でっていう 

January 29 [Sun], 2012, 2:33

ああああはつくえにあるにっきをよんでみた





自分のことを不幸だと思うのは、罪、らしいのです。



はっきりそう聞いたわけではありません。
しかし、俺は見ました、不幸な出来事を語った男が中年の男性に怒鳴られているのを。
中年の男はどこかから引っ張ってきたようなその台詞を男に浴びせかけます。


貴様より不幸な人間は山ほどいるのだ、その程度で不幸だと嘆くのではない、恥を知れ。



衝撃でした。
今まで俺が抱いていた、自分が不幸な人間だという気持ちはいけないことだったらしいのです。

俺はある日突然友達だと思っていた人間から突き放されました。
その後和解はしましたが、わだかまりは残っています。

俺はある日いくらあがいても何も変わらない環境に絶望しました。
そして人間というものを信じられなくなりました。
その後自分なりのけじめをつけましたが、恐怖心はいまだに消えません。

俺はある日突然友達だと思っていた人間からまた突き放されました。
その後和解はしていません、いまでもその恐怖が心に残っています。
俺はいつか復讐してやろうと、わずかに思っています。


しかしこれらのことを不幸だと嘆くのは罪も同然らしいのです。
だとしたら俺は罪人です。なぜなら俺は心の底で、自分のことを不幸だと思っているからです。
過去のトラウマを抱えて、他人とかかわることに恐怖を覚えている、特殊で、不幸な人間だと。

また、俺は自分のことを他人とかかわることに不向きな人間だととらえています。
それすらも自惚れだと人は言うでしょう、そしてそれは罪だと言うでしょう。
そしてそれは俺自身が変わることで解決する問題だと言うでしょう。

しかし俺にはそんな甲斐性はありません。
99%のどりょくではないのです、1%のひらめきなのです。
俺は他人とかかわることにたいして、1%のひらめきを持ちません。
秀才でいるのは辛いことです。だから俺は世間の助言を聞き入れません。


そうなのです、つまるところ俺は、わがままな子供なのです。



俺を怒りますか。俺を怒鳴りますか。俺を叱りますか。
それとも俺に、優しくしてくれるのですか。




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ちなみにクリスマスは家族で過ごすのが本義であるはず 

December 24 [Sat], 2011, 1:39








街は煌びやかに飾り付けられていて、夜だというのにまぶしくてたまらない。
煌びやかな飾りが放つあたたかい光とは裏腹に、俺にまとわりつく寒気はとどまるところを知らない。
マフラーひとつで出てきたのがいけなかったのかもしれない、とてつもなく、寒い。
俺は寒さに肩をすくめて、マフラーに口元をうずめた。



「で、軍曹、これからどーすんの?」


そのまま、目の前のベンチに座り込んでめそめそしている軍曹に話しかけてみる。
30分前、軍曹から電話がかかってきたと思えば内容は「やっぱりさみしいからそばにいて」なんてこと。
正直めんどくさいしうざいし気持ち悪いから放置しようと思ったが、家にいるのも息苦しくなっていたことだし、こうして来てやったというのに。


「予想以上に街にリア充がはびこってて泣きたくなるのはわかるけどよ、こうしてたって仕方ねーだろ、つか寒い、どっか入るかなんかしようぜ」



そう提案してやっても、軍曹は動かない。
軍曹がこうなった理由と経緯は容易に想像することができる、というか知っている。
12月になるやいなや、いや、まだ12月にならないうちから軍曹はかぐや姫にクリスマスの予定を聞き出していた。
期待に胸躍らせる軍曹に、かぐや姫は申し訳なさそうにこう言ったのだ。

