月下美人―第1章 出会い― 

March 20 [Tue], 2007, 10:55
きらきら、したかったの。

19歳の夏。
趣味はクラブに行くこと。
彼氏はいない。
1人暮らし。
帰ってきてからの唯一の楽しみは音楽を聴くこと。

元彼と、まだ寄りを戻せたら、って思ってた。
一夜でいい。
会いたかった。


そんな私に舞い込んだ大仕事。

地元の友達と大掛かりなイベントを開催。
元彼のコウキを見返せるんじゃないか。
頑張ったら寄りを戻せるんじゃないか。

純粋な音楽に携わりたいという気持ちとそんな邪な感情を胸に抱きながら私はふたつ返事でOKした。


やることは沢山あった。


スタッフを集めること
協賛企業を集めること
企画書を作ること
スタッフのTシャツ作成
分担作業の内訳


とにかくキリがなかった。

メインスタッフ総勢12名で毎日夜中の5時までミーティング。
眠かったし、辛かった。
体の弱い私は風邪をひいた。


そしてある日のミーティングで恋の風邪をひいた。


「はじめまして。君がミサオちゃん?
よろしくね、俺タクヤ。」


こんなに素敵な人を見たことが無く私は喋り返せなかった。

タクヤ君は困った顔になってそっぽを向いてしまった。
今でも、あの日の衝撃を忘れることはないと思う。

月下美人−ユウコ− 

March 20 [Tue], 2007, 17:39
そしてその日はそのままご飯を食べに行ったけど
でも私とタクヤ君の席は離れ離れになってしまった。

それに、私の友達−ユウコが隣にすわってしまったから何もできなくて。


ユウコ。

ユウコはずるい。
顔がかわいい上に甘え上手で、男を手玉にとるのなんて朝飯前。
あの舌っ足らずも多分計算のうちなんだと思う。
今日だってほら、かわいい服着てる。

それに比べて私、サオは。
仕事帰りに来たから会社の制服姿。
化粧も直す暇なんてないから崩れ掛けのまま。
そんな出会いがあるともしらずに煙草吸ってしかめっ面。

勝てるわけがないじゃない。

私は、タクヤ君はかっこいい、鑑賞する部類の人だと思いそのままその想いを隠した。
そしてそれを知ってか知らずかユウコの猛アタックが始まる。


「ねータクヤ、ユウコね。昨日こんなことがあったの。」

−別に気にならない。サオ、大丈夫。落ち着け。

「あのね、ユウコ…彼氏と別れたんだぁ」

−そうですか。ごしゅーしょーさま。

「タクヤ、この後、どっかいこ?」

………


……






私はタクヤ君の顔を見た。
誰が見たって嫌がった顔をしているのに、何故気づかないのだろう。
そう思っていただけだったのに。

タクヤ君と目が合って。澄んでいた瞳と瞳が重なり合って、ぶつかって。
次の瞬間にタクヤ君の放った言葉が聞こえて意識がはっきりしたかと思ったら
あまりにもありえない事だったから、私は訳がわからなくなってしまった。

「ごめんね?俺ミサオちゃんとの先約あるから。」

何も予定なんてない。先約もないはずなのに私を変わらず見つめながら、言った。
それでもユウコは引かない。
寧ろ、頑なになって余計に反論する。

「やだ、ユウコが遊ぶの」

ユウコはタクヤ君のTシャツの裾を誰にもわからないように引っ張る。
そんなユウコを一瞬見て溜息を吐くとタクヤ君は言った。

「ね、野暮なこと言わないでよ。俺、気ィ使うの無理だから皆の前で君に恥かかせることになるし。
もう俺に関わらないほうがいいよ。」

そう言われるとユウコは涙を流しているのか身を屈めた。
私は唖然と見ていることしかできなかった。

月下美人−タクヤ− 

March 22 [Thu], 2007, 19:27
そして途中から只の親睦会になっていたミーティングは終った。
正確には私が帰った。

というのも私、サオは朝が早いのだ。
そして夜は実家で働いている。
今日だって遅刻はするけれどもちゃんと仕事はする予定だった。
だから早く帰らなくてはいけない。

皆に挨拶して、一番仲良しの、奈々に見送ってもらって、ばいばい。

店側駐車場にポツンと止まっているお気に入りの車に乗り込んで煙草に火をつけた。
ゆっくり、ゆっくり気持ちを落ち着かせるかの様に煙を吐いた。
そんな感じで煙草が1本終るまで車のエンジンはつけずにボーっとしていた。
あまりにもパニック状態だったせいか、私の精神安定剤であった煙草を吸っても落ち着かない。

