彼女、彼女と彼女 

September 07 [Sun], 2008, 11:25
[転校生を紹介する。]

教壇に立った担任からの知らせに教室内はザワザワと騒がしくなる。
担任の教師は生徒達に静かにするよう注意し、扉の外に立っているだろう転校生に呼び掛けた。教室のドアがガラリと音をたてる。次いで入ってきた者に教室中の生徒達の目が集まった。転校生は真新しいローファーをカツカツ鳴らしながら教壇に上り、教師の隣に並んだ。


[ 財前 叶 です。よろしくお願いします!!]
少女は明るく名乗ると、にっこりと向日葵のような笑顔を浮かべた。





彼女、彼女と彼女







2週間前.

夏も間近の6月末。
その日は朝から雨が降り続いていて、じめじめとした嫌な日だった。しかも最近、梅雨時は気温も上がるから室内にいても蒸し暑いというなんとも嫌な状況。そんな日に学校の宿題をやるのも面倒で、私は部屋でベットに寝転び、ボーっと天井を眺めていた。そのまま夜8時を回った頃のこと、それまで雨の降る音を聞くともなしに聞いていた私の耳をそれとは異なる音が打った。

倦怠感が襲う身体をイヤイヤながら起こして勉強机の上を見れば、ブルブルと震えながらバイブ音を発し、今にも下に落ちそうになっている水色のケータイ。



(((まてまてまてっっ!!!落ちるなーーー!!!)))



だがそんな心の叫びも虚しくケータイは下に落ち、おまけに焦って手を伸ばした私も、バランスを崩しベットから転げ落ちた。


[---------っっっっっ!!!!]
打った頭を襲う痛みに悶絶しながら、私は落ちたケータイを睨み付ける。
少々それを乱暴につかみとり、副部長からの連絡だったら明日ぶん殴ってやる!!と意気込んでサブ画面を確認した。だが、そこに表示されていたのは想像したのと全く異なるもの。そして、その珍しい人物の名を見た瞬間、身体を支配していた倦怠感とか頭の痛みだとかはきれいサッパリ消え去ってしまった。残ったのは純粋な驚きのみ。



<<< ママ >>>




私は緊張、、、むしろ恐怖にも似た思いを抱いてじっとサブ画面を見つめる。
一体何のようだというのか。あの人は今超売れっ子のファッションデザイナーだ。朝から晩まで多忙のはず。

(受験生になった私に労いの言葉、、、、とか?いや、でも私の中学、大学附属だから、試験なんてないようなもんだし、、。それにあの仕事狂がそんな事でいちいち電話してくるとは思えないけど、、、、、。)


私は暫し考え込んだあと、折りたたみ式のそれを開き通話ボタンを押した。


[もしもし、、母さ -{{{叶!!!!!!}}}


驚いた。そりゃあ、いきなり金切り声を上げられたこともだが。実際ケータイを取り落としそうになったし、、、。だがそれ以上に驚いたのは、あのクールで冷静な母がこんなにも取り乱していることだ。

{{{叶、叶っっっ!!!!!私っ私どうすればいいのお!!!?}}}

[落ち着いて母さん。ちゃんと話してくれないと分からないわ。]


普通は焦りもしない人の口から伝われる異状の揺るぎ。
こんなにも取り乱しているという事は、よぽっどのことがあったのだろう。

((会社くびにでもなったか??))

私は母を落ち着かせようと努めて冷静に問いかける。

[それで?何があったの?]


{{{祈が、、、、いのりがっ 。}}}



[ えっ ]


電話越しに母の口から発せられた妹の名前。そして伝えられた情報に一瞬頭の中が真っ白になる。だがすぐに気を取り直し、必死に言い募っている母の言葉を一字一句逃さぬように聞き入った。
すべて聞き終え、私は思わず唇を噛み締めた。



[今から、、、、、そっちの家にいくわっ、、、。]


荒らげそうになる声を必死に押し止め、震える手で電話を切った。

すぐに私は乱暴にケータイをスカートのポケットに突っ込み、帰宅してから着替えずにいた制服の上にパーカーを羽織る。そして登校用のカバンの中から財布のみを引っ掴むと、玄関の戸閉めをすることも忘れて,雨の降りしきる中、傘もささずに家を飛び出した。背筋を襲う寒気が止まらなかった。何かに追いかけられるように、視線に入ってきたすべての事を無視し冷たい空気の中をずっと走った。




第1話end
P R
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**翡翠セツキ――**
現在カナダ留学中
わずかな小説、絵、考えなどを
書き込んでいく所です
テニプリ嫌われ小説連載中
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