幸せの代償

October 29 [Sun], 2017, 9:51
私は、一生幸せになってはいけない。

5年間も恋愛経験がなかったのは、
単に出会いがなかったからだけではないと思う。
これは5年前の自分がしでかした罰だ。

来世では、自分の本当に好きになった人と結婚したいと思った。
そのためには、いまを大切に生き抜くこと。
苦しい状況なのは、私があのとき、内線を取ってしまったから。
私が、不倫への道をなかなか断つことができなかったから。
あのとき、私が…お腹に宿ることはなかったとしても、
まだ、生むことは出来ないと
願ってしまったから。

友達に告白されて、一度は断った。
2度目もなお言ってくれて、そこから
友達から恋人の関係になった。


5年ぶりくらいに誰かと一緒に抱き合って寝た。
幸せを感じる一方でのしかかるのは、私は幸せになってはいけないという戒めの言葉。

もし妊娠したら、とか、そんな状況になって初めて口に出す。
こんなこと言ったら重いだろうな、嫌われるだろうなと思いながら。
彼は極めて冷静に、
「嬉しいよ、俺子供好きだから」とあっけらかんと答えた。
その反応に驚いた私は目を見開いて彼を見つめる。
彼も驚いたように私を見て、いつものように「大丈夫?」と聞いた。

「なんで、ちゃんと考えてないでしょ。子供ができたらどれだけ金かかるかとか、これからの人生が全く変わることになるとか」
「考えてるよ。でも、なんとかなるよ」

不思議だ。なんの根拠があってなんとかなると思ってるんだろう。
でもなんでか私は、本当になんとでもなるのかも、とも思い始めていた。

そうやって言ってくれる彼を手放したくないとも、少しだけ思った。
でも私は「幸せになれない」から、きっといつか彼は私から離れていくんだろうと思う。

思い詰める私を見てまた彼が
「大丈夫?」と聞いた。
返事の代わりに出たのは、
「私は一生幸せになれないんだと思う」
との言葉だった。

今度は彼が驚いてこちらを見る。
言ってみようと思ってた言葉を言ってしまった。
言った瞬間に少し後悔して、おどけてみせようと思ったのに、できなかった。

「なんでそう思う?」
「不倫してたから。不倫女はね、幸せになれないんだよ」

ちょっと笑って答える。上手く笑えたか。
この話を知ってる彼は、心の中で私をどう、見るんだろう。
こんな話、こんなときにしたくなかったのに。
忘れて、と言いかけたとき、穏やかに彼は言った。

「もう、時効だよ」

思ってもみない言葉にまたびっくりする。

「りんちゃんは、頑張ったよ。よく頑張ったと思うよ」

それは私にかけちゃいけない言葉で、
でも、
きっと私が1番、言ってもらいたかったことだった。
目の奥が熱くなって、やめて、泣きそうになるじゃん、と言い終わる頃にはすでに涙が流れてた。

まさか、ここで時効と言われるなんて、思ってもみなかった。
誰かに許されたかったのかもしれない。
分からない、分からないけど、
いま私は、かけてもらいたかった言葉に
こんなに心が震えてる。
P R
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