「やだ、も、ぉ何がなんだかわかんない」

私は普段めったに言わないのに、いつの間にか独り言を吐き出していた。
そして見上げるとそこにタクヤ君がいるのが見えた。
心なしか目があっているような気がするけど、目が悪いから見えない。
目をほんの少しだけ凝らすとタクヤ君がこちらに向かって何かを喋っている様な気がした。

「何言ってるかわかんないよ。ちゃんと隣で喋ってよ」

伝わる訳ないのに。
私は伝わればいいな、と期待を持ちながらタクヤ君を見つめて小さく口を動かす。
伝わる訳がない、あたりまえだ。
それどころか勘違いだったらどうしよう。
私に話しかけていたのだろうか?あぁ恥ずかしい。
自意識過剰なつもりなかったのに…さっきのあんなこと言われたせいだ。

色々と思い描いていると恥ずかしくなってすぐに帰ろう、とエンジンをつける。
そして前を向いてライトをつける。

「…え?」

タクヤ君が、いた。
車が発進しないように両手を広げていた。
唖然としている私に近づいてきたかと思うとエンジンを止められて車に鍵をかけられ、外にでる羽目になった。
そしていつの間にか私とタクヤ君は手をつないでいて。
タクヤ君の目指す方へ一緒に歩いていると大きな黒い車。
そして助手席のドアを開けて私に「乗れ」と促した。

タクヤ君とはさっき会ったばかり。
そして話したのはたった一言。
だけど私が乗っている車はまぎれもなくタクヤ君の車で
運転席に座っているのは、まぎれもなくタクヤ君。

タクヤ君。

真島拓哉。
26歳、O型。
最近長年付き合ってた彼女と別れたらしい。
今度あそこのクラブでDJやるらしい。
回すジャンルはテクノメイン。


私とタクヤ君は、たくさんたくさん話をした。

そして今度一緒にバーベキューやろうねって。
タクヤ君の相方のアツシ君も呼んで。


サオ。

黒田美青。
19歳、B型。
彼氏は今年の誕生日の3日後に別れた。
好きなジャンルはテクノ、ハウス、ドラムンベース、ブレイクビーツ。


一見似てる二人が出会った。
価値観、音楽観、人生観、色々と似ていた。


これが悲劇を呼ぶなんて

私、わかってなかったの。

月下美人−ミサオ− 

March 23 [Fri], 2007, 17:57
「サオはきっといいもの持ってるよ
 だからこんな所で立ち止まらないでいろよ
 俺と離れ離れになったからって、馬鹿すんなよ
 別れても、サオは俺にとって大事な人だから覚えとけよ」

コウキには最後にこう言われた。

ミサって皆には呼ばれてた。
コウキだけサオって呼んだ。そして私がサオって一人称で話しかけると「可愛い」って抱きしめてくれた。
半年もそれが続くとなかなか抜けず、不意に自分を[サオ]と呼んでしまう。

今のサオはコウキが作り上げた。
サオは元々音楽が好きだったけどあんまり詳しくなかったし
ミーハーだし、よくわかんない事ばっかだった。
元々髪の毛茶色くて苛められたりしてたから黒く染めてた。
そんでもって、可愛い可愛い車に乗ってた。

コウキの事は中学から知ってた。
違う中学の先輩。
スケボーが上手な先輩。
かっこいい先輩。

サオは一度だけコウキがすべってるのを見たことがある。
はっきり言って、ひとめぼれした。

それから、サオが付き合う人はスケーターばかりだった。
コウキの影を追っていたんだと思う。
なんとなく、似てる人ばっかり選んでたような感じ。今からすると。
でもサオは付き合うとか、寧ろ知り合いになるなんて思ってなかったから。

