小説 「獄門鉄鎖」 二十四
February 14 [Tue], 2012, 19:51
いきなりの爆発で燃え上がった敵陣。
うごめく姿は炎の向こうで何かと戦っている。
それは石田たちではなく、他の何かと戦っているようである。
敵の敵は味方――。
水野はそれに加勢するべく藪から飛び出し、
石田と橋本と佐藤はそれに続いて駆け出した。
敵陣に近づくにつれ、炎の熱気にやり込められた空気がこちらへ流れ込んでくる。
顔や手など、露出した皮膚の表面がじりじりと熱くなるのを感じる。
しかしそれでも敵陣向かって突っ込み続ける。
聞こえてくるいくつもの銃声と叫び声、悲鳴、
まさにそこには阿鼻叫喚がありありと存在していた。
炎の奥でうごめく影、
それは何かに怯え、何かと戦い、そして倒れ息絶えるまでの始終を、
歩み寄る四人の目の前に晒し続け、
石田たちの胸中には、大いなる戦力への期待と恐怖が渦巻きひしめき合っていた。
「よし、撃ち込め!!」
水野の合図に合わせ、炎の中に向かって攻撃を仕掛ける。
揺らめく火の向こうに見えるのが敵か味方か分からぬ状況で、
ただひたすらに攻撃をし続ける。
弾を食らい、苦しみながら倒れる敵の声。
そのうなり声は炎に取りまかれどんどんと消えていく。
飛んでくる弾から身を伏せ、避けつつ炎の中に一心不乱に矢玉をくれてやり続ける。
やがて敵陣から銃声が止み、草木が燃え上がるパチッパチッという
わずかな音だけが聞こえるのみとなった。
四人はそっと武器を下ろし、いつ現れるか分からない敵の敵との間合いを計り、
炎からじわりじわりと遠ざかりながら様子を見る。
炎に崩れる敵陣のその奥から、姿が見える。
真っ赤な灯りに照らされ浴びた返り血の狂気たるや。
ついとっさに茂みの中にこぞって身を隠し、
その姿の過ぎ去るのを待とうとした。
数歩進み立ち止まると、ふっと振り返ってつぶやくように話し出す。
「手助け、感謝しますよ」
いきなりの問いかけに驚き目を見開く一同。
姿を見せはしないものの、茂みの中から覗き込むように、
こちらを見てくる男を見る。
「誰でも殺すわけじゃない。
力を貸してくれる人にはそれ相応の敬意を持ってお相手したい。
だから早く行け、炎におびき出されハエどもが集まってくる前に」
一瞬の沈黙。
男は向き直り、真っ赤に染まった空の下から闇の中のその奥へと歩いていった。
「おい、あいつ・・・」
「そうだ・・・」
「きっとそうですよね・・・」
「・・・間違いないだろう」
あの姿形、夜とは言え火の光に照らされはっきりと見えたその風貌。
間違いなくあの「一番槍の男」だ。
開始当初に10人を数秒の内に亡き者にし、
表彰も受けアイテムも一人で全部授かったあの男。
あの男がまさか俺たちの敵を一気に倒してくれるとは・・・!!
まだ信じられない様子の一同。
そんな中でいきなり何かを思い出したように立ち上がる石田。
「お、おいどうした?」
「せ、戦車!今のうちに行けば何とかなるかも知れないですよ!」
敵陣からは気配は全くなく、声一つしない。
確かに今ならあの戦車をどうにかできそうだ。
「あの戦車が他の誰かに渡っても厄介だからな、よし、行くか」
四人は残っている2つの戦車用地雷と分解して得た火薬を持ち、
弱まり薄れ行く火の中へと進んでいった。
先程に比べれば全然熱くはない、
むしろ、このくらい照明が残っていてくれると、
作業がスムーズに行くので好都合であった。
それに、3月とは言ってもやはりまだ肌寒い。
程よい暖房になってくれるだろう。
戦車の前に辿り着くと、目の前に立ちはだかるその体躯に
驚嘆を禁じえぬ四人。
しばらく黙り込み、その姿に圧倒されながら見入っていると、
「あ、じゃあ早く済ませましょうか」
石田の一言で我に返った四人は手分けして手頃な穴を掘り、
そこに地雷を埋め、土をかぶせる。
そして火薬を戦車の下っ腹に散布してやる。
「おいおい、そんなの意味あるのか?」
「ん〜、よく分からないですけど、地雷の爆発と同時に誘爆してくれたら、
追い討ちになるんじゃないかと思ったので」
「なるほどねえ」
手についた土を払い、おもむろに立ち上がると、
先程まで天まで焦がしたあの炎もそろそろ鎮火間近。
炎に当てられ寄ってくる敵も幸いいなかった。
全ての作業を終えると、火の熱を浴びてほてった体からにじみ出る汗を拭いながら、
四人揃って自陣のある山へと戻っていった。
―続―
- 小説 「獄門鉄鎖」 |
- URL |
- Comment [0] |
