2012/04/27

April 28 [Sat], 2012, 0:12
 『ヒュュュュュュュュュュウ…………ドォォォォォォォォン!!』

真っ暗な空に一筋の綺麗な線が立ち上りたちまちパァッとカラフルな花火が打ち上げられた。
大和はこの花火が打ち上げられるたびに思い出すあの夏の日のことを考えていた。
あの遠い記憶の中にしまった夏の日を…。





 「なあ、今度の土曜日暇か?」
秋葉 大和(あきば やまと)は隣のクラスで幼なじみの本田 真菜(ほんだ まな)に声を掛けた。
「え?なに?もしかしてデートの誘い?」
真菜は笑いながらそう言ったが大和はすかさず
「ちげーよ、母さんが昔着ていた浴衣がでてきたから本田を連れてこいってさ。」
と反論した。
(そんなに否定しなくても…。)
と真菜は思いつつも
「いいよ。おばさんの頼みだし久しぶりに大和の家に行くよ。たまには勉強の息抜きになるしね。」
と返事した。
「じゃあ、土曜日17時頃に来てくれよ。」
「ん、わかった。」
真菜がそう言うと大和は自分の教室に戻った。
そうして真菜も自分の教室へ戻ると待っていたかのように親友の神崎 詩織(かんざき しおり)が寄ってきた。
「大和くんからデートの誘い?ようやくそんな関係まで発展したか。」
「違いますー。大和のお母さんに頼まれただけ。」
「なーんだ。やっとアンタ達がくっつくかと思ったのにな…。それに土曜日は花火大会だし。」
「そっか…。もうそんな時期なんだ。昔は大和と一緒に行ったな。」
「いつまでもそんな関係じゃ他の子に大和くん取られちゃうよ。彼、顔は良いし運動神経抜群なんだから、女の子の人気すごいんだからね。せっかく土曜日一緒にいるんだから行ったら良いじゃん花火。」
「んー…大和とは行かないよ。多分他の子と行くだろうし。」
「ふーん。まあ、あたしには関係ないけどね。」
と詩織が言ったところで授業開始のチャイムが鳴った。

そして土曜日。
『ピンポーン』
ドアのチャイムが鳴り扉を開けると真菜が立っていた。
「遅かったな。」
「うん、一応シャワー浴びたりしてたからさ。」
そうしている内に
「あら、いらっしゃい。今日はわざわざありがとうね。」
と奥から大和の母、由美(ゆみ)が出てきた。
「いえ、こちらこそありがとうございます。」
「いいのよ。うちには女の子いないし、真菜ちゃんが来てくれて嬉しいわよ。早く上がって上がって。」
「おじゃまします。」
由美に案内されたのは奥の和室だった。
「じゃあ、さっそく着てみよか。大和は出てってなさいよ」
「わかってるよ、終わったらちゃんと呼べよな。花火観に行くんだろ?」
と真菜に声を掛けた大和。
ビックリした真菜は声を出さず頷くことしかできなかった。
(大和、一緒に花火行ってくれるんだ…)
と少しドキドキする真菜であった。
部屋を出た大和は縁側でくつろぎながらこの後のことを考えていた
(花火誘うの少し強引だったかな?まあ、とりあえず今日はチャンスだし真菜の気持ちを確かめよう。
それにしても遅いな…。女ってなんでこう時間かかんだよ。)
時刻は18時を少し回ったところであった。
すると間もなくして
「おまたせ」
と背中から聞こえたので振り返ると浴衣姿の真菜が立っていた。
「どうかな?似合う?」
と少し照れながら言う真菜に大和は見とれてしまった。
待たされて文句の一つでも言ってやろうと思っていた大和だが何一つ言葉が出てこない。
そこに
「ほんと似合ってるわよ。アンタも何か言いなさいよ。」
と由美がやってきた。
大和は素直になれず
「本田にしては可愛いだろ。」
とぶっきらぼうに言った。
「じゃあ、後は2人で花火大会行っといで。」
「ああ、本田行くぞ」
「あっ、まって。おばさんありがとうございます。」
「いいのよ、気を付けて行ってらっしゃい。」
大和と真菜は2人きりの初デートとなった。