カズキ兄の恋を取り持った時、カズキ兄が開いてくれた合コンにコウキがいた。
てか、カズキ兄途中でさじ投げて、サオとコウキが連絡とりあって合コンした。

7年ぶりにみたコウキは本当にかっこよくて
サオはコウキに2度恋をした。
コウキの番号しか知らなかったからメールアドレス聞いて
サオはそれから1週間東京遊び行ってたからメールとかした。

その間にカズキ兄の子供が死んだ。

サオはびっくりして帰ってきた。
だって東京行く前の日にサオのバイト先のプールきたばっかだったのに。
慌てて帰ってきて、ニュースでカズキ兄の子供の、ショウの話がでて、マミ義姉が悪いって何もしらないキャスターが言ってた。
あんなの誰も悪かったんじゃない。
ショウの運が悪かったんだ。

でもショウとサオはすごく仲良しだったのね。
泣いて泣いて、カズキ兄と一緒になってもっと泣いて

泣きつかれたサオにメールくれた友達が何人かいたけど
こんなの、友達じゃない。
ショウの事知りもしないのに道端インタビューみたいので喋ってたのばれてるよ!
サオそんな馬鹿じゃないもんね。
悪いけどIQ175あるって検査で出てるもんね。

IQはどうでもよくて。
そんな中、カズキ兄からコウキが呼んでるって言われてカズキ兄の部屋行ってコウキにあった。
カズキ兄は気、使って部屋から出てって茹だる様な暑い部屋にはサオとコウキの二人きり。
コウキは何も言わなくてサオは心配だったよ。
ショウの事言われるのかな、って。
マミ義姉の事言われるのかなって。
カズキ兄の事言われるのかなって。

不安で涙がたまるサオを見てコウキは言ったよね。

「心配すんな、俺がいるから」

そしてサオの体を引っ張って、抱きしめてくれた。

暑くて暑くて、体がべとついてて
薄着だったからコウキの体温がリアルに伝わってきた。
サオ、このままやられちゃってもいいと思ったけど
コウキはサオを大切にしてくれました。

そんなコウキにサオはまた好きが大きくなったよ。

月下美人−コウキ− 

April 03 [Tue], 2007, 15:09
俺の名前はコウキ。
仲間内には「こーちゃん」とか「コウ」とか呼ばれてる
でも最近は「コウキ」と呼んでもらえることがある。

原因は あいつ の せい ?


小学校、市民体育館の駐車場でバスケをやるのが好きだった。
高学年くらいになると顔見知りに外人だっていた。
スポーツをやる人間に悪い人間はいない。

ある日マイクという一番仲のいい白人の友達がもってきたもの。
それはスケートボードでした。
俺はその日、マイクにそのスケボーをもらった。
嬉しくて大はしゃぎして次の日に俺の宝物の、マイクの好きなCDをあげようとしたら
マイクは次の日、自殺していて棺桶に詰める事になってしまった。

俺は、マイクの忘れ形見を大事に、尚且つマイクが驚く位滑れる様になる事を墓前で誓う。

中学生になっても、受験シーズンになっても、勉学よりもスケボーに力を注いだ。

俺が高校1年生の頃。
俺は県大会で1位になることができた。

それから3年。
俺は目標も無く煙草片手に、デッキ片手に東京に居た。

親の仕送りにすねかじり
日課は決まってガンジャを吸うこととスケボーすること
部屋の中が煙草とガンジャの煙で漂っていた。
世に言う[ジャンキー]だったのかもしれない。

[中毒者]、じゃなくて[屑]の方の。


スケボーをやっていたせいか不思議と女には困らなかった。


それから更に数年。
俺は地元に帰ってくることになる。

暑い夏だった。

彼女と別れて1週間。
先輩の計らいで合コンに行くことに。
どうやら女はスケーターが好きだとかどうとかで俺が抜擢されたみたいだ。
でも、俺合コン初めてだし人見知りなんだけどな。

相手は先輩の妹とだったんだけど、途中から俺とその、ミサオちゃんでやりとりするようになり
俺とミサオちゃんの距離は電話ごしに縮まっていったのが判った。


第一印象は、ギャル。

黒いし。(プールの監視員なのだからしょうがないけど)
髪の色明るいし。(塩素で抜けているのだからしょうがないけど)
うるさいし。(盛り上げようと必死になってくれていのだからしょうがないけど)
俺の 嫌いなタイプ だった。
合コンはそこそこに終わり、ミサオちゃんからメアド聞かれて交換しといた。