『ごめんなさい・・24日はパーティーがあって、参加しなければいけなくて・・25日は、家族と過ごす約束なので、その・・ごめんなさい』

そう打ち明けられた時の軍曹の表情と言ったらもう、笑い無しには語れない。
思い出しただけで笑いそうだ、とりあえず鼻で笑っておこう。


「はんっ」
「ちょっ、なんで鼻で笑ったの?」


そうして希望を粉々に打ち砕かれた軍曹は、開き直って街に繰り出してみたものの、予想以上の疎外感にさみしくなって俺を呼び出したと、そういうわけだ。
まったく迷惑な奴だな。


「えっなにその生ごみを見る目」
「別に」


さて、生ごみもようやく顔を上げたことだし本当にどこか入りたい、寒いんだ。
そう思って周りを見回してみると、聖夜に似合わない光景が目に入った。

気弱そうな、小太りの老人が、ガラの悪いお兄さん数人に絡まれている。
まったく、リア充に八つ当たりするならまだしも、そんな老人に当たってどうする、これだから最近の若い奴は。
どこかに入るよりも、体を動かした方があたたまりそうだ。


「なあ軍曹、・・・・軍曹?」


軍曹に同意を求めようとベンチを見たが、どうしたことか軍曹の姿が無い。
目をぱちくりさせていると、右後方から軍曹の声が聞こえた。嫌な予感がする。
声のした方向へ素早く顔を向ければ、ガラの悪いお兄さんに挑んでいる軍曹。
バカなのか、いやバカだった、とにかく俺も向かおう。


「リア充ばっかでさみしいのはわかるけど、絡むならリア充に絡めよ!罪もない老人に絡んでんじゃねーよ!リア充に絡む勇気もねーなら外に出てきてんじゃねーよ!」
「軍曹、軍曹それも絡んでる、超タチ悪い」


ガラの悪いお兄さんに絡んでいる軍曹の肩を掴み抑えようとするが、軍曹の勢いは止まらない。
おい、お兄さんちょっと引いてんじゃねーか、恥ずかしいからやめろ。


「止めてくれるなごちょガフッ」


いい加減恥ずかしいので軍曹の顔面をわしづかみにして黙らせてみた。
うん、効果覿面だ。
そのままガラの悪かったお兄さんへ視線を向けると、お兄さんたちはバツが悪そうに去って行った。
決して「なにこれ関わりたくない」なんて顔はしていなかった、していなかったんだからな。


「あ、じいさん平気か?」


軍曹はそのままに、そういえばそもそも絡まれていたのはこの老人だということを思い出してじいさんに声をかける。
老人は穏やかな笑みを浮かべて、こくりと頷いた。
小太りで、わきにはセカンドバッグを大切そうに抱えている。


「ああいう輩がいるからな、・・こういうのもいるから、さっさと家に帰れよな」


忠告してやると、老人は穏やかに微笑んだまま、またこくりと頷いた。
本当に忠告を聞くとは思えないが、まあ、これ以上面倒を見てやる義理もないし、行くか。


「じゃあなじいさん」


老人に背を向けるのと同時に、右手がまだ軍曹の顔面をわしづかみにしたままだということに気が付いて、右手の力を抜いた。



「ぐっほああああ・・ほんとなんなの伍長、お前実は俺のこと」


軍曹の言葉をさえぎって、携帯の着信音が鳴った。
この着メロは、軍曹のものだ、趣味が悪いから間違いない。


「ん?・・・・・へっ!?え!?うっそ!あわわわ!」


着信画面を見るなり、軍曹は慌てだした。
何事かと思う暇もなく、軍曹は素早く電話に出るとその顔に喜びの表情が満ちていく。
しきりに「うん!うん!」と言いながら通話を続けていたが、ついに通話を終えて満面の笑みで俺を見た。


