつぶやく徳永。

泣く二人の様子から声にならない答えを察すると、

ゆっくりと振り返り、塹壕の中へと戻っていく。


塹壕の中に徳永の姿が消える。

しばらくして細いため息が聞こえると、

かすかな嗚咽が塹壕から聞こえてきた。

ほんの少しだが、聞こえてくるそれは確かな嗚咽だった。


そんな空気の中、石田は自分のポケットにすっと手を差し入れる。


「報告、します」


石田はトランシーバーを手に取ると、後方で待機している水野に連絡をつなげた。

―続―

小説 「獄門鉄鎖」 二十

February 03 [Fri], 2012, 21:58

胸を貫かれ真っ赤に染める山田と北条。

地面に倒れこみ痛みに悶え苦しむ二人を尻目に

敵は十数人がかりで石田と橋本を取り囲む。

まさに四面楚歌の状況となった。



石田と橋本を取り囲む輪の向こうから、

かがり火の赤橙色を横顔に映しながら、男達の姿が現れる。

それは昼、野口さんを死に追いやり、山田を狂気たらしめたあの男達であった。


「おまえら・・・!!」


皆驚き目を見開いたまま言葉を失った。

仇敵を目の前にした山田はその血に染まった手を徐々に拳に変え、

歯を食いしばる形相は殺意そのものであった。

闇の奥から現れた男達はおもむろに冷ややかな態度で構え、

山田の睨み付ける中、その口を開いた。


「昼はどうもお世話になりましたねえ、またお会い出来て嬉しいですよ」


何も映らずどろっとした瞳をこちらに向け、

口の端で笑いながら輪をかき分け二人に近づく。


「今回はあなた方に先程のリベンジをしようと思いましてねえ、

ちょっと無粋なやり方ですけど、ここのグループの方と

他のもう1グループの人たちと統合・共闘してあなた方を人海戦術にて屠ってくれようかと」


殺す、ではなく屠る――。

その言葉と、終始見せる笑っていない笑顔に四人は底知れぬ恐怖を感じ取った。


「君達にはお礼をしたい。・・・たっぷりとね!!!」


男のその声に一斉に取り囲んだ輪が一気に狭まる。

石田と橋本は襲い掛かる敵を組み伏せ、かいくぐり、投げかわし、

敵の攻撃を避け続ける。


2対15。

あまりに開いた戦力差の中で防戦一方の石田と橋本。

反撃のチャンスを待ちながら敵の攻撃をかわし、跳ね返すが、

如何せん人数が多すぎる。

一瞬の諦めを心に帯びた時、輪の外から銃撃が聞こえた。


「ぐはっ・・・・!」


倒れこんだ敵の向こうにはライフルを手にした北条がいた。

息を切らし胴を真紅に染め上げながら銃を向けていた。

その目には胸を刺され手負いの人間であることを忘れさせるほどの覇気を纏っていた。

石田と橋本は目を見合わせ、ここぞとばかりに反撃に打って出た。


避けてかわして投げ飛ばし、地面に飛ばされた敵から銃を奪い撃ち込む。

石田はナイフで首をかっ切り、息の根を止める。

北条は石田と橋本に気を取られている敵を後ろから狙撃する。

北条の狙撃に気付いた銀色の光は後ろから回り込み、またも彼を貫く。


ドスッ!!!


「があっ!」

血は更に吹き上げ、鬼のような形相を浮かべつつ

遠のきそうな表情を見せながら北条はそのまま地面に倒れこんだ。


「北条さん!」


北条は山田の方を見ると、そのまま目を閉じ、

血の海に身を浸しながらそのまま眠った。

山田は手榴弾を取り出し、その銀色の光に向かって投げ込む。



ドゴーン!!!


「がふっ!!!」


槍を手にし山田と北条を貫き、北条を地面に突っ伏させた男は

爆発を食らい、そのまま膝から崩れ落ち、その目は光を失った。


それを見届けるや否や、山田は石田と橋本に痛みをこらえながら叫びつける。


「石田さん、橋本さん・・・!!もう逃げてください!このままじゃ全滅です・・っ!