別に、これからどうなるなんてないだろ。先輩の妹だし。

そう思っていたから。
でもミサオちゃんはよっぽど暇なのか遊びに誘ってくる。
俺は本当に時間が合わなかったりで最初は遊ぶことがなかった。

そして、先輩の子供が死んだ。

先輩以上に落ち込んでいたのが彼女。
俺も子供とは面識があったから線香あげに行った。
その時にちらっと見えたミサオの姿は、酷くやつれていた。

俺が支えてやらなきゃ。

先輩にミサオを呼んでもらい、先輩が部屋からいなくなり二人になったのを見計らって言った。

「心配すんな、俺がいるから。」

そしてそっと 壊れ物を扱うように 優しく手を引っ張って 抱きよせた。

イトオシイ

ミサオを思う気持ちはそれだけでいっぱいになっていた。
俺の嫌いなタイプだったはずなのに。




そして数日、ミサオが俺を呼ぶ。

「コウキ」

俺は返す。

「サオ」

ミサオは言う。

「なんでミサオはサオって呼ばれるの?」

俺は抱きしめて、君の耳の傍でそっと告げる。


「世界で俺だけが、呼ぶ呼び方にしたかった。
 サオを独占していたいから。」


サオの顔が熱くなっていくのが判る。
俺はそんな初々しいサオが好きだった。

そして、サオが第一人称を「サオ」と呼ぶのがとても可愛かった。
俺がかわいい、と言った日からそう呼ぶようになったから。


本当に大好きだった。

サオの秘密を知るまでは。

君はもう俺の事なんて覚えてもいないかもしれない。

けれど、知ってる?

自慢じゃないけど彼女が途切れたことが無いんだけどさ。

サオと別れてからずっと居ない。

サオが俺の部屋から笑顔で去っていった日から1年がたつけれど。


別れてからサオが誕生日にくれたメールは

今も大切に保護してあります。


君が写ったムービーは

君はどうかは知らないけれど、まだ残っていて

僕の心に君の笑顔が焼き付いています。

月下美人−ヒミツ− 

April 09 [Mon], 2007, 17:47
サオのヒミツ。

「コウキに言われたけど、サオにヒミツなんてないのに。」

今でも思うのは、コウキが「サオのヒミツに耐えるのがちょっときつい」と漏らしたこと。
サオのヒミツって?
サオは何もヒミツなんて、ない。
今日もまたそれを思い出して美青は頬を膨らましていた。


ヒミツなんて、ない。


サオは5人家族で3人兄妹、一番上だけ異父兄妹
昔は色々あったよ。
お兄ちゃんが、よく暴力受けてた。
サオはそれ見て泣いていた。

忘れもしないサオの3歳の誕生日
大好きな大好きなお兄ちゃん(カズ兄)はサオの誕生日会にでなかった。

「どうして?パパ、どうしてカズお兄ちゃんはサオの誕生日会には出れないの?」

サオはパパの胸を叩いて泣きながら言った。
たくさん、たくさん叩いた。

「サオ、カズアキは悪い子だから出れないんだよ」

サオは疑問に思った。
悪い子ってそんなにいけないの?
サオは、よかれと思ってパパに怒りながら言った。
叩く拳に先ほどよりも力を込めて。


「カズお兄ちゃんは、サオと遊んでくれるしいい子だよ。
 ヒロキお兄ちゃんと、よく3人でゲームしたりして遊んでるもん・・・」


その瞬間、サオは転がり落ちていすに頭をぶつけた。
パパが立ち上がって隣のカズお兄ちゃんの勉強部屋への扉を蹴破ったから。
蹴破られた扉は勉強をしていたお兄ちゃんにぶつかった。

―― 頭から流れる、赤。

サオはびっくりして泣いて引き止めた。
でもパパは許さなかった。お兄ちゃんが泣いて謝っても手を止めなかった。

サオはそれからパパが嫌い、大嫌い。
ママとサオはカズお兄ちゃんの味方。
ヒロキお兄ちゃんはその時寝てたからパパの本当の姿を知らなかった…高校にあがるまで、ずっと。
サオは、お兄ちゃんに「ごめんなさい」とずっと繰り返して