「どうしよう伍長!かぐや姫が、パーティー抜け出したって、迎えに来てって!」


興奮して携帯を握りしめた軍曹は今にも爆発しそうだ。


「俺、行ってくる!」


だがしかし、走り出した軍曹は爆発なんてものともしないだろう。
たとえ数メートル先でこけたとしても、その道中でマフラーを落としたとしても、だ。

軍曹を見送る俺の背中に、ふと笑い声が聞こえた。
振り返ると、さっきの老人がまだそこに居て、笑っていた。

いぶかしく思ったが、その瞬間俺の携帯も着信音が鳴った、メールだ。
携帯を取り出し、開いて見ると、父からのメールだった。

無題のメール、本文には一言「帰ってこい」。
それから一枚、画像が添付されていた。

あの父が食べ切れるはずもない、大きな大きな、苺のショートケーキ。



小太りな老人が、笑って言った。




「Merry Christmas!ho-ho-!」

すごくおなかがすいた、でもへやからいっぽもでられない 

November 20 [Sun], 2011, 21:43


3/4ほどノンフィクションだったらどうする?








「死のうと思ったんだ」



薄暗い部屋で、奴はカーペットの敷かれた床にへたりこんでそう言った。
常々幼馴染だから奴の奇行には慣れていると思っていた俺だが、今日の奴はなにかおかしい。
大きく見開かれた目はいつも通り光も何も差していないが、その目の下にできたくまが酷い。
涙のあとがてらてらと光り、顎からしずくがぽたりと落ちた。



「でもね、ナイフで首を掻き切ろうとすると、急にそんな俺が滑稽に思えたんだ、おれ、超、サムいってさ、なんでかな?不幸ぶってる俺が超サムいってことかな?あは、あはは、おれ、超、サムい、そんな俺にできるのは睡眠薬を飲むことぐらいだよ、でもね、気づいたんだ、睡眠薬なんて持ってないってことにさ」



かつてこんなに静かに話す奴の姿を、俺は見たことがなかった。
奴はいつでも話の途中で声を荒げ、興奮して、汗をまき散らす、そういう奴だ。
しかし奴は一滴の汗も流さないまま光の無い目を俺に向けると、また静かに語り始めた。



「みんな怒るんだ、不幸ぶるなって、お前だけが不幸なんじゃないって、世界で一番不幸だなんて思い上がるなって、でもなんでかな?俺のなにがわかるのかな?不幸ぶってなにが悪いのかな?だって俺は辛いんだ、苦しいんだ、それがわかる?バカ言わないでほしいよね、だれにもわからないよ、たとえわかりやすく話したって、わかりゃしないんだ、俺みたいなのを叱る人間ってさ、なにをもって自分が正しいとか思い上がってんの?なにをもって俺の言い分がエゴだって決めつけんの?不幸ぶっちゃいけないなんて、だれが決めたの?それってほんとに正しいことなの?かまってちゃんの何が悪いわけ?そういうのを突き放したとき、俺がほんとに死んだらどうすんの?それって殺人じゃないの?だいたいお前よりもっと酷い境遇のひとがいるんだって叱り文句はなんなわけ?俺が考えを改めればそういうひとが救われることでもあんの?知ってるよ、自分のほうがもっと酷い境遇なんだって言ったらそれこそエゴだから、他人を引き合いにだすことで自分を正当化したいんでしょ?あは、あははは」



奴の後ろには、真っ二つに折られたノート型のパソコンがあった。
水滴がてらてらと光っている、おそらく奴の汗だ。




「あのね、無視されるんだ、学校ならまだ我慢できたんだ、でも家でも無視されるんだ、無視するくせに機嫌も悪いんだ、どうしよう、唯一だったのに、それじゃ俺、だれにやさしくしてもらえばいいわけ?親にまで無視されて、ねえ、だれが俺にやさしくしてくれるの?俺は演技を続けなきゃいけないの?少しのことじゃ傷つかない、聞き分けはいいけどちょっとわがままな男の子を演じなきゃいけないの?親の前でも?もうボロボロなのに、ちょっと突き放すだけで寝込んじゃうのに、そんな俺が傷つかないふりをしなくちゃいけないの?親の前で?唯一って、思ってたのに、どうせ話しても怒られるだけだって思ってるけど、話したってわかってくれないって思ってるけど、寝込んでも理由を聞いてもくれないけど、親だからって思ってたのに、やっぱり俺は一人きりなんだ、死ななくちゃいけないんだ、睡眠薬でも飲んだほうがいいんだ、でも怒られるのが怖いんだ、どうしたら怒られないのかな?やさしくしてくれるかな?俺、死にたいよ」