「わあ、すごい人。」
「地元の祭りと言っても、やっぱり多いな。」
「じゃあ行こっか。」
と先に歩きだした真菜を追いかけた大和は
(真菜の奴、浴衣似合ってんな。女の子ってこんなに良い匂いするのかよ。)
などとドキドキしていた。
しばらく歩くと屋台が並ぶ通りになりますます人は多くなるばかりだった。
ふと真菜の方を見てみると慣れない浴衣のせいか歩きにくそうに少し遅れてついて来ていた。
大和はすかさず真菜の左手を握りパーカーのポケットに手を入れた。
驚いた真菜だったが手は離さずしっかり握り返した。

「あー…!!」
と真菜が声を上げたその先には金魚すくいの屋台が。
「一回やるか?」
と大和が聞くと真菜は嬉しそうに
「うん!!」
と答えた。
「おっちゃん、金魚すくい一回。」
「あいよ。お姉ちゃんがんばりな。」
「ありがとう。」
すると屋台のおっちゃんが大和に小声で
「兄ちゃんらアベックか?」
と言ってきた。
「そんなんじゃないですよ。それに今時アベックなんて言い方、死語ですよ。」
「そうかそうか。でも兄ちゃん、この子好きなんやろ?こんなべっぴんさんほっといたらすぐ取られるから気ぃつけや。」
大和が何か言おうとしたとき
「やった!!取れたよ!!」
と真菜が嬉しそうに金魚を見せてきた。
「姉ちゃん、スゴいやないか!!そいつら持って帰って元気に育てたってくれや。後、これはサービスや。」
と線香花火をくれた。
「ありがとうございます。」
と真菜が言う。
「まいどおおきに。」
「楽しかったね。あーあ…浴衣の袖濡れちゃった…。」
「金魚すくいではしゃぎすぎだよ。」
「だって好きなんだもん。あっ綿菓子あるよ?」
「久しぶりに食べるか。」
「うん、そうだね。」
と綿菓子を買い2人で歩いていると前から詩織が歩いてくるのが見えた。
真菜は大和と来ないと言ったのが気まずかったので大和から少し離れた。
詩織は幸いにも2人ともに気付かず通り過ぎた。
大和は少し怪訝な顔をしたが真菜が事情を話すと笑ってまた手を繋ぎ直した。

花火の途中だったが少し早めに切り上げることにした2人は帰り道に昔よく遊んだ神社でさっきもらった線香花火に火をつけて石段に座った。
「ここは静かだね。」
「ほんとだな。昔はよくここで遊んだよな。」
「そうだね。」
「真菜があの柵から落ちたときはビックリしたけどな。」
「大和がおぶって帰ってくれたんだよね…。」
「昔からずっと一緒だったよな。」
「いつから私のこと名前で呼んでくれなくなったんだろ…。」
「だって、名前で呼んでたらみんなに馬鹿にされるし恥ずかしかったから。」
「男の子ってそういうとこ変だよね。
…今なら『真菜』って呼んでくれる?」
「……真菜」
「えへへ、ありがと。」
しばらく沈黙が続いた後
「真菜…本当に卒業したら東京行くのか?」
「誰から聞いたの?」
「誰だっていいだろ。その様子じゃ本当なんだな。」
「うん…」
「別に頭の良い大学ならここから通えるとこだってあるだろ?どうしてわざわざ東京に行くんだよ。」
「大和が推薦で決まったから…。なんだかとても大和が遠くに行ってしまう気がして。大和に追いつこうとして。」
「だからって本当に遠くに行ったら意味ねぇじゃん。」
「…待ってて。大和にきっと追いつくから。」
「俺は…俺は真菜のことが…!!」
『ヒュュュュュュュュュュウ…………ドォォォォォォォォン!!』
「きれーい!!最後に見れて良かった…。大和ありがとう。」
無情にも大和の思いは花火の音にかき消され花火とともに消え去った。
その後
「大和何か言いかけた?」
と真菜は聞き返したが大和は言えなかった。
たった一言、好きという言葉だけが。





あれから5年。
あの後、真菜は見事難関大学に合格しこの町を去った。
2人ともこの春大学を卒業したが真菜は帰って来なかった。
真菜がいたのは夢だったのか…
遠い夢のことだったのか…と思う。
大和の足はあの神社に向かっていた。
(ん?こんな時間に人がいるぞ)
神社には女の人が立っていた。
その人物はすぐに大和に気づきあの頃と変わらない笑顔で言った。
「ただいま!!」と。




end
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