武器ならあります!ここは私が防ぎますから、早く逃げてください!」


戸惑う石田と橋本。

襲い掛かる敵を跳ね返しながら山田の言葉への返事を探し、迷う。


「早く!ここは私が食い止めます、、だから、だから早く・・・」


敵と戦う石田と橋本の目には涙がにじみ出てきた。

だが山田には返事を返さない。


「もういいから・・・石田さん、橋本さん・・・僕もう動けないんですよ・・・?

もう長くないのよく分かるんですよ・・・だから、せめて2人は助けたいんですよ・・・!!

お願いだから聞いてくださいよ、、ねぇ!!」



悲痛な叫びを聞き涙をこぼしながら敵と組み合う二人。

敵を投げ飛ばし間合いが広がると、石田と橋本は見つめあう。

言葉こそ発しないが、その寸隙で交わした眼差しは一つの答えを導き出した。


それを感じ取った山田は手榴弾を取り出し、ありったけの力を振り絞って叫ぶ。

「石田さん!橋本さん!・・・行きますよ!!」



ドゴーン!!!


巻き上げられた土埃。

その瞬間を見計らって石田と橋本は走り出す。

土埃が晴れてしまうまでの一瞬のうちに敵から逃げなければ――!

その気持ちだけが2人を走らせた。

そうして先程の藪まで辿り着くころに土埃が薄れた。


土埃が晴れると、石田と橋本を見失った敵はその足で山田に近寄る。

肩で息し、こちらをにらみつける敵の前に血だらけの山田がたった一人。


手榴弾を取り出しつぶやく。

「石田さん、橋本さん、楽しかったですよ。一緒に戦えて・・・」


ズダーン!!!!


銃撃を浴び血を吐き出す山田。

意識は朦朧とし、ぐらつく視界の中で、

山田は立ち上がり、ピンに指をかけ一気に引抜き、敵中に突っ込む。


「うおああああああ!!!」



ドゴーン!!!!