奴は汗の代わりに涙をぼろぼろと流してそう訴えた。
奴のこんな話を聞いたのは初めてだった、奴はいつでも頭のおかしい奴で、俺は奴の被害者だとばかり思っていた。
実際奴も誰かの被害者なのかはわからない、しかしあまりにも弱すぎる人間であることはわかったつもりだ。
そんな弱い人間にかける言葉を、俺は知らない。


ただ考えてみるとすれば。





駄目だ、やっぱり出てこない

トラとウマがどうしてこうなった 

October 03 [Mon], 2011, 0:45


1/4ほどノンフィクションだったらどうする?その2






部屋がしんと静まり返る。

さっきまで泣きじゃくって絶望の言葉を叫んでいた彼女は、俺の胸に縋り付いた体勢のまま、驚いたように大きく目を見開いて俺を見上げている。
それはそのうち、絶望、悲愴、そういった感情を複雑に入り混ぜた表情に変わっていく。


「どうして?」


か細い、震えた声をしぼりだす彼女。



「どうして、おこるの?」


悲しそうに歪んでいく目には、涙が滲み始めていた。



「わたしはこんなにつらいのに!わたしはこんなにくるしんでいるのに!どうしておこるの!?どうしてしかるの!?わたしがわるいの!?わたしがいけないの!?わたしはだめなの!?」


彼女は俺の服を掴んでぐいぐいと引っ張る。
さっきまでのように泣きじゃくり、しゃくりあげ、それでも自分の思いを吐き出している。
その表情には悲しみがあり、絶望が見てとれ、かつ傲慢さが見え隠れした。


「しにたいっていっちゃだめなの!?おこるの!?わたしがわるいから!わたしがしにたいっていったから!いっちゃだめなんだ!わたしがだめなんだ!だめなわたし!わるいわたし!わるいことしたからしかられたの!やっぱりだめなんだ!しにたいっていっちゃ!だってまえにもおこられたもん!わたしがだめだったの!だめなわたし!わるいわたし!」



彼女はそこで、はっとした表情をして止まった。
それから俺の顔をじっと見つめたまま、か細い、震えた声でこう言った。



「・・・・わるい、わたしは、しななくちゃ」


その言葉を契機に、彼女は再び叫び始めた。



「しななくちゃ!しななくちゃ!しななくちゃ!だってわたしはわるいこだから!いらないこだから!わるいこはいらないの!いちゃいけないの!しにたいなんていうこはいちゃいけないの!わたしはいちゃいけないの!しななくちゃ!しななくちゃ!はやく!しななくちゃ!しななくちゃ・・!しな、なくちゃ・・!し、な、・・・・」



だんだんと力が無くなり、彼女の体が沈み込んでいった。
それでもまだ意識はあるようで、俺の服を掴んだまま呪文をつぶやいている。
だがすぐに意識を持っていかれてしまうだろう、両のまぶたがとても重いはずだ。
彼女の精神がどれだけおかしなことになっていようと、薬の力には勝てない。

ついには糸が切れたようになってしまった彼女を、俺はベッドに運んで寝かせた。


穏やかに眠っているように見えるが、もしかしたら悪い夢を見ているのかもしれない。
しかし、もしかしたら幸せだった頃の夢を見ているかもしれない。
それが彼女にとって幸せなことなのかどうかはわからないが、できれば俺はそうであってほしい。


眠る幼馴染を見つめながら、俺は目が覚めた時になんと声をかければいいか、それだけを悩むのだ。





だがしかしマニュアルには頼らない

宇治金時はあまり好きじゃない、嫌いでもないけど 

July 08 [Fri], 2011, 23:12



本日は晴天なり

白いスケッチブックのページに、太陽の光が反射して眩しい。
先ほどから何度も鉛筆で叩いているせいで、白いスケッチブックのページには黒い点がまばらに散らばっていた。
それも仕方がない、何を描こうか迷っているのだから。

