リ・スタート・ライン 

2005年01月27日(木) 5時55分
 一馬と並んで歩いた道、一列になって俺が先になって登った歩道橋の一番上に吹く風はとても冷たくて、マフラーを忘れたことが痛かった。
 もう、1月も終わろうとしているのに。
 一馬と会うのは、一ヶ月ぶりくらいだった。クリスマス直後にものすごい喧嘩をして、それ以来、連絡もとっていなかった。それでも、練習で顔を合わせることなんかはあったけど、こうやって俺と一馬ふたりだけで会うことは無くて、俺達の間の特別な意味合いを確かめることもなくて、とするとやはり、俺達は一ヶ月くらい会っていなかったことになる。
 それならどうして今、こうしてふたりでいるのかといえば、今日は英士の誕生日なのだ。
 ある程度のお年頃の男の子が、友達同士でお誕生日会、なんて、ぞっとしない光景だが、俺達は律儀に英士の家へ行く約束をして、英士は律儀に俺達を待っている。
 そういうことで、とりあえず、俺達は揃って歩いているのはいいけれど、どちらも誤るどころか言葉を一切発さないので、恐ろしく着心地の悪い服を無理に着て歩いているような、肩の辺りが落ち着かない時間。
 俺はとても、一馬のひとつひとつの動きを意識していて。一馬は俺を意識していて。
 俺の意識と一馬の意識が、肩先をぶつけ合いながら交差する。きちんとはまってくれないから、とても不都合だ。
 住宅街への入り口での信号待ち、俺達以外には誰もいないところで。
 一馬を見ると、冷たいのか、指先に息を吐きかけながら、擦りあわせていた。
 寒そうにしているくせに、その手は、ださい白の軍手をしていた。
 ああ。
 なんだか。
 とても一馬らしくて。
 そういえば、喧嘩の原因を忘れている。
 忘れてしまうような事を理由にして、どうして一ヶ月も、俺は一馬から離れていられたんだろう。どんなに深い傷をつけられても、傷をつけてしまっても、一馬を手放したくないというのが俺の気持ちだったはずなのに。
 言葉を選ぶのももどかしく、俺は右手を伸ばして、一馬の左手の軍手を剥ぎ取ると自分のコートのポケットに押し込んで、指と指を絡めた。
 一馬が驚いているのが、指から伝わる。微かな、震えで。
 信号はまだ青になっていなかったけれど、俺は一馬の手を引いて、横断歩道の白いラインの一本目を、越えて歩き始めた。
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