敵を巻き添えにして起こした爆発によって巻き上げられた土埃。

数秒が経ち、その土埃が晴れると、

そこから山田はいなくなり、地面には血だらけの顔を晒した骸が横たわっていた。


―続―

小説 「獄門鉄鎖」 十九

January 31 [Tue], 2012, 19:12

20XX年 3月5日 PM9:01 西地区Fエリア 自陣山麓


石田・山田・橋本・北条の四人は地雷を仕掛けに山を下り、

藪の中に隠れながら敵陣の元へと向かった。

石田と山田の二人はつい先程ここを通り配電盤のところまで行ったが、

その時の景色からがらっと変わり、辺りは黒一色に染まっていた。


「うわっ!」


つまづく音。

石田は懐中電灯を当ててやり、立ち上がらせる。


石田「大丈夫ですか?」

北条「どうもすいません」


街灯の光を失い、おぼろげな月と星だけが空に浮かぶ。

だがその光だけを頼りに進むにはあまりに頼りない。

慎重に慎重に仲間とその足元を照らす石田。

転ばぬように細心の注意を払って進む三人。

藪をかき分けてのぞいて見ると、敵陣にはちらほらと光が浮かび上がっていた。



「かがり火、か」


北条のつぶやきに、三人は戸惑いを見せる。

照明を断つことで敵の目をかいくぐってあの戦車を沈黙させるという、

山田の決死の作戦の、その根底が揺らぐ予感に襲われたからだ。


「でも、敵は少人数なんだろ?だったら倒せばいいだけのことだろ」


橋本の発言に北条は調子を合わせ、山田を説得する。


「そうだ。今しかないぞ、こんなチャンスは。せっかくここまで来たんだ。

やれるところまでやるしかないだろ!」


二人の声に迷いを見せる山田。

石田に視線を向け、言葉を求めようとするも、

石田もまた強い意志の垣間見える目を、山田にそのまま向けていた。


二人の強い言葉と一人の強い眼差し。

それらが山田を突き動かした。


山田「・・・わかりました。でも、今は地雷はここにおいて行きますよ。

一回敵を掃討してからここに戻り、地雷を持って敵陣の戦車の足元に置きます。」


それを聞くと三人は同時にうなずく。

地雷を3つまとめて深めの藪の中に隠すと、

山田・橋本・北条は担いだそれぞれの武器を肩から下ろし、手にした。

そして四人は近くに額を集め、目を見合わせ、息を合わせると

藪の中から一斉に飛び出した。



地面を蹴る音。風を切る音。

四人は疾風迅雷の勢いで敵陣目がけて突進する。

みるみるうちに敵陣のかがり火が近く大きくなる。

それでも足を緩めることなく四人は銃などを構え、疾走する。


突き進んでいくと、敵陣の中から一つの人影。

四人は一斉に地面に飛び伏せ、それが消えるのを待つ。


敵陣から現れた人影はあちらこちらを一瞥し、そして敵陣の中へと戻っていく。

それを見届けると四人は立ち上がり、再び敵陣に向かって進み始めた。


敵陣の中に進むべく走ると、橋本は闇の中、足元にあった糸の様な物を蹴りちぎった。

すると突如、辺りにカランカランと大きな音が鳴り響く。


山田「まさか、鳴子か!」


敵の来襲を察知するために仕掛けられた初歩的なトラップ、鳴子。

橋本はそれにかかって存在を示してしまった。


幾秒ほどで敵陣はどんどん騒がしくなる。

中から人影が現れ、こちらに向かってくる。


「ここは引き上げましょう!退避ー!!」


山田がそう叫ぶと三人はそれについていくように走る。

その時、一条の銀色の光が山田を貫く。


ドスッ!!!


「がっ・・・」

胸を押さえ倒れこむ山田。


「山田さん!!」


北条は山田の下へと駆け寄る。



「大丈夫ですか!山田さん!」

「ぐふっ・・・がっ・・・」

「山田さん!」


石田と橋本がそれを見つけ、走り寄ろうとする。

するとまた銀色の光が北条に忍び寄り、北条を貫く。


ドスッ!!!