眩しさに目を細めながら目の前のグラウンドを見つめてみる。
グラウンドに散らばっている野球部員の誰かが気が付いたら、きっと睨まれていると錯覚することだろう。
しかし幸いにも遠くにぽつんと佇むわたしの姿など誰も気が付く様子が無い。
それでいい、このまま彼にも気が付かれずにわたしはひっそりとここで絵を描くのだ。

それにしてもグラウンドに彼の姿がない。
彼はいつもあずき色のジャージを着ているのだが、グラウンドにあずき色は見当たらない。
どうしたことだろう。


「ねえ」


グラウンドを見つめていると、ふいに声がかけられた。
視線を声のした方へ向けてみれば、居た。


彼だ。



彼はあずき色のジャージの袖をまくり、ズボンの裾もたくしあげている。
脇には彼がいつも引っ張って走っているタイヤを抱え、魅力的に笑っている。
彼はおもむろに空を指差した。



「空、描いてるんじゃなかったっけ、キレイだよ」


そうして魅力的に笑って、そう言うのだ。

なんということだろう、彼は知っていたのだ。
わたしのスケッチブックの中身を。
空と、木と、電信柱と、グラウンドと。
それから、タイヤを引っ張る彼の姿と。(もっとも彼の足りない視力と頭では空しか認識できなかったらしいが)


彼は言いたいことだけを言うと去っていった。
わたしの目にはいつまでもあずき色が残っている。

そうだ、宇治金時を描こう。




彼は宇治金時が好物だろうか

誰の句だったかは覚えてないけど 

October 10 [Sun], 2010, 18:44

すずめのこ そこのけそこのけ




雀の子が俺の進路に立ちはだかる。
地面に両の足をつけて、羽ばたくための翼を体にぴたりと密着させた雀の子。
はるか遠くの地面からじっと俺を見つめている。

雀の子、お前は俺を羨んでいるのか。
ああ、俺もお前を羨んでいる。

だが、雀の子。
お前は羽ばたける、お前は飛び立ってゆける、それはなんと素晴らしいことだろう。
だが、雀の子。
お前はそれを恥じ、お前は俺を羨んでいる、それはなんと愚かしいことだろう。
例えばその地面からそこに立つ木の枝まで飛び立ってゆける、それがどんなに素晴らしいことか雀の子、お前は理解しようとするのか。
自分に与えられた素晴らしいそれを恥じることがどんなに愚かしいことか雀の子、お前は理解しているのか。

雀の子はそれでも尚俺をじっと見つめたまま動かない。
それが雀の子、お前の意志だというのならば雀の子。
俺はペダルに乗せた足をゆっくりと前へ押し出し、片足を地面からはなした。



おうまがとおる

まだ鳴いてる、否、泣いてるのかも 

September 14 [Tue], 2010, 9:25

もしかしてないてる?


人間様はわたくしたちのことを一週間の果敢無い命だと仰るが、とんでもない。
わたくしたちは人間様の感覚で言うならば五年、十年の月日を土の中で生くるのだ。
そもそも一週間を短いとするのは人間様の感覚。
それをわたくしたちも同じだとして果敢無むのはちと傲慢というものではなかろうか。

それともなにか、人間様はわたくしたちのような自分よりも小さな生き物を果敢無むことで、自らの優位をかみしめていらっしゃるのか。
おお、おお、なんと虚しいことか。
そうでもしないと生きてゆけないとは、なんと悲しいことか。
わたくしたちは人間様を憐れもう、ただ生くるだけでは満足できぬほど進化してしまった人間様を、心より憐れまする。
わたくしたちはただ土の中で生まれ、育ち、最後に生殖を為す、それだけの運命に疑問を感じたことはない。
しかし人間様、あなたはただ生くるだけのそれに疑問を感じてしまった。
それゆえわたくしたちと比較し、ご自分の生をかみしめていらっしゃる。



