銀の竪琴(後編)

August 31 [Sun], 2014, 17:12
ガライの家にモンスター達が集結している・・・・・・。
人の噂というのは広まる過程で真実を変に捻じ曲げてしまう場合がある。
マドハンドの演奏を聞くためにガライの家に集まるモンスター達のことが
この時どんなふうな形で人々の間に広まったのかは定かではないが、その話を聞いた
ラダトーム王はガライの家に兵士(大軍)を送り込んだ。
「モンスター達が集まると危険・・・・・!!」
誰しもが考えることである。ましてや「このモンスター達は安全です」と言っても
誰一人信ずるものなどいないだろう。そういう時代なのである。

ガライや、多数のモンスター達が兵士達に取り囲まれるのはあっという間の
出来事であった。囲んだ兵士の中の一人が言った。
「詩人ガライよ!そこは危険だ。はやくこっちに来い。」
兵士達にとってガライは、人質であるかあるいは脅されているかのように映るのであろう。
ガライはモンスター達をぐるりと見渡した。
モンスター達は脅えていた。
当たり前である。彼らは昔の凶暴な性格ではないのだから・・・・・・。

ガライはその場を動こうとせずこう言った
「みんな聞いてくれ!このモンスター達は危険ではない。皆やさしいモンスター達だ。
ここにいるマドハンドの演奏を聞けばきっとみんなにも解るはずだ。
彼らは皆やさしい心を取り戻している!」

ガライがマドハンドの方を見る。そこに言葉は無いが、全てを理解したかのようにマドハンドは
静かに竪琴を奏で始める・・・・・・・
・・・・が、その瞬間
兵士の群れの間から一筋の炎が放たれた。

”ベギラマ”

炎は一瞬のうちにマドハンドを包んだ。
ガライはあまりに信じられない出来事に目を大きく開き、体を震わせた。
”怒り”が全身をかけめぐる。
それはまわりのモンスター達も同じであった。怒りに満ちたモンスター達は
今にも兵士の壁に襲いかかろうとしていた。
怒りで我を失いそうになったガライであったが、モンスター達の殺気に気付き
(だ、駄目だ。ここでみんな(モンスター)を暴れさせては駄目だっ!)
という考えがとっさに頭をよぎった。
そして、

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

ガライは叫んだ。
それはアレフガルド全土に響き渡りそうなほどの大きな声であった。
この国1番の歌声を誇るガライの声・・・。絶叫。
その声は、モンスターや兵士の闘争心を一時ひるませた。
皆、その場で固まるように動きが止まってしまったのである。

ガライのまわりだけ時間が止まったかのような光景の中
ガライはゆっくり切り株の方へ歩いて行き、竪琴を奏ではじめた。
2年と3ヶ月かけて作ったこの「銀の竪琴」をガライ本人が奏でるのは、この時が初めてであった。
ガライの指から繰り出されるメロディーはなんとも悲しく、せつないものであった。
モンスター達はその儚いメロディーの中、泣きはじめた。
全てのモンスターがマドハンドの死を悲しんだ。
マドハンドの死・・・・・・・・怒りを殺しながら悲しく響き渡る旋律は
まるで竪琴自身が涙を流しているかのようにも聞こえた。

「う、うあわぁぁ」
兵士の一人が叫ぶ。その声を聞いたまわりの兵士達の表情も次々とこわばってゆく・・・・・・
なんと、ガライやモンスター達を取り囲む兵士の輪のさらに外側に無数のゴーレム、だいまじん
が集結していたのだ。

”マドハンドの習性である仲間を呼ぶ能力”
その力が竪琴の弦に染み込んでいたのか・・・・・・・・
音色に引き寄せられるように集まるゴーレム、だいまじんの数は
ガライの演奏が激しくなるにつれどんどん増えていった。

「に、逃げろー」
危機を察した瞬間「逃げろ!」と口にして走り出す人は実際に見た事ないが、
兵士達はみな武器を捨て逃げ出した。


「やさしいおまえ達を誰一人殺させはしない・・・・・・」

竪琴の音はさらに大きさを増す。
ガライは何かを念じるように激しく弦を弾き続ける。
その時・・・
ガライの前に鮮やかな水色の渦が現れた。
強力な攻撃呪文を覚えることができない詩人ガライは、好きな曲を奏でる生活の傍ら
その竪琴の音色の波長で時空の渦(旅の扉)を作り上げるという
とんでもない究極呪文の研究に生涯を費やしていたのである。

「わたしの呪文はまだ不完全だ。この渦が何処に通じているのかはわからぬ。
しかし、今のこの時代、この場所ではおまえ達は皆殺されてしまう。
この渦の先にやさしい心を取り戻したおまえ達が平和で暮らせる場所があることを願う・・・・」

渦は少しずつ大きさを増しながら、ガライ達の頭上に昇っていく。
そして、

「かーっっっ!!!」

ガライが一喝するとモンスター達は皆、体が宙へ浮き渦に吸い寄せられていった。
ゴーレム、だいまじん、火炎ムカデ、大王ガマ・・・・・・
マドハンドの演奏を聞くために集まっていた数多くのモンスター達全ては
瞬く間に渦の中へとその姿を消した。

最後のモンスターが渦の中に消えるのを確認したガライは、竪琴の演奏を止めた。
そして焼け焦げたマドハンドの亡骸をそっと拾い上げ静かにホイミ系の呪文を唱えた。
するとマドハンドの黒くただれた肉片はくずれ、美しく黄金に輝く骨格とツメだけが残った。

「おまえの演奏は一生忘れない」

ガライは涙を必死でこらえながら、骨と化したマドハンドを閉じかかった渦に向かって浮かべた。
マドハンドの通過を終えた渦は静かに静かに消えていった。







この後、ガライは銀の竪琴を封印したそうです。
彼は、彼の演奏を聞きに訪れる冒険者達に決まってこう言いました。

>うん?ぼく?
>ぼくはガライ。
>旅のぎんゆう詩人さ。

>楽器かい?ぼくは
>たてごと専門なんだけどね
>家においてきちゃったよ。

>あの銀のたてごとの音色は
>ちょっとキケンなんだ。


***
銀の竪琴は誰にでも奏でる事が出来、弦に染み付いたマドハンドの力で
その音色を聞いたモンスター達を呼び集めますが
素人が奏でる音色(特にレベルアップなどを目的とした演奏)では
モンスター達は聞き入る事なく怒って襲い掛かってくるそうです。
***






〜あとがき〜
ガライの渦(旅の扉)を通り抜けたモンスター達が行き着いた先は
水のない厳しい天候の砂漠地帯でありましたが、無数のゴーレム達が
その身を壁とし一つの建物を作り、他のモンスター達の命を救ったと伝えられています。
そしてマドハンドの亡骸は隠し階段を経た地下に手厚く葬られたそうです。
モンスター達は長く生きる事はできませんでしたが、亡霊になってもずっとゴーレムの身体でできた
ピラミッドに眠るマドハンドの亡骸を守ったそうです。火炎ムカデ、大王ガマ・・・・・そして
食べ物が少なくやせ細った(ミイラと化した)だいまじんも、身体のくさっただいまじんも・・・・・・・・

一説によると黄金のマドハンドの骨は死してなお、マドハンド特有のモンスター(仲間)を呼ぶ能力を失わず
その身をお宝と勘違いしてやってくる冒険者達を苦しめたそうです。



(おしまい)

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