「ぐあっ!!」

「北条さん!!!」


石田と橋本は二人に駆け寄ろうとすると、

藪の中から銀色の光とその主が現れた。


「散々やってくれたなお前ら。覚悟しろ」


その声に呼応するかのように、四方から敵が現れる。

その数、ざっと15人は下らない。


「こ、これは・・・」

「どういうことだよ、おい」



石田と橋本は敵陣の中で四方を敵に囲まれ、

体をを血に染め、食いしばる歯を真っ赤にしながら地に這い苦しむ山田と北条の前で

風前の灯ともいえる絶体絶命の状況に追い詰められた。

―続―

小説 「獄門鉄鎖」 十八

January 28 [Sat], 2012, 19:55
20XX年 3月5日 PM8:44 西地区Fエリア 山岳地帯 自陣地外・第一塹壕帯


山田と石田の二人は無事配電盤の電源を落とし、Fエリアを闇の中へと隠した。

敵の追撃を振りきり、仲間の待つ山の方へと向かい、

道中、味方の仕掛けた罠にかからないよう気をつけながら第一塹壕に帰還する。

すると、闇の奥から声がする。


「おお、帰ってきたな」


石田は持っていた懐中電灯をその声に向ける。

その先にはまぶしそうに顔をしかめる橋本の姿があった。


石田「あ、橋本さん!」


橋本「おう。とりあえず、ちょっと下げろ、それ。まぶしいから」


電源を落としたため塹壕にあった街灯からも光は消え、

星の光や月の光を感じることが出来るほどに真っ暗になっていた。


「首尾よく行ったようだな」


石田の向けた懐中電灯の先には北条と、介抱されている徳永がいた。


石田「ええ、なんとか。でも転んで傷を作ってしまいまして」

北条「あー・・・でも、こういう傷でよかったな。

弾食らったり刃物で刺されたりして出来る傷じゃなくて」


ははは、と軽く笑いながら、北条の処置を受ける石田。

消毒液と軟膏を塗布されている間、終始眉をひそめて痛みをこらえていた。



山田「一応、電源を切った後に配電盤を手榴弾で爆破したので、

あの配電盤から再び電源がつくことはないと思います。

また、電源を落としに向かう途中で敵に見つかって追撃を受けたので応戦しましたが、

あの戦闘で3、4人ほどを倒しました。」


それを聞くや否や徳永は起き上がり、塹壕の土壁によりかかり次に続ける。


徳永「なるほどな。お前達が地雷を持って戻ってくる前にも戦闘があったんだが、

その時には俺と石田の二人で合わせて6、7人ほどを倒したかな」


北条「・・・とすると、この試験のルール上での

“上限11人でのグループ編成”の内の大半を倒したってことになるな」


すると、その場の全員の顔に徐々に生気が蘇ってくる。

戦車の脅威から解き放たれるという期待と喜びが溢れてくるかのように。


山田「はい、そうです。ですが、油断はいけません。

電源を落として破壊した後、全滅させずに追撃を振り切ってここに戻ってきました。

それなので、あと一人か二人、多くて三人生き残っています。

それを倒さなければ脅威は完全には消えません。

これから残党の掃討と地雷設置を兼ねて再び下山します。

僕と石田さん、橋本さんと北条さんの四人で作戦を実行し、

徳永さんはここで待機していてください。」


石田は北条から貰った包帯を両手に巻き痛み止めし、

橋本と北条は塹壕に残る徳永の手当を追えた後に

軽機関銃と弾丸を手負いの徳永が使いやすい位置に運んだ。


それらの準備を終えると、銃などを担いだ後に山田と橋本と北条は

それぞれ1つずつ戦車の下に仕掛ける地雷を運び、

石田がその足元を懐中電灯で照らしながら山を下っていった。


―続―

小説 「獄門鉄鎖」 十七

January 25 [Wed], 2012, 21:13
20XX年 3月5日 PM7:59 西地区Fエリア 自陣山麓


山田と石田はこっそりと山を下り、配電盤へと向かう。

敵に気付かれないように、野営しているその脇を可能な限り離れて、

敵陣の向こうの配電盤を目指す。


山田「近づいてきましたよ」


遠くの街灯に照らされ、敵の存在が浮かび上がる。

そこに映った敵の手には銃を持つ者や槍を持つ者など様々であるが、

見つかったら間違いなく戦闘に巻き込まれる。

今銃撃戦になったら圧倒的な戦力差に二人ともやられることは明らかだ。


石田「山田さん、こっちの茂みを隠れながら進みましょう」

山田「そうですね」


胸の高さほどの藪の中を匍匐前進で進んでいく。

一歩一歩と進むたびにガサガサと音はするが、今は風も吹いている。

周りの音と混じって敵の耳をごまかせるはずだ。


山田「石田さん、あれです」


山田が藪の向こうを指差す。

その指の先には、街灯の足元に寄り添うように置かれた機械が、

遠くに小さく、はっきり照らされながら見える。


ここからざっと200mほど。隠れる藪がなくなり姿を見せることになるが、

街灯があるとは言え今は夜。急いで走っていけば大丈夫だろう。


山田「それじゃあ行きましょう」


二人は藪から飛び出し、姿勢を低く急ぎ足で向かう。


背の高い藪はなくなったが、足元を十分に覆い隠してしまう草原が広がる。

注意を払いつつ小走りで配電盤の元へと向かった。


ガシャーン!!!!!


石田は前のめりになって地面にすっ転んだ。



「誰だ!!!」



さっきすり抜けた敵陣の方から声が聞こえる。

どうやら今ので感付かれてしまったようだ。


山田「大丈夫ですか!」


石田は顔を歪ませながら大丈夫、と答える。

どうやら中身の入った一斗缶を思いっきり蹴っ飛ばしてしまったらしい。


敵陣が慌ただしくなる。

複数の声が行き交い、街灯の光にはこちらに向かってくる敵の姿が映った。



山田「急ぎましょう!」


山田は石田を立ち上がらせ、配電盤の元へ走る。



「必ず仕留めろー!!!」


敵の叫び声が背中を脅かす。

先程通ってきた藪の中を荒々しく掻き分け、

大きな音を立てながらこちらを追いかけてくる。


山田「あと少しですよ!頑張って!」


膝と手のひらに作ったすり傷の痛みをこらえながら、

石田と山田は街灯に照らされた配電盤へと全速力で駆け寄る。


山田「電源が落ちるまで応戦しますから、これを!」


山田から投げ渡された鍵を受け取り、配電盤の扉の鍵穴に差し込む。



ズダダダダダダダダダダダダ!!!!!


後ろから激しい銃声が鳴り響く。

肩で息をしながら配電盤のふたを開け、中のスイッチを消していく。



バン!バン!ズギューン!!ズギューン!!


後方の銃声はより激しく、より大きくなっていく。


山田「させるかあー!!!!」


山田は手榴弾のピンを抜き、敵目がけて放り込む。



ズゴーン!!!!