いえ、いえ、それでよいのだ。
退化などたやすいこと、今は存分に進化なされよ。

いえ、わたくしなどに言われても、人間様には屈辱かもしれませぬ。
同じ一週間の命ならば、蛍に言われたほうが気分もよろしかっただろう。
ここに、謝罪の意を示しまする。



蝉ごときが出過ぎた真似をしまして

戦争で皆死んだわけじゃない 

July 18 [Sun], 2010, 13:47


ある戦場-眼前・過去


空が黒い。
生ぬるい風が俺の頬を撫でる。
錆びた鉄の匂いが俺の肺を満たした。
投げ出した俺の手足には無数の傷があり、赤黒い血が固まっている。
それでもまだ俺の体は死ねない。



「おい」


野太い声が俺の耳に届く。
顔を上げてやれば、そいつは別の隊の兵士だった。右腕が無い。
嫌悪に顔をゆがませて、俺を睨みつけているその兵士は、問う。


「貴様は何のために戦っているのだ」

愚問を。


「俺は」

愚かしい考えで。


「死ぬために、ここにいる」
「っ!貴様を見ていると腹が立つのだ!俺たちは望んでもいないのに兵士として召集され!戦地に送り込まれた!俺たちは生き残るために必死だというのに!貴様は!死ぬためにだと!?俺たちを愚弄しているのか!」


兵士は俺の胸倉を掴み、そう怒鳴り散らした。
ゆがんだその顔は、嫌悪を超えて憎しみの色を濃くしている。

「触るな」

俺は胸倉を掴んでいる奴の左手を振り払った。

「誰もが全てお前と同じだと思うな、お前は両親や妻子に涙を流され見送られたのか?必ず生きて帰ると誓ったのか?俺は違う、厄介払いが出来てなによりだと言われ見送られた、必ず死んで帰ると誓った、貴様と同じにするな!」


威嚇の意を込めて最後に怒鳴ってやると、兵士は勢いを失い後ずさる。
その表情はまだ憎しみにゆがんでいるものの、恐怖のようなものが見え隠れした。
俺は奴を愚かだと言うが、俺は奴よりも更に愚かであることを自覚している。

俺は、自分を不幸だと思っている。


「俺が憎いなら殺せばいい、俺が死んで悲しむものなど誰もいない」

そして奴こそが幸福だと、妬んでいる。




「俺は、伍長が死んだら悲しいぞ」

奴の後ろから、聞きなれた声が思いがけず俺の言葉に答えた。
戦場だというのに、やわらかい声。軍曹として足りないはずなのに、兵士から慕われる声。
俺に絡んできた兵士は敬礼すると、さっさと走り去っていく。


「軍曹・・・・」
「伍長、俺は生きたいんだ、生きて帰りたい」


俺と同じ年のくせして、俺よりも多くの戦場を経験している軍曹。
軍曹も幸福なのだ。俺と違って、幸福だというのだ。


「だから伍長、俺の代わりに死んでくれるか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・御意」



それが俺の幸福ならば

事実どんくらい生きるかなんて知らないけど・・ 

June 29 [Tue], 2010, 8:19

アロングロングタイムアゴー



昔昔、そのまた昔から、亀は万年生きると申しますが、人間様はそんなに長く生きられませぬ。
わたくしたち亀を扶養して下さる人間様は、いつしかお姿を消されてしまいます。
さすればわたくしたちはあと九千と九百と十と四年どう生きましょう。

そう、消えてしまった貴方様を探しに『生きましょう』。
なに、歩みののろいわたくしのことです。
貴方様を見つけ出すのに九千年はかかりましょう。
貴方様に再び見つけ出して頂くのに九百年はかかりましょう。
さすればあと十と四年、貴方様のお傍でわたくしは万年生き切ることが叶います。


