August 27 [Thu], 2009, 16:53
 家から一歩外へ出るとむわっと膨れ上がった空気に息苦しさを覚える。
 まだ日が昇って2時間程度しか経っていないはずだが、気温は順調に上がっていた。
 というより、室内温度を低くし過ぎているのだろうということには薄々気付いてはいるのだが、なかなか文明の利器の恩恵から逃れることはできないまま、長袖を着た母を横目に気付かない振りをしているのだ。
 起きて学校へ行くまでの1時間くらい暑さに煩わされることなく過ごしたい。
 その代償がドアを一歩出た先に待ち構えているこの熱気なのだとすれば、それは受け入れざるを得ないデメリットというやつだ。
 大場護、開陽高校1年。初対面では9割9分おおばまもると呼ばれるが、こう書いてゆずると読む。
 大して変わらないのだから素直に譲の字を使ってくれればよかったのにと思うが、祖父がこの名前を推して一歩も譲らなかったというのだから仕方がない。
 あの頑固爺に逆らえるようなつわものは大場家には存在しない。
 学校までは徒歩でおよそ15分で着く。
 遠からず近からず。しかしこの炎天下ではその道のりが恐ろしく長いもののように思えてくるから不思議だ。
 家の位置もそう思わせる一因なのかもしれない。
 学校までの距離こそそう離れていないが、住宅地や町の中心地は学校から見て東側に位置するのに対し、俺の家は西側にある。
 こちら側は森やら竹林やらが多く、あまり住居や商店の類はない。
 つまり学校に着くまで誰にも会わないということも珍しくないのだ。
 漫画の中にありがちな隣人の幼馴染など勿論いないし、おれは一人っ子。
 一人での登下校を紛らわす友と言えばもっぱらMP3プレーヤーというわけだ。
P R
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