闇の中で避ける術を持たなかった敵はもろに手榴弾の爆発に遭い、

さっきまで聞こえていたうちの三色の銃声が消えたが、

それだけで止むことはなくこちらに銃撃を浴びせてくる。


山田「石田さん!早く!!」


配電盤の中のスイッチを一つ一つ押し、緑ランプを赤ランプに変えていく。

だが、どのスイッチがどれに対応しているのかも分からないし、

この配電盤には付近一帯の電源スイッチがあるからボタンの数が多い。

泣きそうな顔になりながら震える手で一つ一つボタンを押していく。



バキューン!バキューン!!タタタタタタ!!!


後ろの銃声はすぐそこまで迫り、配電盤のフタの小窓のガラスに当たって弾け飛んだ。

痛む傷と恐れおののく心を何とかこらえながらボタンを押して赤にしていく。


ドゴーン!!!!!


山田は手榴弾を投げつけ、敵の攻撃を食い止める。


その瞬間、一瞬の隙が生まれた。



山田「石田さん!今です!」


残りのスイッチを押し込んで緑を赤にしていく。


そして、カチッという音と共に電源は落ち、辺り一面は真っ暗となった。



「くっ、何も見えねえ!」

「どこにいやがる!」


闇の向こうから敵の騒ぐ声のみが聞こえる。

先程まで続いていた銃撃はまばらとなる。


山田は手榴弾を2つ出し、一つを敵に投げつけ、

もう一つを配電盤の中に突っ込み、石田から取った鍵をかけて伏せる。


ズゴーン!!バッコーン!!


