屋根裏部屋の花たち 

August 10 [Thu], 2006, 8:07
『屋根裏部屋の花たち』  扶桑社 V.C.アンドリュース 中川晴子訳

優しい両親、優しい兄、そして可愛い双子の弟と妹、そして"私"。
どこにでもある、ごく一般的な家庭で"私"は育った。そんな幸せな日々は、ある日突然終止符を打たれることとなる。

物語は" 私"、キャシー・ドーランギャンガーの語りで幕を開ける。

最愛の父の突然の死―この日を境に、一家の運命は一変する。
4人の子供を抱えた母は、実家へ戻ることを決意した。母の実家は相当な資産家であったが、母は父との結婚が近親間であることから、許されぬ罪とされ相続権を剥奪されていた。そんな勘当同然で出た家に戻るのは、母にとって苦渋の決断だったに違いない。

古めかしいながら造りは豪華絢爛といえる屋敷で、彼らを待ち構えていたのは話しかけることも厭われるような厳格な祖母と、死を間近に控えた病気の祖父。

祖母は母に一つの条件を与える。祖父の愛を再び得ることが出来れば、相続権を復活させると。ただし子供達の存在は決して明かしてはならない―。

そうして子供達の屋根裏部屋生活が始まることになる。
「すぐにここから出してあげるから」そんな母の言葉を信じて、子供達は待ち続けた。数日、数週間、そして気が付けば時は3年も経過していた。

徐々に芽生え始める母への不信感。数年が経過した頃には、怒りと悲しみと複雑な感情が子供達の心に巣くうことになる。身を寄せ合い、助けながら生きてきた兄妹達の絆が、唯一の救いとしかいいようがない、なんとも絶望的な気分にさせられる話だが著者の巧みなストーリー展開が読者を飽きさせることなく、暗く光の射さない屋根裏部屋へと引き込んでいく。

母は我欲の為に最愛の子供達を、いとも簡単に裏切ってしまう。人間とは欲のためにここまで変貌するものか、と疑わしくも悲しい事実が描かれている。

双子の弟の死、兄クリスと妹である"私"との近親相姦―。
そうして徐々に、全てが狂気という膜に覆われていく。
こんな状態になってしまったら、誰が子供達の罪を責められるだろうか?

本書は1987年に映画化されている。クリストファー・ヤングの音楽と映像が非常にマッチしていたその映画は、当時小学生だった私に強烈な印象をもたらした。その後、気になって図書館で探した本が本書だったのだ。なんともマイナーな本だが、こっそりとお勧めしたい一冊である。

FRANZ FERDINAND 

August 10 [Thu], 2006, 8:04
『FRANZ FERDINAND』

”FRANZ FERDINAND”とは、第一次世界大戦勃発の要因となった
サラエボ事件で暗殺されたオーストリア皇太子の名。
なぜ、その名をバンド名に?

その理由には、「名前の響き」と「サラエボ事件でその後の世界が変わってしまった史実」を気に入ったことにあった。
このバンドの絶妙なセンス、そして名前になんて左右されないという絶対的な自信が垣間見える。

英インディ・レーベルDominoからリリースされた一枚のシングル「Darts Of Pleasure」をきっかけに、2004年1月に英NME誌が『このバンドが君の人生を変える』というキャッチフレーズとともに彼らの記事を掲載。これをきっかけに、英国中に彼らの名が知れ渡ることとなる。

その後、彼らの実力はもちろん、甘いマスクのヴィジュアルも手伝ってイギリスのみならずヨーロッパ、アメリカ、日本など世界各国にその人気は飛び火した。

軽快な楽曲の数々は、60年代UKロックシーンを思わせる仕上がりだ。
最近では、ソニーの新型ウォークマンのCMに「Do You Want To」が起用されたので、耳にしたことがある人も多いだろう。
彼らの目指す音楽は”女の子も踊れるような音楽”と、いたってシンプル。
ロック、ダンス、ポップという音楽の垣根をいとも簡単に飛び越えてしまった彼らの音楽が、これからどう発展していくのか世界中が注目していることは間違いない。

個人的なオススメは、アルバム『FRANZ FERDINAND』の”Take me out”と”Shopping For Blood”。パーティーなどのダンスシーンはもちろん、ドライブでもこのアルバムを聞きながら、天気の良い日に窓を全開にして風を受けながら走ると最高だ。

画狂人ーホルスト・ヤンセン 

August 10 [Thu], 2006, 7:59
彼の描く線は、柔らかく巧緻さを極めている。
だが、その大胆な構図、そして描く対象には危うさが漂う。

生涯を通して内的なイメージを追い続けた彼は
死、性、そして自我に強い執着を持っていた。
どこか絶望感と孤独感が漂う作品の背景には
彼の複雑な生い立ちに関係がある。

ドイツのハンブルクで私生児として生まれ
12歳で母を亡くした少年は、市内に住む
叔母アンナに引き取られる。
幼い頃から絵を得意としていた少年は、やがて美術学校に入学。
しかし5年在籍後、素行の悪さが問題となり退学させられる。

その後も、殺人未遂事件や家族との別離、幾多の女性関係
酒による暴行などを繰り返すヤンセン。
だが、ひとたび絵の構想が閃くと、アトリエに閉じ籠り
水とコーヒー以外は口にすることなく、絵を描くことに没頭したという。

世間が彼の才能を認めても、彼にとっては煩わしいだけの評価だった。
ただ、ひたすら内的なエネルギーを放出させるために、描く、描く、描く。

自分を曲げることなく生き続けたヤンセン。
彼は言う。 

―生きることは、描くこと―

彼にとって、描くことは息をするように当たり前のことなのだ。
全ての作品に"死"と"生"を感じるのは、きっとヤンセン自身が
その両者の本質を敏感に感じとり、皮肉的手法で描くことで
婉曲的に表現していたのかもしれない。
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