そしてあまり笑うことがなくなった。
カズお兄ちゃんともサオ的にギクシャク。負い目があったから。

次の日に見たお昼のドラマ。
内容は、夫婦が子供について喧嘩ををする、みたいな感じだった。
サオの家と似てたから見た。

そのドラマではカズお兄ちゃんみたいな子のことを『連れ子』と言っていた。

その後買い物に行ったとき、車でママとふたりきり。
サオは聞いた。

「カズお兄ちゃんは、連れ子?」

ママは何も言わなかったけど、涙をながしていた。

サオの3歳の誕生日から3日目の出来事。




今思うとサオの誕生日の3日後は碌なことがない。




それからサオは崩れるように落ちていった。

幼稚園では喧嘩三昧。
小学生から煙草と酒の味を覚えた。万引きもした。
中学生から近所の家に空き巣に入るようになった。
高校生の時バタフライナイフで親を刺した。

高校ではたくさんの出会いがあった。
中学校で味わえない楽しみ。すぐに彼氏もたくさんできた。
でもサオは男女関係、が怖かったから本気で付き合うことはなかった。

高1の夏、ユウトと付き合ってがらりと変わった。
ユウトはサオの1つ下。
中学生だったけど、スケボーがうまくて元々仲良しだったけど、友達の仲裁?で付き合った。
元々ユウトとサオは同じ中学で知り合いだったからすぐに意気投合した。
ユウトにはサオのすべてを捧げた、愛しかった。
けれどユウトが中学で彼女を作ってサオとユウトは終った。

それからずっとサオを追いかけてくれてたヨウイチと付き合った。
ヨウイチとは純愛って感じ。
サオはヨウイチの人の良さが嫌になった。
ってかヨウイチに呼び出された5分前にすっごくタイプの先輩に声かけられて
ヨウイチきたら帰っちゃったんだけど
サオはその先輩がちょっと、結構気になってた。

ヨウイチ振ってからサオはその先輩のアドレス聞いた。

名前は佐々木千鶴(ササキ チヅル)
サオの2つ上の先輩。
ツイストパーマがすごく似合っててかっこいい。
軽音部でドラムをやっていた。そしてスケボーもしていた。
サオは先輩とか全然顔見知りいなくて知らなかったんだけどかなりモテる人。

サオはすぐにチヅルにはまっていった。
だって軽音部ってだけでもかなり高ポイントなのにそのうえスケーターだし!
あと何がアレってかっこよかったのね。
サオの知らない世界が広がっていたからサオは誘惑に負けただけなのかもしれない。

チヅルから声かけてきた割にサオは彼女になかなかしてもらえなかった。
そしてようやく付き合えた頃、サオはチヅルに迫ってる間に2人の彼氏ができていた。
チヅルにそれがバレて1ヶ月でサオとチヅルは終った。

そしてそれから2ヶ月――
サオとチヅルは友達未満恋人以上をずっと続け、痺れを切らしたチヅルが「よりを戻そう」と言ってくれた。
そしてサオとチヅルは半年、仲睦まじく暮らしていた。

そんな中、サオは不思議な友達に出会う。

―顔? 知らない。

―名前? ハンドルネーム。

―年? 判らない。

―住まい? 北海道から九州まで。


そう、サオは暇な時、チャットをして遊んでいた。
そこで仲良くなったのが [マリ] と [ナナ] だった。
サオは一生、この二人を大切にしたいと思った。

だって、顔も知らなければ名前は本当かなんてわからない。
電波が繋げるサオたちの会話。
だけどサオは日に日にふたりが大切になって、日に日に入り浸るようになった。
マリとナナと仲良くなるにつれて互いの事を親身に相談しあった。

マリが、打ち明けた日。
嘘だと思っていました。

「私、ガンなんだ」

サオは嘘だと思っていたよ。
でもそれでも不安で心配で涙を流しました。



今思えば、嘘であってほしかった、の方が正しい表現かもしれない。



サオは、友達には、この2人を中心とした友達のことを打ち明けませんでした。

ヒミツ。

敢えて言うなればサオのヒミツはネット友達がいたくらい。





―― その頃のサオのヒミツはそれだけだった。