山田「石田さん!今のうちに行きましょう!」

石田「は、はい!」


石田と山田は月の光だけが照らす、何も見えない闇の中、

火花を散らす配電盤を尻目に敵の追撃をかいくぐり、

その足で仲間のいる山へと戻っていった。


―続―

小説 「獄門鉄鎖」 十六

January 22 [Sun], 2012, 21:38
20XX年 3月5日 PM7:30 西地区Fエリア 山岳地帯 自陣地外・第一塹壕帯


ピンポンパンポ〜ン♪


「これより、夕食休憩を終わりとし、試験を再開します^^

なお、深夜の夜間戦闘における休戦は実施しないので、

みなさんはよ〜く注意してくださいね☆

それではみなさん、頑張ってくださ〜い♪」


ポンパンポンピ〜ン♪


夕食を食べ終え、空き袋などをカバンにしまうと、

各々はそれぞれの武器を取り、塹壕の外に注意を向けた。


すっかり日も暮れ、試験エリアを照らす所々の灯りを残して辺りは真っ暗となった。

塹壕の外は深い森と狭い林道と足もすくむ急斜面。

大きくごつごつとした岩がいたる所に転がっている。

足元をすくわれて転げ落ちることがないように注意を配る一同。

そうして日暮れを待って2時間以上が経った。


張り詰めた空気の中、山田がその口を開く。



山田「それでは、さっき言った作戦を発表します」


「・・・!!」


とうとう来たか。

日暮れまでずっと全員が気になっていた逆転の一手。

三人は固唾を呑んで山田の次の言葉を待った。

そして山田は息を大きく吸い込み、後に続ける。



山田「・・・まず、この地雷を戦車の足元に置く前に、一帯の電気系統を不能にします」

橋本「えーと、それはどういうことだよ?」


ポケットから鍵を取り出す。


石田「それ・・・」


山田「そうです。これは配電盤の鍵です。

始めに、この配電盤の鍵を使って、山の麓にあるFエリアの配電盤の所まで行きます。

そして全てのスイッチをオフにすれば、照明が消えて周囲は真っ暗になります。

そうすれば敵はこっち側の接近に気付きにくくなり、地雷の設置が容易になります。」


徳永「なるほど、理にかなってるじゃねえか」



徳永は少し笑ってみせた。だが笑った拍子に腹の傷に響いてズキンとした痛みが広がり、

口をへの字にし腹を押さえる。


北条「徳永!」


徳永「いや、大丈夫です、、」


先程倒した敵から鹵獲した救急箱からガーゼと消毒液とタオルを取り出し、

徳永の傷を消毒し、血で汚れたガーゼと取り替え、それを覆ってやる。


山田「・・・まずは、配電盤の電源を落とすことを第一目標としましょう。

徳永さんは負傷してるので、ここで待機していてください。」


不服そうな顔を浮かべるも、北条の手当てを受けながら傷に痛む徳永は

わかった、とだけつぶやいた。


山田「では、配電盤のところまでは石田さんと僕で行きましょう。

北条さん、橋本さん。徳永さんをよろしくお願いします」


北条「よし、任せとけ」


橋本「気をつけて行って来いよ」


山田は配電盤の鍵と、敵から奪ったボウガン、手榴弾を手にし、

石田は徳永に軽機関銃を預けてライフルを借り、奪った懐中電灯を手にして山を下った。


―続―

小説 「獄門鉄鎖」 十五

January 19 [Thu], 2012, 21:04
後ろから突如現れた男は手にしているボウガンを石田に向けた。



「死ねええええええええええええええ!!!」


バシュッ!!!


男の手から至近距離かつ凄まじい速さで矢が放たれた。

その矢は一直線に石田を狙ったが、

石田は頬を掠めながらもその攻撃をなんとか間一髪のところでかわした。


「ちっ!てめえ!!」


バシュッ!バシュッ!!


次々に石田を目がけて放たれる矢。

何とか石田はそれらをよけるが、腕や足をかすめ、頬からも血が流れる。


「おのれちょこまかと!!死ねえええええ!!」



ズギューーーーン!!


「ぐふっ・・・」


その時、血を吐き出しながら、男はその場に崩れ落ちた。

弾を心臓に食らったその体はみるみるうちに血の海に浸されていく。


「石田ー!徳永ー!大丈夫か!」


聞き覚えのある声。

塹壕の上の方を見上げると、そこには橋本、山田、北条の三人の影があった。


橋本「ふう、なんとか間に合ったか・・・大丈夫かおい」


命拾いした事と、仲間が駆けつけて来てくれた事に、

石田は心の底からの安堵のこもったため息を大きく一つ吐き、


石田「僕は大丈夫なんですが、徳永さんが・・・」


手榴弾の破片を腹に食らい、瓦礫に足を挟まれ動けなくなった徳永。

流れる血と苦悶の表情を浮かべながら痛みをこらえている。


北条「徳永!!・・・おい、そっち持て!!」


4人がかりで徳永の上に乗った瓦礫をどかす。

のしかかる大きな石をやっとの思いでどかして、

わずかな隙間から徳永を引きずり出す。

その体は泥と血で汚れに汚れていた。


石田「徳永さん、すみません・・・俺・・・」


徳永「いや、いいんだ。そんなこと気にするんじゃねえよ。

血が出てるって言ってもほんの少しだし、少し休めば何とかなる」


徳永は軽く笑って見せ、仲間に肩を借りて

近くの土壁を背に座り込んだ。


徳永「それはそうと、ちゃんと“アレ”持ってきたのか?」


山田はその声にはっとした顔を浮かべ、三人は少し離れた茂みから、

いかにも重そうな塊を1つずつ引きずってきた。


山田「ちゃんと持ってきましたよ、ほら」


山田たちが持ってきた3つの対戦車用地雷。

それは想像していたものよりずっと大きく、

いかにも高い威力を誇っているかのような佇まいであった。


山田「これをあの戦車の下に仕掛ければ、いかに10式戦車といえど、

ひとたまりもありませんよ」


不敵な笑みを浮かべる山田。

徳永はそんな山田に青息混じりに問いかける。


徳永「それで、どうやってその地雷を戦車の中に仕掛けるんだよ?

今突っ込んだらすぐに見つかって全員やられちまうぞ?」


山田「それはですね・・・、まずはどうやって地雷を仕掛けるか。

それについては、日が暮れてから作戦を話します。それまではここで待機としましょう」



――起死回生の策。

それがどんな内容なのか。

三人がその内容を気にしながら敵の来襲に備えそれぞれの武器を手にし、

日の暮れるのを今か今かと待っていた。


―続―
P R
プロフィール
  • ニックネーム:ひろ
  • 性別:男性
  • 誕生日:1993年2月20日
  • 血液型:A型
  • 職業:短大生・専門学校生
  • 趣味:
    ・ゲーム-シミュレーションゲームを主に!
    ・インターネット-ネトサ。
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