しかしわたくしの考えは、わたくしの歩み同様のろかったようです。
九千と九百年貴方様を探し求めても探し出すことが叶わぬのです。
十年涙を流しても貴方様のもとへ辿り着くことが叶わぬのです。

水の底から外を見つめながら、わたくしは老いた頭で考えます。
なんということでしょう、歩みののろいわたくしは、考え、貴方様を探し求めるためその歩みを進めるまでに実に四年、考え込んでいたというのです。
ああ、わたくしはもう間もなく、万年を生き切ってしまいます。
わたくしは諦め、両の瞼を下ろしました。
いいえ、わたくしはどこか期待をしていました、万年を生き切ってしまえば貴方様に会えるのではないかという、愚かな期待でございます。



それは愚かなわたくしに対する仏の叱責でございましょうか、あるいは諦めの境地に至ったわたくしに対する仏の激励でございましょうか。
再び瞼を開けたわたくしの眼に映りましたのは、黒白がはっきりとつけられました身体にわずかにともる赤が美しい。
鶴でございました。

昔昔、そのまた昔から、鶴は千年生きると申します。
さすればわたくしは、もしやすると、もう千年生きることを課されたのでございます。
あと千年、あと千年でわたくしは、無事貴方様のもとへ辿り着いてみせましょう。


水中移動ならば自信がございます

でも自分は歴史大好き 

June 08 [Tue], 2010, 9:46


三十超えたころからじゃなくてもいらいらするものはする






「いらいらするよね」


芳香剤が香る我が家のリビングで、奴はいまだアナログ放送を受信しているテレビを指差してそう言った。
常々なぜ当たり前のように奴が俺の家でくつろいでいるのかという不満を、幼馴染だからという理由で我慢してきた俺だ。
今更二人掛けのソファのど真ん中に腰かけながら文句を言う奴へいらだちを見せることはしない。
奴の発言がいまだアナログ放送を受信していて画質が最悪であることに対してのそれではないことを俺は知っている。
すなわち我が家に対しての文句でなければ、俺は奴が何を言おうと一向に構わないのだ。

そんなものはもう、慣れてしまった。



「江戸時代が最高のエコ時代だって、それが嫌だから廃れて明治になって大正になって昭和になって平成になったのに今更そんなこと言って何がしたいんだろう?笑っちゃうよね!あはは!あはははは!そんなに昔がいいなら昔に戻っちゃえばいいのに、そうだよ、俺たち進化できないなら退化しちゃえばいい!知ってた?退化も進化のうちだってこと!面倒くさいのが嫌だからそういうの捨ててきたっていうのに、傲慢だよね!今更よりを戻そうったって戻せるわけないじゃん!ねえ知ってた?最大のエコって人間が死ぬことなんだよ!」


いまだアナログ放送を受信しているテレビを指差しながら叫ぶ奴の額に、一筋の汗が流れるのを見た。
興奮すると異常なまでに発汗する、奴の体質をよく知っている俺はつぶやいた。



「今のは、本当のお前か」
「え?」

奴が俺の独り言に反応するが、今のはやはり俺の独り言なので奴の反応は俺にとって無いに等しいものと処理された。
そうして俺は、今日も奴の望む言葉をかけてやる。



「できないのが、人間だろう」


そうすると、奴は一秒前の表情をすっかり忘れてニヘラと、満足げに笑うのだ。

         「できないのが人間だろう」
奴は、俺から  この言葉   を聞きたいがためにおかしな話をするという。
幼馴染とは伊達ではなく、長い付き合いにもなれば奴のおかしな話にはもう慣れきってしまった。
いや、慣れてしまわないといけなかったのだ。俺は俺の顔が笑うことを思い出さない限り、奴とこの先一生付き合っていく鎖を背負っているのだから。


ただし慣れることと理解することはまったくの別物である。
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おそらく頭がおかしい子です、でも犯罪はしないよ^^
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