おれさまは由緒正しきおかあさまとおとうさまの元に生まれた、子猫だ。
子猫だということは自覚しているが、子猫だからと言っておれさまは誰にもひけをとるつもりはないぜ。アーン?
ごしゅじんさま(っておかあさまが呼んでるニンゲン)とおかあさまがいつも
『景吾の毛並みは兄弟で一番綺麗ね』
といってくれる。
だけど気が付けば、生まれたときには一緒だった六匹の兄弟は今はおれさまただひとりになっていた。
おかあさまがいうには
『みんな優しいご主人様に引き取られて行ったのよ』
景吾ももうすぐね、だとよ。
おれさまがいぶかしげにしていると、おかあさまは
『景吾にも現れるわ。大事な“ご主人様”が、ね』
とほほえんだ。
それはすなわちおかあさまとの別れを意味していた。
おかあさまと離ればなれになるのはさびしいと思ったが、おれさまはおれさまにいつか現れる“大事なごしゅじんさま”が楽しみでしかたがなかった。
おれさまの大事なごしゅじんさま。
いったいどんなニンゲンか、期待で胸がおどるようだぜ!
このおれさまにふさわしいやつじゃねぇとな!アーン?
そんなある日。
お気に入りの場所でひなたぼっこをするおれさまの耳に、ふと入ってきたあわただしい足音。
(あーん、何だ?)
ピン、と立てた耳を音のした方向に傾ける。
「すみません、遅くなりました」
「ふふ、いいのよ、気にしないで。今そこで寝ているわ」
ごしゅじんさまの笑い声と、聞いたことのないニンゲンの声。
パッ、と顔をあげてそちらを見やれば、嬉しそうな顔をしたごしゅじんさまと目があった。
「景吾、よかったわね。あなたの大事なご主人様よ」
「…にゃ?」
そうしてごしゅじんさまの後ろから現れたのは、えらく仏頂面で眼鏡を掛けたニンゲンだった。
きょとんとしてその厳格な瞳を見つめると、少し戸惑ったようにそのニンゲンは口を開いた。
「…俺は手塚国光だ。よろしく、景吾」
ごしゅじんさまは『国光君ったら、猫にそんな堅苦しい挨拶しなくても!』とケラケラ笑う。
その心地よい笑い声を聞きながら、おれさまは目の前の“ごしゅじんさま”に心を奪われていた。
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……塚跡じゃないですよ(笑)
忍跡になる予定です。